国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」について、三菱重工業は30日、開発費を大幅に削減する方針を発表しました。

 開発拠点は愛知県豊山町に置かれていましたが、事実上の事業凍結の方針に、町には動揺が広がっているようです。

三菱重工業の泉沢社長:
「スペースジェットへの投資も圧縮してまいります。開発活動についてはいったん立ち止まりをいたします」

 30日、三菱重工が発表した新たな事業計画。三菱スペースジェットの開発費を、今年度の600億円から3年間で200億円に大幅に削減すると発表しました。

 旅客機の就航に必要な型式証明の取得に向けた作業は続けるものの、事業化は事実上の凍結です。

 開発する三菱航空機が拠点を置く愛知県豊山町。町の面積の3分の1を県営名古屋空港が占め、スペースジェットのホームタウンということもあり、「ヒコーキのまち」として売り出してきました。

 30日、町役場を訪ねると、今回の事業凍結に頭を悩ませていました。

豊山町産業建設部の担当者:
「MRJミュージアムができた時に、皆さん大変興味を持たれてですね、問い合わせが結構あったんです。大変期待をしていたんですけれども、こういったことになってどうなるのかなと…」

 2017年にオープンした三菱の展示施設。スペースジェットの工場内で組み立ての様子などを見学できるとあって、観光の目玉として期待されていましたが、今後は不透明に。

 今年3月に作った飛行機だらけの観光パンフレットも、スペースジェットの前身『MRJ』が主役。デザインも変更するのでしょうか。

同・担当者:
「(来年度の変更は)いまのところ考えてないです。ぜひともですね、スペースジェット事業を成し遂げていただきたいという風には期待をしております」

 一方、豊山町の「あいち航空ミュージアム」にも、MRJの模型が…。

名古屋空港ビルディングの担当者:
「展示の内容や運営については、愛知県と今後相談していきたいと思っています」

 その豊山町で「日の丸ジェット」実現を待ち望んできた人がいます。戸田久晶さん(77)。三菱重工で航空機の整備に従事した「三菱一筋45年」のOBです。

戸田さん:
「びっくりというか、残念だという気持ちが最初に出ました。涙が出た、本当にそうだった」

 初の飛行試験の際、県営名古屋空港でその様子を見守ったといいます。同じ三菱の飛行機に携わってきた先輩として、事実上の凍結に無念さをにじませます。

戸田さん:
「携わってきた人らのことを考えると、残念、無念というか…。ここで諦めずに、またやるよとなったらすぐにできる、その気持ちは続けてほしいと思います」