石川県内灘町では、観測した震度は5弱でしたが、建物だけでなく道路が大きくゆがむなど甚大な被害がでました。原因は液状化とみられますが、愛知県では西部を中心にリスクが高い地域が広がっています。

 12日、石川県内灘町に向かうと、道路が大きくめくれ上がり、小学校の校舎の入口が浮いたように壊れるなど、子供たちの安全を確保できない状態になっていました。

 子供たちが別の小学校で授業をできるように、引っ越し作業が行われていました。

 内灘町は金沢市に近く、今回の地震の震源から比較的離れていて、観測した震度は「5弱」です。しかし、15日時点で確認された家屋の倒壊は、一部破損も含めると1000棟以上にのぼります。

【動画で見る】地盤が推定で約3m移動…能登半島地震でも起きた“液状化” 専門家「南海トラフ地震では愛知で最大の被害」

 大きな被害をもたらした原因とみられているのが「液状化」です。

東京電機大学の安田進名誉教授:
「道路も1mくらい盛り上がっていたり、普通の液状化の被害と全然違う。液状化に伴って『側方流動』が起きた」

 現地を調査した東京電機大学の安田進名誉教授によると、内灘町では「液状化」に伴い、地盤が横方向に動く「側方流動」という現象が発生。地割れの大きさなどから、地盤が3mほど移動したと推定されています。

「液状化」とは、砂の粒と水が混ざり合いバランスを保っている地盤が、地震で揺らされ砂の粒と水が分離し、重い砂は地中に沈み、水が上昇することで起きる現象です。

 そのため地盤は柔らかくなり、建物が崩れるだけでなく、地中にあったマンホールなどが飛び出してしまいます。

 液状化は、河川の近くや埋め立て地などで起きやすいとされていますが、東海3県にもリスクが高い地域がいたるところにありました。

 高層ビルが立ち並び、多くの人が行き交う名古屋駅前です。

名古屋大学の野田利弘教授:
「名古屋市の西側、あるいは熱田神宮の西側あたりは昔は海でした。これが時間をかけて海がひいていって、現在は陸地化されております」

 6000年ほど前の地形を再現した地図では、岐阜県大垣市まで海が広がっていて、名古屋では堀川より西側、熱田神宮より南側も海です。

 海だった場所に川の土砂が堆積してできたやわらかい地盤のため、愛知県では西部を中心に液状化のリスクが高い地域が広がっています。

名古屋大学の野田利弘教授:
「(南海トラフ地震が起きると)愛知県だけでいいますと、液状化による全壊は内閣府の想定によりますと約2万3000棟。わが国最大の液状化の被害が発生する所だと」

 海抜ゼロメートル地帯にあたる愛知県愛西市には2023年3月、「広域防災活動拠点」が完成しました。

 津波や液状化による河川の堤防の破壊などで、浸水した地域から逃げ遅れた人を救うための防災拠点で、高さ3mの高台が作られ、大型ヘリが離着陸できるヘリポートにもなっています。

 さらに、普段は歩行者用のスロープが災害時にはボートの船着き場になるよう、浸水する前提で作られています。

 防災倉庫の中にはボートや毛布、水などを備え、災害用トイレの設置もできるといいます。

 東日本大震災以降、行政による「備え」は進んでいますが、専門家は自らその災害リスクを知っておくことが重要だと話します。

名古屋大学の野田利弘教授:
「市町が出しておりますハザードマップを見ていただくことが必要かと思います。自分の住んでいる土地がどういう成り立ちでできているのか、その辺りにどういう被害があるのかを知ってもらうことが大事かと思います」

 自分たちが暮らしている地域が液状化の恐れがあるかどうか、液状化の危険度を調べる方法として、ハザードマップがあります。

 愛知県の場合は、「防災学習システム」というサイトがあり、地図上で危険度を見ることができます。スマートフォンでも見ることができます。

 三重や岐阜についても、県やそれぞれの自治体がハザードマップを出していて、ホームページなどで確認できます。