電動キックボードの普及が進んでいるが、2024年2月には名古屋市中区で、男性が電動キックボードと衝突して大けがをするなど、事故も起きている。話題になったJAFが公開した実験映像では、衝突が大きな事故に繋がることもわかった。

■改正道交法で電動キックボードは自転車に近い扱いに

 名古屋市中区栄4丁目の路上で2024年2月3日、道路を横切ろうとした男性(47)が、一方通行を逆走してきた電動キックボードと衝突して転倒し、鎖骨などを折る大ケガをした。電動キックボードの男はそのまま逃走したが、2月8日に警察に逮捕された。

【動画で見る】人形での実験映像が話題に…電動キックボードと歩行者の衝突事故 地面で頭打った衝撃は“重篤”の基準超える

電動キックボードは、右のハンドルについたスロットルを押し込むと加速し、曲がるときはハンドル操作と同時に上体を傾けて進む。

2023年7月に施行された「改正道路交通法」で自転車に近い扱いとなり、最高時速20キロ以下などの基準を満たしていれば「特定小型原付」という分類になる。

ヘルメットは自転車と同じ“努力義務”で、16歳以上であれば免許は不要だ。

■あまり知られていない「電動キックボード」のルール

 2024年1月に発表された電動キックボードについての大手損保会社「損保ジャパン」の意識調査では「16歳未満は運転できないことを知っているか」という質問に対し「知らない」と答えた人が過半数だった。

「原則歩道を運転できないことを知っているか」という質問も、4割の人が「知らない」と回答した。

危険性を感じている人も多いようだ。

「電動キックボードを利用している人を見て、危険と感じたことはあるか」という質問に対しては、約8割が「ある」と答えている。

■JAFが公開した衝突実験映像が話題に

 JAFが公開した電動キックボードの衝突実験映像は、37万回再生され、話題となった。

電動キックボードにダミー人形を乗せ、衝突による頭部の損傷度合いを計測したテストで、実験に協力した名古屋大学の水野幸治教授に話を聞いた。

名古屋大学大学院工学研究科・水野幸治教授:
「その値が1000を超えていると、頭蓋骨の骨折とか脳挫傷の確率が高いと。2000を超えたら、だいたい重篤ということになります」

時速20kmの電動キックボードと歩行者が衝突した場合、ぶつかった瞬間の歩行者が受ける衝撃は「73.7」という値だった。

しかし、後方に倒れて地面に頭を打ち付けた時には「6957.8」になった。

水野教授:
「非常に危険な状態。歩行者とかに衝突した場合、むしろ衝突された人(歩行者)の方が危険なんだ、ということを踏まえて乗られた方がいいと思います」

また、水野教授が要注意と指摘するのが“段差”だ。高さ10センチの縁石を越えようとすると、躓いて転倒した。

水野教授:
「自転車ですとタイヤが大きいので、少々でも乗り越えていけるんですけども、電動キックボードのタイヤが小さいので、タイヤの半径を超えるような縁石は乗り越えにくいと」

乗る人が注意するのは当然だが、水野教授は周囲の人も巻き込まれないよう気を付ける必要があるという。

2024年2月9日放送