客「チョコの概念が変わる」…カカオ豆から手間暇かけ“極上のクラフトチョコ”へ 夫婦が追い求める幸福感
愛知県豊田市で、カカオ豆から手間をかけて極上の「クラフトチョコレート」をつくる夫婦がいます。お客さんが「概念が変わる」と絶賛するほどのチョコレートです。
■カカオときび砂糖だけで作る唯一無二の「クラフトチョコレート」
愛知県の「名鉄・豊田市駅」東口近くにある、「EAST ENDERS(イーストエンダーズ)」。
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店内はカフェスペースもあり、淹れたてのドリップコーヒー(500円)に、チョコレートドリンク(750円)や…。
生ガトーショコラ(550円)などのスイーツも楽しむことができます。
看板商品は、5種類の「板チョコ」です。インドネシアやウガンダ、ガーナなど、産地別に分けられています。
「クラフトチョコレート」(1袋2枚入り 450円)
店を営むのは、山谷明広(やまたに・あきひろ 43)さんと、麻美子(まみこ 37)さん夫婦です。
2人が作るのは、カカオ豆からチョコレートになるまでの全ての工程を手掛ける、いわゆる「クラフトチョコレート」。良質のカカオを唯一無二のチョコレートに仕上げます。
カカオときび砂糖だけで作り、ほろ苦さの奥にある、まろやかな甘み。カカオの香りが心地よく鼻を抜けていくチョコレートです。
山谷麻美子さん:
「これは産地別のカカオ豆なんですけど、私たちはブレンドはせず1種類ずつ作っていて、それぞれの産地の違いを楽しんでもらえるようなものを作っています」
山谷明広さん:
「中米の国とか、アジア、アフリカ、各大陸のチョコレートを常に食べられるようにしています」
インドネシア産は、スパイシーでハーブのような風味が特徴。
アフリカ・ガーナ産はミルキーでナッツの香ばしさを感じるなど、カカオ豆は、作られた産地によって味わいが異なります。
その違いを最大限に生かすには、手間暇かけた手仕事が欠かせないといいます。
■高カカオチョコの苦さの原因「皮と胚芽」を手作業で8時間かけて取り除く
この日使うのは、中央アメリカ・ベリーズ産。華やかで甘酸っぱいベリーのような風味が特徴です。
小さな豆や欠けたものは、味に影響が出るのですべて手作業で取り除きます。
続いて、豆をロースト。火加減や時間は、何度も試作を重ねました。
麻美子さん:
「風味に関わってくるところで、温度とか時間は公表できない。皮の厚さとか粒の大きさも産地によって違うので、調整してローストしています。焼き過ぎると風味が飛んでしまうので、しっかり中まで火を通しつつ入れ過ぎない」
厨房には、かぐわしい香りが広がります。すると、豆を手にとりました。
明広さん:
「僕たちは、この皮むきを全部手作業でやっていて…」
夫婦が最もこだわる工程が、一粒ずつ皮や胚芽(はいが)を取り除くことです。
明広さん:
「カカオには胚芽があって、溶けなくてチョコレートにならないので、雑味の元」
作業にかける時間は、8時間。気が遠くなる作業ですが、雲泥の差がでるといいます。
明広さん:
「市販のチョコレートで(カカオ)75%とか、85%とかってすごく苦くて。その原因のほとんどは皮とか胚芽。豆によって皮の厚さとか張り付き具合が違うので、全部取り除くには手作業じゃないと難しいです。板チョコ1枚作るのに30粒くらい剥かないとならないです」
ようやく皮をむき終えると、ミキサーで砕きます。
そしてメランジャーという石臼のような機械ですり潰し、カカオ豆の脂肪分「カカオバター」を出して、ペースト状にしていきます。
明広さん:
「何時間やるかによって風味が変わったりとか、滑らかさが変わったりするので、産地によって何時間やるか決めています。ベリーズ産は24時間回してチョコレートにしています」
