東海テレビでは「かわるPTA」と題して、2022年10月からさまざまなPTAの話題・問題をシリーズで伝えてきました。特に反響が大きかったのが、PTAが学校にとって「第二のサイフ」になっている特集と、PTAに入らない人が増えているという特集です。放送後の反響や、PTAの変化の広がりなどをまとめました。

■PTAは「第二のサイフ」か 元PTA会長からは「公費が弱いことが原因」との指摘も

 PTAが学校にたくさんの備品などを寄付していて、都合のよい「第二のサイフ」になっているのではないかという特集では、早速多くの情報が寄せられました。

【PTA役員を経験した人 愛知県豊田市】

【動画で見る】強制入会や第二のサイフ化など…“PTA特集”に多くの情報「会費を給料から勝手に引かれる」教職員の負担にも

「PTA会費から約100万円が学校経費に充てる『雑費』として消えていました。習字の授業で使う先生の筆や音楽室の楽器の修繕代など、一般の保護者は全く知らず、寄付という位置づけでもありません」

【この春までPTA会長だった男性 愛知県刈谷市】

「『第二のサイフ』私の認識も同様です。ただ『第一のサイフ』(=公費)が弱いためと認識しています。この状況を改善することが重要だと思います」

■突然「役員に選ばれた」という手紙がポストに…絶望しPTA退会した女性「変わってほしい」

 特に反響が大きかったのが、PTAに入らない人も増えてきていることを報じた特集でした。

2023年1月の放送で紹介した、PTAを退会した伊藤恵さん(仮名)は、愛知県で働きながら3人の子供を育てています。くじ引きで小学校のPTA役員に選ばれましたが、持病があって活動に参加するのが難しく、ほかの親からの「いじめ」のような状態にも耐えかねて退会を決意したといいます。

特集では、東海テレビの独自アンケートで、約半数のPTAに非会員がいることや、活動の強制をなくしたPTAの工夫などを紹介しました。

PTAの在り方に納得がいかなかいという豊田市の大川里奈さん(仮名)は、その放送を見て番組に連絡をくれ、苦しかった経験を打ち明けてくれました。

大川さん:
「役員を強制させたり、大勢の前で役員ができない事情を言わせたりするのは、配慮にかけるようなやり方じゃないんですかとか(意見を言ったところ)、『ここ(の地域)はこういうやり方なのに、調べもせずに引っ越してきたんですか』とか、色々言われて…」

疑問を持つほかの母親たちと一緒に、教頭や会長らに働きかけをしましたが、あやふやにされたあげく、2022年の秋、一方的に「役員に選ばれた」という手紙がポストに届いたといいます。

「PTAは変わらない」と絶望し、出した退会届は、1月末にようやく受理されました。

大川さん:
「本当は退会せずに変わっていけばよかったんですけど、退会したのも(変わらない現状に)限界を感じて。こういう風な思いをしている人がいるのをわかってほしいなと思って。少しでも変わるきっかけになればいいなと思って。他のPTAがどんなやり方をしているとかって知る機会がなかなかなくて、今回の特集を見て初めて知る部分がすごく沢山あって。変えていくのは難しいとずっと思っていたんですけど、色んなやり方をしている学校があって、何かやり方があるんじゃないかなっていう希望が持てたし、難しいかもしれないけど、変わっていってほしいというのはすごく思います」

「PTAとはこういうもの」という思い込みもあり、ちょっとおかしいと思っても、なかなか声を上げられず卒業まで我慢したという人も多いのではないでしょうか。

ほかにも、学校の教員という人などからも意見が寄せられました。

【中学校教員の「せんせい」さん 岐阜県】

「PTAの活動は、ないならないで済んでいくと感じます。役員決めでもめていたり、負のイメージしかありません。PTA会費を給料から勝手にひかれているのも納得していません」

【「はじめ」さん 愛知県】

「PTAは教職員なしでは運営していけない状態になっていて、総会の連絡、PTA費の管理など、さまざまなことを実際は教職員が行っています。教職員側からの取材もしてください。いかに負担になっているかわかると思います」

学校の先生にとってもPTAが「強制で負担」という声もありました。

■「逃走中」モデルにした子供が喜ぶイベントも 広がるPTAの「エントリー制」

 PTAは「変わる」のでしょうか。「やりたくない」という印象を変えたいという名古屋市内のPTAも取材しました。新型コロナで行事の中止が相次いだなか、2023年2月、中村区の千成小学校で、PTAが子供たちに人気の番組「逃走中」をモデルにしたイベントをプレゼントしました。

子供たちの前に登場したスーツにサングラス姿の大人は、PTAの保護者です。

<アナウンス>
「3、2、1、ゼロ。(ハンター投入)」

必死に逃げ回る子供たちを相手に、ハンター役のお父さんたちも全力でした。

捕まった子供たちは檻の中に。

ラスボス(PTA会長):
「捕まったやつらは黙ってろ!」

仲間を檻から開放するため、ボール集めなどのミッションも…。

お父さん、お母さんが本気で準備した本格的な企画に、子供たちは大はしゃぎ。

PTAがどうやって、こんなイベントを開催したのでしょうか。

参加した父親:
「ちょっと協力みたいな。ハンターかスタッフかでスタッフにしちゃった」

母親
「PTAがエントリー制に代わって、やりたい人がやる感じになっているんですけど…」

別の母親:
「イベントごとに応募できるので、自分が興味があるとか子供と一緒にやりたいときにできるのがすごくいいことかな」

名古屋など、各地で少しずつ広がりをみせているのが、強制ではなく活動ごとに参加できる人を募集する「エントリー制」や「ボランティア制」と呼ばれるPTAの運営方法です。

シリーズ「かわるPTA」でも、いち早くエントリー制を始めた昭和区の吹上小や、瑞穂区の陽明小のPTAなどを紹介してきました。

2022年度からエントリー制を導入し、ニュースも参考にしながら改革を進めてきたという千成小PTA。「逃走中」の企画では、保護者にあてたメールでスタッフを募集し、約80人が集まりました。

千成小PTAの天野敬子副会長:
「やりたいことだけやればいいのかなって思って、業務的なことではなくて、やれる人がやりたいときに、エントリー制を始めたんですよ。大変だったけど、楽しんでやっていたので」

子供たちは最後に、力をあわせてPTA会長が扮する「ラスボス」を倒しました。

ラスボス役のPTA会長:
「ちくしょう!おぼえてろよ!!」

参加した男子児童:
「めっちゃ楽しかったです!スーツ姿(ハンター役)のお父さんかっこいいです」

「ラスボス」姿の神谷昌利会長は、PTAの印象を変えたいと話しました。

千成小PTAの神谷昌利会長:
「昔ながらの、『PTAはやりたくない』という印象を変えていきたい。PTAの印象を『やらされる』ではなくて、子供たちのために『自ら動く』もの、そんな堅いものじゃないよっていうのを分かって頂ければと思いますね」

東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。

2023年3月28日放送