名古屋市千種区の覚王山に、“大盛の店”として長年愛されてきた食堂があります。この店が、建物の建て替えを終え、およそ1年半ぶりに再開しました。グランドオープンの日には、ボリューム満点の名物・大盛カツ丼などを求め、朝から常連客で行列となりました。

■待ちに待った人たちで大行列…大盛の店として愛される老舗がリニューアル

 名古屋の覚王山の参道で、大正2年(1913年)に創業した「玉屋」は、家族で営む“大盛の店”として長年愛されてきました。

【画像20枚で見る】名古屋・覚王山で長年愛されてきた大盛の店「玉屋」1年4か月ぶりに完全復活

 初代・斎藤文次郎さんが、昭和40年代に近所の学生に腹いっぱい食べさせたいと、ご飯を2合分使った大盛を考案。

カツが別皿にのせられた看板メニュー「カツ丼」のご飯は、大盛りでおよそ1キロとボリューム満点です。2020年8月にいったん店を閉じていた玉屋が、2021年12月10日にリニューアルオープン。

男性客:
「美味しいですね。1年半ぶり」

女性客:
「すごく染みていますよね」

 待ちに待った人たちで、外には大行列ができていました。

■油や小麦粉などが値上がり…820円だった「カツ丼」を900円へ苦渋の値上げ

「玉屋」の“看板娘”の女将の斎藤千寿子さん(70)。

千寿子さん:
「『お母さんがいないと寂しい』って、若い人でも年寄りも言って下さるから、頑張らんとね」

 老朽化でいったん店を閉じている間も、常連さんから再開を望む声が寄せられたといいます。今回、満を持してのリニューアルですが、悩みもあります。

千寿子さん:
「油と小麦粉が上がって」

 原材料の高騰により、定番のカツ丼は、820円から900円へ値上げすることを決めました。

 以前は普通盛りにプラス180円でやっていた名物の「大盛」については、学生たちにお腹いっぱい食べてほしいと始めたメニューだけあり、値段はまだ検討中でした。

■厨房では親子で仕込み…10年前に店に入った4代目が立派な跡取りに

 プレオープンの12月6日。厨房では、朝から3代目の斎藤隆敏さん(72)と4代目の拓哉さん(43)が親子で仕込みの真っ最中。玉屋では、昆布や煮干しは使わず鰹節だけで出汁を取っています。

3代目の隆敏さん
「7年くらい前、私が倒れてからは(拓哉が)。私、入院しとったもんで」

 10年前は会社員を辞め手伝いに入ったばかりだった息子・拓哉さんも、今や立派な跡取りとなり、貫禄もついてきました。

4代目の拓哉さん:
「小さい頃からずっと見ていましたから。目で見て覚えていましたね」

 新店舗では文明の利器の力も借りることに。新しく導入したスライサーでキャベツを千切りにしてみますが…。カバーが装着されていなく、キャベツが飛び散ってしまいました。慣れない機械に苦戦しながら、お客さんを迎えます。

■待ちに待った常連が続々…1年4か月ぶりに名物「カツ丼」を堪能

 プレオープンでは、メニューも客数も制限しての営業です。迷っていた大盛の金額は決まったのでしょうか。

千寿子さん:
「大盛りは、お客さんに一回聞いてみます」

 午前11時半にオープン。お客さんの第一号は、20年以上通う近所の生花店の男性でした。注文したのは、一番人気の「カツ丼」。大きく分厚いカツを揚げたら、出汁をたまり醤油とザラメで味付けした汁で煮込んでいきます。

 溶き卵を入れてとじた名物の「カツ丼」(900円)は、リニューアルしても健在です。ご主人は1年以上休んでいたこともあり、客の感想が気になります。

3代目の隆敏さん:
「(味は)本当のこと言ってもらわなあかんよ。1年4か月ぶりだで」

常連の男性:
「ちょっと味濃くなった?辛くは無いけど…」

千寿子さん:
「美味しいでしょ」

 その後も、次々と近所の人たちがやってきました。

男性客:
「待ちに待った。ちょっと長かったですね」

別の男性客:
「この辺は食堂が無いでしょ。待ちかねてたんじゃない。よそで食べても食べた気がしないもん」

 皆さん、美味しくてボリューム満点のメニューを待ち焦がれていたようです。

■決めかねていた大盛の値段…常連に相談しプラス300円に決定

 店の向かいの団子店の親子もやってきました。お母さんは大盛りの値段について相談します。

団子店の男性:
「(値上げは)一気にいった方がいいと思う。刻んで上げるよりは、やるときは一発だって」

女性客:
「足して1200円でもいい」

 ボリュームとお値打ちを売りに長年やってきただけに、大盛の値段設定に最後まで悩んでいたお母さんでしたが…。

千寿子さん:
「決まりました。(プラス)300円です。お客さんに納得していただいて、300円に」

 常連さんのおすすめもあり、大盛りはプラス300円と赤字にならない金額にしました。

■常連客「泣けてきそう」…名物大盛メニューが完全復活

 12月10日、いよいよグランドオープン当日。長年愛されているお店は、朝から大行列となりました。建物こそ新しくなりましたが、暖簾をくぐれば懐かしい空気が。皆さんお好みのメニューを注文し、久しぶりの玉屋の味を楽しんでいます。

35年前から通う男性客:
「言葉でないですね。泣けてきそうです。待っていました」

 一方、今日が初めてという人は、ボリュームに驚いていました。

女性客:
「ちょっと予想外。めちゃめちゃ大きいですね」

別の女性客:
「知ってて私は“小”にしました」

 玉屋のご飯のサイズは、少々(200グラム)、小(300グラム)、普通(500グラム)、大盛り(1キロ)の4段階。リニューアルを機に、プラス300円と以前より120円値上げした「大盛」を完食した男性は…。

玉子丼 大盛を注文した男性客:
「(大盛プラス300円は)安いと思いますよ。達成感がありますね」

 その後も、「カレーうどん定食 ご飯大盛」など大盛メニューが次々と出ていきます。

千寿子さん:
「ありがたい。『待っとったよ、待っとったよ』ってその言葉だけで、疲れが無くなりました」

 参道で愛される食堂「玉屋」が、1年4か月ぶりに完全復活です。