東海テレビニュースONEでは、シリーズで「SNSな人々」をお伝えします。いまや“社会そのもの”といっていいほど私達をとりまいているSNS。そんな時代を「うまく生きる」ヒントをさまざまな人の声から探ります。

SNSが身近な存在となっている子供たちは、SNSによる性被害の危険とも隣り合わせだ。盗撮された画像や、「ディープフェイク」と呼ばれる合成された性的画像などが拡散し、子供たちが被害者にも、加害者にもなっている。

■見知らぬ“おじさん”から「会いませんか?」 性被害の低年齢化

 名古屋市昭和区にある性暴力救援センター日赤なごや「なごみ」では、24時間365日、ホットラインで、さまざまな「性被害」の相談を受け付けている。

【動画で見る】DMで「靴下売って」「会いませんか」…子供の性被害増加の背景に『SNS』卒アル写真もディープフェイクでポルノ画像に

電話に応対するスタッフのメモには「性被害 11歳(小6)の時 5個上の人から 性行為させられた」、「相手が許せない」などと書かれている。

「なごみ」に相談に訪れた18歳未満の人数は、7年間で5倍あまりに増えていて、被害者の低年齢化が進んでいる。その背景にあるのが「SNS」だ。

「なごみ」の加藤紀子センター長:
「やはり子供の被害は、SNS(関連)が中心で、年々右肩上がりで増えてきています」

名古屋市の繁華街、中区栄で、子供たちにどんなアプリを使っているのか、スマホを見せてもらった。

中学1年の女子生徒:
「これ全部SNSじゃない?もうインスタ、LINE、TikTok、TikTok Lite、YouTube、推し活のアプリくらい。あとBeReal、でもこれ全然入れてないほう」

中学生になったばかりの彼女の同級生には、『ちなみに何歳ですか?』というメッセージが送られてきたという。

中学1年の女子生徒:
「多分これが目的なんですよ、みんな。友達も、TikTokのDMでおじさんから来て。『何歳ですか?』みたいな。女の子ってわかったら、おじさんから急にDMがくる。プロフに『愛知・名古屋』って書いてあると、『会いませんか』みたいになっちゃって、そのまま友達は会っちゃったりしてる」

高校2年の女子生徒のスマホには『よかったら通学に履いてる靴下売ってください』というメッセージが届いていた。

高校2年の女子生徒:
「『靴下売ってください』とか、そういうやつ。めっちゃいるんですよ。TikTokに1回動画上げただけで結構…」

一緒にいた高校2年の女子生徒:
「後輩がインスタで来たDMの子と会ったら、おじさんだったみたいな。写真も送られていたから女の子だと思っていたらしくて」

女子生徒のスマホには「お金払うんで遊びませんか?」というメッセージも送られていた。

SNSにより簡単に知らない人とも交流できるいま、子供たちに「性被害」の危険が忍び寄っている。

■同級生が「盗撮」…子供が被害者だけでなく加害者にも

「なごみ」は日々、さまざまな性被害の相談と向き合っている。SNSが絡む子供の相談の増加にともなって、特にここ数年、性的画像や動画をめぐる被害が急増しているという。

警察庁によると、2024年にいわゆる撮影罪で検挙されたうち、被害者が20歳未満だったケースは半分弱にのぼった。

匿名性が高いSNS「テレグラム」のチャットルームには、女子中高生らを盗撮した画像の数々が掲載され、盗撮についての情報交換も行われている。

NPO法人ひいらぎネットの永守すみれ代表(35)は、5年前からボランティアでインターネット上をパトロールし、盗撮画像の監視や削除要請をしている。

ひいらぎネットの代表 永守すみれさん:
「『この『鳥』(撮り)というのが盗撮を示す隠語なんですね。ここに逆さの顔のマークあるじゃないですか。これが“逆さ”=下から撮る“逆さ盗撮”のことを。例えばこれなんかも鳥の絵文字が3つ書いてあると思うんですけども、“逆さ鳥”、“校内鳥”、“トイレ鳥”」

永守さんによると盗撮関連のアカウントは、隠語を使ってXなどユーザーの多いSNSでつながり、画像を販売や交換するために、テレグラムなどより匿名性の高いSNSへと移行するケースが多いという。

