インタビュー

内山理名さんインタビュー

――野村を演じていて、どんなことを感じていますか?

演じれば演じるほど、野村は難しい役ですね。出産の経験の有り無しに始まって、ワーママのこと、『私がやり遂げないと』という野村の思い、野村の仕事に納得できない土井さんの気持ち...。いろんな要素があるため、角度を変えると見えてくるものが違うので、つい迷ってしまって。いくつもの層が折り重なって『ノンママ白書』というドラマが出来上がっていくので、作品の奥深さを感じています。

――野村を演じる上で、内山さんが大切にしていることは?

"誇り"でしょうか。『この部署でワーママは私しかいない』ということに対しての。野村はワーママの立場からすると、良い発言もしています。とはいえ彼女の気持ちが能力に追い付いていないのは問題ですよね。土井さんもそのことで頭を悩ませていますし。

――土井と野村の仲は話が進展するたび、こじれていきますが。

多分、二人は野村が結婚する前も一緒に仕事をしてきたと思います。そのとき、土井さんが野村の仕事ぶりを認めていなかったにしろ、そこまで意見に食い違いはなかったはずです。ワーママになり、野村が以前より強くなったことで意見を主張するようになった結果、今の状況になっているのでしょうね。

――同性だから分かり合えることもあれば、分かり合えないこともありますよね。

お互いもう少し認め合えたら、と私も思います。でも、二人とも仕事に追われ、やらなければいけないことが山積みです。今のところは、コミュニケーションを取る時間すらないんじゃないでしょうか。野村って『こうです!』となると、その思いだけで暴走しますが、土井さんも意外とそういうタイプのような気がするんです。実は頭でっかちじゃないか、と(笑)。だから共通項はあるとは思うんですけど。

――「ノンママ白書」作品そのものの感想をお聞かせください。

土井さんを始め、アラフィフ世代の女性の人生観に共感する方もいる一方で、野村のことを理解してくださる方がいるような気がします。野村って、ちゃんと仕事をするために上京してきた人だと思うんです。結婚後、働かなくても生活は出来るけれど、やっぱり仕事が好きだし、家庭以外にやりがいを感じられるものが必要じゃないか、と。もし自分が結婚して子供が出来たら...と考えたとき、私も女優という仕事が好きだから、何とか続けたと思うに違いません。だから、私は野村のことを理解できます。

――共感できる、と?

上司に対する発言の数々はどうかと思いますよ(笑)。ただ、野村の根本は分かります。

――内山さんは、土井のことをどう思いますか?

野村と同じくらい、土井さんの言っていることも分かります。土井さんも野村が時短で働き、給料も削られる中、いろいろ苦労していることを分かってはいると思います。とはいえ、野村が『ワーママだから』ということを盾に言ってくることをすべて認めるわけにはいかない。土井さんのそういう気持ち、実体験として理解できます。

――それは、どういうことでしょうか?

例えば、ラブストーリーで監督が男性の場合、『この場面でこうしてほしい』とのリクエストがあったとき、『女性はそんなことを言わないし、しないのでは』と思うことがあります。でも、監督のリクエスト通りに演じて完成したものを見ると、作品からのメッセージがはっきり伝わってきて、『実際こうだからといって、演技でもその通りにすればいいってものじゃないんだ』と分かったんです。多分、土井さんたちが進めているプロジェクトでも、『野村の実体験を反映した案より、土井さんの案が正解』ってことになると思います。

――野村と同じく、土井にも共感できる部分ある、ということですね。

30代の私が50代の方の考えを簡単に『共感できます』なんて言うのはおこがましいので、先ほど言った、理解できる、という言葉が合っていると思います。土井さんの立場になったら大変でしょうし、野村のことも部長として情に流されないでいる強さは格好いいと思いました。

――では、内山さんの理想とする50代とは?

おぼろげにはありますけど...。理想の30代になれていませんし、今を充実させて、まずは40代を何とか理想に近づけなくては、と思っているところです (笑)。今回、鈴木保奈美さんと初めて共演させていただきましたが、保奈美さんは私の演技を大きな器で受け止めてくださり、私も今の保奈美さんの年齢になったとき、同じような振る舞いのできる女優でいたい、と思いました。お仕事と家庭をしっかり両立させているのも素敵ですし、目標となる先輩に出会えてうれしかったです。

――ドラマも中盤に入ります。土井と野村の関係がどうなるのかも注目ですね。

野村は理想が高く、母親になったとはいえ、女性として、また企業で働く者としてまだまだ成熟していません。しなくてはいけないことがたくさんあるので、いっぱいいっぱいの状況ではありますが、今後野村は野村なりにいろんなことを経験していきます。その中で野村が変わっていくのか、土井さんとの対立を含め、やっぱりこのままなのか(笑)。野村の人間性がどうなっていくのか、最後までご覧ください。