小さな頃は体が弱かった…。三重県鳥羽市のフェンシング・エペの日本代表・山田優選手(27)は、小学2年でフェンシングを始め、2014年の世界ジュニアでは日本人初の優勝を果たしました。

 東京オリンピックへの切符をつかんだ山田選手は夢の舞台で、女手一つで支えてくれた母親への最高のプレゼントを狙います。


【画像20枚で見る】女手一つで競技費用も工面したおかんに フェンシング山田優が狙う最高のプレゼント


■三重・鳥羽市から初のオリンピック選手誕生…フェンシング山田優選手

 三重県鳥羽市では、初のオリンピック選手の誕生に、町は盛り上がっていました。

鳥羽市民の女性:
「自慢ですよね。学生の時から頑張っていたみたいで」

鳥羽市民の男性:
「有名なのは歌手の二人ぐらいですから、スポーツでは山田君ぐらいですからね。頑張っていただきたいです」

中村欣一郎鳥羽市長:
「夢のような…。鳥羽市としては、明るいニュースだなと思っております」

山田選手:
「なんか照れますね」

 山田選手は現在、地元を離れ、埼玉の自衛隊体育学校に所属しています。

■幼少の頃は体弱くぜんそく…女手一つで育てられた山田選手

 母校の鳥羽高校。リモートでの表敬訪問です。

山田選手:
「(コーチから)ヘラヘラしていて大丈夫なのかよく言われるんですけど、自分らしくうまいこと練習もできていると思います。人に言われた努力じゃなくて、自分の努力っていうのを見つけてほしいと思います」

 山田選手の種目「エペ」は全身が得点の対象。身長184センチと手足の長いリーチを武器に、去年3月の世界大会では元世界王者を破り、見事、初優勝。東京オリンピックの出場権をつかみ取りました。東京でエペ日本人初のメダルが期待されています。

 山田選手が小さい頃、両親は離婚。姉と二人、母の歩南さん(59)に女手一つで育てられました。今では強くたくましい印象の山田選手です。

母・歩南さん:
「(幼稚園の頃は)まだ小児ぜんそくがあって、1か月に1回は具合悪くなるような…」

 半ズボンを履いた日の夜に熱が出たり、体が弱く、ぜんそくをもっています。まともに運動すらできませんでした。それでも歩南さんは、スイミングや柔道など山田選手ができそうな競技を探しましたが、全て断られたといいます。

歩南さん:
「柔道の受け身でパンってホコリたつでしょ、あれで15分ぐらいすると咳き込んでくるんですよ。それぐらい弱かった」

 唯一始められたのが日本舞踊。「呼吸を整え、体を動かす楽しさを知ってほしい」、母の願いでした。

■中学で日の丸背負い高校インターハイは2連覇…姉と共に全国大会で活躍

 小学2年の時に近くのフェンシング道場に通い始めます。指導にあたっていた恩師の鈴木満さんは、当時の山田選手について「特にずば抜けたものはなかった」と振り返ります。

鈴木さん:
「お母さんは鍛えられるスポーツさせたかった。たまたま『フェンシングでもどう?』っていう話になって、お姉ちゃんと一緒にフェンシングしますって」

 その後、中学で日の丸を背負うと、高校ではインターハイ2連覇。姉と2人、全国大会で活躍するようになりました。しかし、2人が国内の大会で勝ち進めば進むほど、歩南さんにはある悩みが出てきました。

■諦めかけた五輪の夢も…母から返ってきた言葉「私の生きがいを奪わないで」

歩南さん:
「お金がいるぞって…。情けない話ですけど、全国大会とかで勝ち上がっていくじゃないですか。いくらかかるんだろうって、頭をよぎってくるわけですよね。素直に頑張れが言えなくなって…」

 子供たちを遠征に送り出してあげたい。しかし、借りられるお金には限度がある…。歩南さんは、その工面に行き詰まり、当時、仕事を掛け持ちしていました。

山田選手:
「フェンシングやめた方がいいのかなと…。姉も海外遠征出ていて、2人分なんて結構な額じゃないですか。だから僕はやめて働いて、姉に世界目指してもらおうかなって思って…」

 一度は諦めかけたオリンピックの夢。しかし、お母さんから返ってきたのは意外な言葉でした。

山田選手:
「『私の生きがいを奪ったら、仕事もできることもできなくなる』って言われて…。『私の生きがいのためにも頑張って』って言われて」

歩南さん:
「あの子、好きだからフェンシング。試合が近くなるじゃない、インターハイとか。寝ながら剣を振っているんですよ。何の夢を見ているのか分からないんですけど。家が狭かったもんでね、寝返りうって手が当たったりするじゃないですか。ぽんっと当たると、ぽんぽんぽんと返してくるんですよ、寝てるんですよ…」


■「おかんにメダル掛けてあげたい」…母に誓う表彰台

 その後、山田選手は日本大学に入学。2014年の世界ジュニアのエペ個人で日本人初の優勝を果たしました。

<母親への手紙>
おかんへ
最近、お金かかる事多いし、大変な思いばっかさせてごめんな。その分しっかりフェンシング頑張っとるからね。応援しといてな。いつもありがとう。


山田選手:
「メダルとって掛けてあげたら一番喜んでくれると思いますし、それができたらいいなって」

歩南さん:
「(目標は)もちろん一つでしょ、金メダルでしょ」

 夢の舞台で母親に最高のプレゼントを…。山田選手が目指すは、表彰台の頂です。