結果は伴わなかったが、三河の力を示した2試合

3月30日・31日にウィングアリーナ刈谷で行われた宇都宮ブレックスとのゲーム。シーホース三河は、GAME1は78-88で、GAME2は81-89で敗れ、前節の三遠ネオフェニックス戦を含めて3連敗となった。

リーグ最高勝率を誇る東地区首位・宇都宮とのゲームは、今の三河がBリーグでどんな存在か、自分たちの「現在地」を証明する大きなチャレンジだった。

GAME1は、序盤から宇都宮のオフェンスに翻弄され、三河は前半終了時点で34-49と15点のビハインドを背負う。一方的な展開になってもおかしくない中、3Qに持ち味のトランジションバスケから一時は逆転に成功。最多入場者数を更新したウィングアリーナ刈谷は、最高潮の盛り上がりを見せる。61-61の同点で4Qに突入し、勢いを味方にしたい三河だったが、最後は宇都宮に突き放された。

翌日のGAME2。この日も前半は宇都宮のシュートが高確率で決まり、三河は38-47の9点ビハインドで折り返す。だがGAME1同様、3Qに入り巻き返すと、迎えた4Qの残り8分32秒。ここからがこの日のハイライトだった。

バスケットボールは流れのスポーツだ。1つのシュート、1つのミス、そして1つのタイムアウトで、以降の展開は天国にも地獄にもなる。ジェイク・レイマンがスティールからバスケットカウントを獲得した瞬間、アリーナのボルテージは最高潮に達した。ボーナススローも決めて69-59と10点差。一気に突き放す予感すらあった。ところが、その後に待っていたのは宇都宮の14点のラン。オフィシャルタイムアウトのブザーが鳴ったとき、スコアは69-73を表示していた。

ランを許した時間帯について、西田優大は「決して気が抜けたわけではないと思います。僕たちの流れでもあったので、10点を守るのではなく、さらに点差を広げるチームのメンタリティがあればよかった。少し受け身になってしまった部分がありました」と悔やむ。

14点のランの途中、三河のライアン・リッチマンHCは2つのタイムアウトを請求しているが、この貴重なタイムアウト後のオフェンスで得点できていないことがターニングポイントとなった。ゲームを落ち着かせ、絶対に得点したいシチュエーションで、肝心のオフェンスが機能しなかった。前節や今節のGAME1では、タイムアウト直後にターンオーバーを犯したケースもあった。

このあたりが勝ち続けることで自信を積み上げてきたチームと、新体制になって1年目の若いチームの差なのかもしれない。オフィシャルタイムアウト後はゲーム巧者の宇都宮が一度もリードを許さず、三河にとっては悔しい結果となった。


リッチマンHC「いつかこのゲームが意味のあるものだったと言えるように」

東地区優勝を狙う宇都宮にとっても負けられないゲームで、意地と意地がぶつかりあった好ゲームだったが、わずかの差が明暗を分けた。

試合後、宇都宮の佐々宜央HCが「(三河は外国籍選手を中心に)1対1で守るのが難しいような選手たちがそろっていて、個人技が高い。2連勝しましたが、負けてもおかしくなかったゲームでした」と語ったように、宇都宮にとってもタフなゲームだったのは間違いない。

一方、会見場に現れたリッチマンHCは「宇都宮さんがリーグのトップである理由がはっきりと分かる試合でした。ただ、努力レベルでは負けていなかったし、その点では選手たちを讃えたいと思います」と振り返る。そして、こうも続けた。

「正直、今は傷ついていて、悔しい思いがいっぱいです。でも、選手やスタッフの長いキャリアの中で見たとき、今日は学びがあって、成長につながるゲームだった。自分たちはずっと『カイゼン』を掲げてきて、それは今日の試合も変わらず、学び、カイゼンし続けていかなければならない。シーズンを振り返ったとき、今日の試合が重要だった、意味があった試合だったと言えるようにしたいです」

ここ3試合は3Pシュートのディフェンスが鍵となった。三遠戦では48.1%、宇都宮戦ではGAME1が44.4%、GAME2が47.2%。どれも高確率で3Pシュートを決められている。守り切った上でタフショットをねじ込まれ、ツキのなさを恨みたくなる場面もあった。しかし、西田優大の考えは少し違う。

「僕たちはペイントからの失点を防ぐことが第一で、(ゲームプランに応じて)やられてはいけない選手には激しくチェックします。三遠戦に関しては、ペイントから得点されたシーンが多く、相手の3Pシュートどうこうよりも、やるべきプランを遂行できなかった印象。今日は、僕たちがやらせたくないことを実行でき、ゲームをコントロールできた時間帯もあった。だから(勝敗は)勝負所のちょっとの差。役割は遂行できたけど、それ以上に決め切られた。あとは1対1(のディテール)でどれだけ詰められるか」

宇都宮に真っ向から立ち向かい、用意したプランを遂行し、手応えも感じた。それだけに悔しさが募る。「2試合とも勝つチャンスはあったと思っています。ただ、勝負所の時間帯で宇都宮さんはやるべきことをやっていて、僕たちはターンオーバーだったり、やるべきことを遂行できなかったり。本当に細かい部分ですけど、その差かなと思います」

ただ、下を向いている暇はない。今週末には東地区2位・アルバルク東京とのゲームが控えている。さらに、川崎ブレイブサンダース、サンロッカーズ渋谷とチャンピオンシップ(CS)出場をかけた戦いは続く。「連敗は正直きついですけど、すべてが悪いわけではないと思っています。少しずつステップアップして、CSで戦えるチームを作っていく。全員が気持ちを切らさず、同じ方向に向かってやれば、最後には結果が出せるチームだと信じています」

リッチマンHCが話したように、悔しい経験を経て、最後には笑えるように。どんな強敵が相手でも「まずは自分たちにフォーカスすること」と、不屈のエースはカムバックを誓った。