この日、パトロール中に1本の動画が、永守さんの目にとまった。

高校の教室で、着替えをしている女子生徒を机の下から盗撮した動画だった。撮影したのは「同級生」とみられる。

そして、購入を呼び掛ける投稿もあった。

SNS時代、子供は被害者にも、加害者にもなっているのが実情だ。

■盗撮された動画が…止められないSNSでの“拡散”

 福岡県に住む佐藤さん(仮名・43)は2024年7月、中学3年の娘が通う学校から、娘を含む8人の女子生徒が「教室で盗撮被害に遭った」と聞かされた。

佐藤さん(仮名):
「男子生徒2人がスマートフォンを録画状態にして置いていて、体育の更衣が撮られていた」

加害者は同級生の男子生徒A、Bの2人で、体育の着替えで女子生徒が使っていた教室にBのスマートフォンを置いて盗撮し、Aに送っていたという。

学校からは、「2人のスマホにあった動画データは消去した」と説明を受けたが、2カ月後、グループLINEで、動画が拡散されていたことが発覚した。

佐藤さん(仮名):
「子供同士で勉強しにカフェに行った時に、加害者Aと同じ部活に入っている子がいて、加害者Aが直接その子に『●●くんと〇〇くんにも動画を送っている』っていう内容の話をしていて、『これはおかしいじゃないか』と」

佐藤さんは学校に対し、拡散の範囲を他のSNSも含めて調べるよう求めたが「そこまでの権利は学校にはない」と調査を拒否された。

警察からも「元のデータが消されているため“撮影罪”には問えない。ある程度までしか追えない」と告げられたという。

佐藤さんの娘を含む被害生徒たちは、盗撮動画を所持しているかもしれない同級生たちと机を並べて、中学生活最後の半年あまりを過ごし、2025年春に卒業した。

佐藤さん(仮名):
「卒業した後、どこかに隠し持っていたものを、自由に拡散する可能性は結構あるんじゃないかなって。加害者から送られた人までは突き止められたとしても、例えばネット上にあがってしまっていて、そこからさらにとかなってくると、もうわからないですよね」

■“卒業アルバム”の写真が…「ディープフェイク」の闇

 ひいらぎネット代表の永守さんは、ここ数カ月で急拡大している「新たな被害」に、危機感を募らせている。

SNSに、ある女子児童の卒業アルバムの写真がアップされていて、女子小学生を示す「JS」の文字とともに、児童の名前がフルネームで掲載されていた。

動画を再生すると、児童が服を脱ぎ、上半身があらわとなった。

永守さん:
「上半身服をはだけて、胸を見せている動画が、画像1枚から作れてしまうんですよ」

生成AIを使った子供のわいせつな画像や動画を作り出す、いわゆる「性的ディープフェイク」だ。無料のサイトで、誰でも簡単に作れてしまう。

永守さん:
「(以前は)ヌードの画像だけだったんですよ。それが画像一枚から動画ができるようになってきた。短い間でどんどん過激なことができるようになってしまっている」

テレグラムには「都道府県別卒アル」と呼ばれるチャットルームもあり、『卒アル届いた 気になったらDMお願いします』『JC同級生卒アル 気に入ったメスいたらDMで教えて』などのメッセージがある。

中高生がアップしたとみられる卒業アルバムの写真から、次々とポルノ画像が作られ、SNSで拡がっている。

子供たちが盗撮やAIポルノの被害者にも加害者にもなっている現状に、永守さんは「親子でその危険についてもっと話し合うべき」と訴える。

永守さん:
「別に今の子供が特別、道徳心を持っていないみたいなことはないと思っているんです。ただ、私たちが子供の頃にはなかった技術が、デバイスが、身近にあることによってできてしまう。撮影罪ができたことで、実は販売目的で盗撮された画像や動画を所持していることも違法になっている。『持ってるだけでもダメなんだよ』みたいなことを家庭で伝えていくのも重要。1人1人が“節度をもって”使っていく必要がある、それはおとなもこどもも。『それ、自分の家の玄関の前にも貼れる?』って。リアルでできないことはネットでもしちゃいけない」

2025年4月15日放送