「大麻取締法」の改正の動きが活発化しています。法改正のポイントと、「大麻草栽培」のプロジェクトを立ち上げた三重県明和町を取材しました。

■改正のポイントは「医療用の解禁」「使用罪の創設」

 大麻による検挙者は8年連続で増加していて、2021年は過去最多の5783人でした。10代・20代の若者が7割を占めています。

【動画で見る】栽培プロジェクト始めた自治体も…『大麻取締法』“75年ぶり改正”の動き 医療用解禁と使用罪創設検討

 1948年に施行された「大麻取締法」では、大麻の所持や医薬品への使用を禁じていますが、2023年は「大麻取締法」を75年ぶりに改正する動きがあります。改正のポイントは「医療用の解禁」と「使用罪の創設」です。

「医療用の解禁」について、日本では有害成分があるなどとして、大麻草から製造された医薬品の使用はこれまで禁止されてきましたが、今回の法改正の方針では、難病患者が大麻草から製造した治療薬を使用することもできる見通しだということです。

 難病の1つに挙げられているのが「難治性てんかん」です。

 専門家によると、「てんかん」は国内に100万人ほどの患者がいて、そのうち約2割が、既存の薬では効きにくい「難治性てんかん」だといいます。その治療に大麻成分を主とした薬の効果が期待できるということです。

 改正のもう1つのポイントが「使用罪の創設」です。専門家によると、現行の法では「大麻を栽培、または譲り受けて所持し、使用した者は5年以下の懲役に処する」となっています。

「使用のみ」に関する罰則規定はなく、逮捕の理由は「所持」となっていて、取り締まりを強化してより厳罰化するために、罰則を設けるということです。

 使用について罰則規定がないことには、大麻取締法が制定された時の歴史的な背景があります。

AllAbout[脳科学・医薬]ガイド 武蔵野大学薬学部の阿部和穂教授:
「農業の中で、大麻草というのは日本では古来から栽培されていたわけです。大麻草の生産に関わる方たちが、栽培とか収穫中に大麻草から発生した成分を吸い込むことがあって、ちょっと酔っぱらってしまうというようなことが当時から知られていたんです。ただ血液中に大麻成分が検出されたということだけで、罪に問うのはやめましょうとなったわけです」

■「麻文化を復興したい」三重県明和町が大麻草栽培のプロジェクト

 大麻の栽培は、かつて三重県でも行われていました。法改正の動きを受けて、三重県明和町で新しいプロジェクトが立ち上がりました。

 明和町のホームページには「大麻栽培の始まり」と書かれています。町長に話を聞きました。

世古口哲哉町長:
「その昔、明和町でも麻(大麻)とかが栽培されていた。麻とも関わりが深い明和町で、麻文化の復興をしていきたい」

 明和町では1000年以上前に、大麻の栽培が行われていたといいます。「麻」にまつわる神社や地名がその名残です。

 生産された麻は、神事やしめ縄などに使われますが、現在、栽培農家は全国で10軒にも満たず、確保が難しくなっています。

 大麻取締法の改正の動きを受けて、2022年に三重県が「大麻取扱者指導要領」を改訂し、明和町は2023年、地元の企業や大学と協力して大麻草栽培のプロジェクトを立ち上げました。

 栽培には町内の遊休地を活用し、4月18日には種まきが行われました。

麻農家:
「皆さんがちゃんと見られる場所で、胸を張ってできるようになったというのが、麻農家としては非常に幸せです」

 これまでは規制が厳しく、山奥など人目のつかない場所でしか栽培ができなかったといいます。

麻農家:
「画期的じゃないですかね、行政と一緒に大麻の栽培をするというのは。イメージが変わったら嬉しいです」

 このプロジェクトについて、町民は…。

明和町民:
「いいか悪いかも判断がつかないのが正直なところですね」

別の明和町民:
「大麻やで麻薬関係やで、こんなん作ってもええんかね?前は作れなかったのになと思います」

また別の明和町民:
「間違った使い方をしていかないのであれば、いいんじゃないかなと思います」

 安全性を気にする声が聞かれましたが、世古口町長は「加工しても、一般的にいわれる麻薬の大麻にはならない種類」と説明しています。

 栽培するのは、違法薬物の原料にならない産業用の大麻で、安全性には問題がないということです。

 引き続き町民の理解を求めながら、7月上旬から収穫・加工し、地元の神社に提供する予定です。

世古口町長:
「医薬品、食料品、化粧品、建材にも使えますので、産業化にも結び付けていければなと」

2023年4月21日放送