事務局長が語った署名偽造を指示した人物とは…。愛知県の大村知事へのリコール運動を進めた団体の実質的なトップ・田中孝博事務局長が、東海テレビの単独インタビューに応じました。

 高須クリニックの高須克弥院長が主導し、河村市長も支援した大村知事へのリコール運動。県の選挙管理委員会の調査で、提出されたおよそ43万5000人分の署名のうち8割以上に「無効」の疑いがあるとされました。

 そして、無効となった署名の一部は、アルバイトが偽造したという疑惑が浮上しています。

署名簿書き写しのアルバイトをした男性:
「人材派遣会社から募集がきて、それに応募するかたちで参加しました。でかい大ホールみたいな所で、名簿の束がどさっと置いてあって、転記する用の名簿があって、そこに『名簿を見ながら書き写すように』と指示がありました。なんで佐賀でしたのかというのが疑問に思いますね」

 関係者への取材から見えてきた署名偽造の構図…。

 去年、リコール団体の関係者から名古屋の広告関連会社に、「代筆のため人を集めて欲しい」との発注が現金数百万円であったみられています。

 その後、下請け会社から人材紹介会社を通じて「署名偽造」のアルバイトが募集され、佐賀県で大規模な書き写し作業が行われたとみられています。

 この事務局のトップにいたのが、元県議会議員の田中孝博事務局長。渦中の田中事務局長が、東海テレビの単独取材に応じました。

Q.不正署名に関与したのかどうか?

田中事務局長:
「僕は関与はしていない」

 冒頭、署名偽造への関与を否定した田中事務局長。関係者によりますと、リコール団体側から広告代理店に署名を偽造するアルバイトを集めるよう依頼があった際、その発注書には団体幹部のサインと捺印があったといいますが…。

田中事務局長:
「なんかいっぱい書類があって、サインしたかなと思ったんですけど。人に発注するどうのこうのという書面なんてのには一切サインしていませんので。(Q.田中さんが発注書に署名したことは?)ないですね」

 と、一切の関与を否定しました。

 署名偽造を巡っては、愛知県警が提出された署名簿を差し押さえるなど、地方自治法違反の疑いで捜査を進めています。一体、だれが署名偽造を指示して発注したのでしょうか…。

 ポイントとなるのは、1500万円にも上ったとみられるアルバイト代などの費用の出所。

 先週、リコール活動を支援していた河村市長は…。

河村たかし市長(3月23日):
「公開質問状です。『会計報告が関係者に対しても未だに一切なされておらず、誠に遺憾です。市民の知りうるネット上等で1週間以内に公開されたい』。ここ(リコール事務局)が全部仕切ってますので。組織的にも経緯も、彼(田中事務局長)が全部仕切って分かっとるはずですから」

 この公開質問状に対し、田中事務局長は…。

田中事務局長:
「政治資金規正法に基づいてですね、3月31日までに提出すればいいと法律で明記されているわけで。本来、名古屋市長という重責の立場の方が、事前にそれを通知するというのは何の意図があるのかなと。河村氏の公開質問状の意図・内容、何を知りたくて何を伝えてほしいのかということを一番最初に感じました」

 リコール団体の「金の流れ」に注目が集まる中、田中事務局長は私たちに団体の収支を明らかにしました。

田中事務局長:
「組織活動費は4149万7544円。まさにこれがリコール活動(費用)です。(他には)人件費は合計で714万円、光熱費が49万円、事務所費が648万円です」

 リコール団体の収支報告には、リコール活動の支出と収入が記載されています。クラウドファンディングと寄付で5000万円近く集めるなど、収入はあわせて6100万円。一方、支出はおよそ5900万円。大半の4100万円が署名集めをする受任者の募集などの「組織活動費」に使ったといいます。

 署名偽造のアルバイト代などの費用1500万円は見当たりません。署名偽造の費用はどこで捻出され、誰が指示したのか…。

 田中事務局長は「署名偽造は佐賀県以外でも行われた可能性がある」とした上で、一連の不正を指示した人物についてこう言及しました。

田中事務局長:
「公職者のお名前に近い方、公職者のことを知っている方、公職者の方のお名前が無効で使われていることを明確に表に出すことによって利得のある方、そういう関係のある方々のやり方ではないかなと思います」

Q.裏で手を引いている人物がいると?

田中事務局長:
「………(『うん』と首を振る)」

Q.思い当たる方は?

田中事務局長:
「個人的にはいます。個人的にはいますけど、これはやはり人前で話すことではないと思っています」