2023年8月、スイレンを抜いた一面にスイレンが広がっていた名古屋市千種区の池は、11月に“全部抜く作戦”で駆除しましたが、その後どうなったのか。12月に改めて取材すると、悩ましい課題と、新しい可能性が生まれていました。

■前月に“全部抜く作戦”実施の池 1カ月経ち…

 2023年12月、名古屋市千種区の「東山新池」を改めて訪れました。

8月には4分の3ほどを覆っていたスイレンでしたが、11月に40人がかりで“スイレン全部抜く作戦”を実施しました。

【動画で見る】全部抜く作戦で駆除後…負担かかるスイレンの処理で企業が名乗り「高付加価値生み出せる」意外な活用方法とは

それから1カ月、現地には葉っぱはきれいになくなっていました。

除去を主導した「名古屋千種ライオンズクラブ」に話を聞きました。

名古屋千種ライオンズクラブ 若山哲史さん:
「一見すると何もないように見えるんですが、その下にはまだ茎の部分がはびこっていますので、また夏になると生えてくると思います」

■悩みの種のスイレンを「利用したい」と企業から申し出

 2024年もスイレンに悩まされそうですが、放送を見たある企業から、スイレンを再利用したいという申し出があったといいます。

若山さん:
「問い合わせがありまして、企業さんだったんですけど抜いたスイレンの処理について聞かれました。今後名古屋市とも協議をして、有効活用ができないかと模索中です」

抜いたスイレンは1週間ほど土手で天日干しにして水分を抜き、焼却処分をしていますが、手間もかかるうえ、燃やす際には二酸化炭素も排出するため、大量のスイレンの処理は、人にも地球にも負担をかけていました。

スイレンの再利用を申し出たのは、資源のリサイクルをしている岐阜県岐阜市の「サンウエスパ」です。会社を訪れ、研究員の西依束さんに話を聞きました。

サンウエスパの研究員 西依束さん
「東海テレビさんの放映を見て、近くで水草で困っているところがあるんだと知って。水草から高付加価値を生み出すというところを強みにしています」

西依さんは、水草から付加価値を生み出せると自信を見せます。

■南米原産の大型植物から“ジン”を製造 国際的品評会で世界一の評価獲得

 サンウエスパの本業は古紙のリサイクルですが、その処理技術を生かして数年前から水草のアップサイクルを行っているということです。

西依さんが見せてくれたのは、会社の駐車場にあった、大型の草です。

西依さん:
「ホームセンターやペットショップでも売っている南米原産のホテイアオイっていうんですけど、これ1株なんですけど、どんどん子供が脇にできていって、どんどん増殖していってしまって、条件がいいと7カ月で200万倍」

サンウエスパはカンボジアにも拠点を置いていて、増殖して環境を悪化させているというホテイアオイの再利用に取り組んでいます。

そのホテイアオイを分解してエタノールを製造し、現地で取れるフルーツやスパイスを加えてオリジナルのジンを作ることに成功しました。

2023年2月の国際的な品評会では、世界一の評価を獲得し、品質も確かです。

■“無価値のものに価値”で目指す課題解決

 そしていま取り組んでいるのが、水草由来の炭「バイオ炭」を作ることです。「バイオ炭」は、水草を乾燥させて、内部に酸素が入らない特殊な炉で加熱して作られます。

キノコ類を栽培する“菌床”として活用できるということで、ゆくゆくは岐阜で研究が進んでいるトリュフ栽培にも繋げたいといいます。

また、使い終わった菌床は家畜の寝床に敷いたり、たい肥として使ったりすることも見込んでいるということです。

水草は水分を多く含むことから加工処理に手間がかかり、アップサイクルが難しいとされていますが、本業で培った技術からそこに商機があると考えたということです。

西依さんは「無価値なもの、未利用のものを見つめ直して、それが価値あるものに変われば、人の生活に役立ったり、売れていくことで課題を解決ができればこれほど素晴らしいことはない」とスイレンの活用にも期待を膨らませています。

2023年12月22日放送