少しずつ1時間ほどかけてカカオを入れ終えたところで、まろやかな甘みの「きび砂糖」を入れます。
「カカオ」が75%で「きび砂糖」は25%。カカオの味を楽しめるよう、材料はこれだけです。
あとは24時間、じっくり練り続けます。
■初めて食べたクラフトチョコに衝撃 自動車会社を辞めチョコ作りの道へ
2人はともに自動車会社の元エンジニアで、6年前に結婚しました。
共通の趣味である「コーヒー」をきっかけに、週末限定でコーヒースタンドをオープン。その頃に出会ったのが、「クラフトチョコレート」でした。
麻美子さん:
「2人でマルシェにいった時に、いろんなお店が出ている中で、広島のクラフトチョコレート店が出店されていて…」
明広さん:
「試食を渡されてひとかけら食べたんですけど、あまりの美味しさに買いに戻ったよね」
麻美子さん:
「今まで食べていたチョコと全然違うことに感動して」
初めて食べた「クラフトチョコレート」に魅了され、ワークショップに通ったり自宅で試作したりして、チョコ作りを学びました。
麻美子さん:
「定年まで会社でずっと働いて、大半の時間を会社で過ごすと考えた時に、そろそろ別の事もやってみたいという思いですかね」
2021年、麻美子さんの退職を機に、クラフトチョコレートの販売をスタート。2022年には明広さんも退職し、夫婦でクラフトチョコレートの魅力を伝えるべく、販売だけでなくワークショップを開くなど精力的に活動しています。
明広さん:
「間違いなく良かったよね」
麻美子さん:
「楽しいですね」
■「食べた瞬間に幸せを」「街の新しいお土産に」…クラフトチョコで描く2人の未来
24時間練り上げたチョコレートは、きめ細かな液状になりましたが、まだ完成ではありません。
「テンパリング」といわれる温度調整を施して、「カカオバター」の結晶を整えます。一度温めたあと、ヘラを使い温度を下げます。
麻美子さん:
「テンパリングって温度調整をしているんですけど、まず始めに高い温度にすることによって、チョコレートの結晶構造をバラバラの状態を作って、その後、狙いの温度に下げていくことによって結晶を綺麗に並べ直す。綺麗に並べ直すことができると安定したチョコレートになるので、艶があるチョコレートになったりとか、冷やすとパキッと割れる。油分を追加していなかったり、乳化剤も一切入れていないのでかなりシビアで、0.5度以内の誤差で温度調整をかける感じですね」
狙いの温度になると、型に流し込みます。
しっかりと空気を抜き、小さく砕いた「カカオ」を乗せ…。
冷やし固めてようやく完成です。
明広さん:
「うん、いいね、硬い」
麻美子さん:
「口溶けもいいね。フルーツのベリーっぽい風味がしっかり出ているので。ベリーズ産が一番市販のチョコと違う味なので、一番驚いてもらえます」
山谷さん夫婦の手仕事が生み出した、「クラフトチョコレート ベリーズ」(1袋2枚入り 450円)。カカオが持つ、ベリーのようなさわやかな酸味と、ほろ苦くなめらかで濃厚な甘み。今までのチョコレートのイメージが変わる、極上の逸品です。
男性客:
「美味しくていくらでも食べられる。恩師への手土産だったりとか、家族へ何度も持って行ったことがありますね」
男性客:
「ベリーの味がしたり、産地によって味が変わる。今まで食べたチョコレートの概念が変わる」
女性客:
「ここのチョコレートだけは食べられるんです。他は食べられないんです、甘すぎて」
麻美子さん:
「機械で作られるチョコレートでは絶対に出せない味を、手作業でやることによって作りたい。食べた瞬間に『美味しい、幸せだな』って思えるものであるべきだと思っていて、そこは追求していくべきだと思っています」
明広さん:
「産地が変わると味がこんなに違うんだって事を知ってもらえるように、カカオ本来の味が引き立つチョコレートにしたい。豊田市の新しいお土産にチョコレートをしたいなと」