愛知県豊川市に、父の急逝で町工場の社長になった元看護師の女性がいます。この女性は、コラボ商品を作ったことがきっかけで、2021年12月に老舗の和菓子店の社長にも就任しました。女性は、様々な事業に挑戦することで地域を元気にしたいと奮闘しています。

■「初めは何回も辞めたいと思った」…看護師から町工場の社長に転身した女性

 1975年創業、愛知県豊川市の町工場「山本製作所」。

【画像20枚で見る】父の急逝で町工場の社長になった元看護師 コラボが縁で老舗和菓子店の3代目に

看護師をしていた田中倫子さん(36)は、祖父が創業したこの工場を受け継ぎ、女性社長になりました。

田中さん:
「父が病気で急死してしまったので会社を継ぐことに。全くわからないところからだったので、初めは辞めたいと思ったことが何回もあります」

 父親が大好きだった田中さんは、未知の世界ながらも会社を継ぐことを決意。工場は、他社向けに自動車や半導体の部品などを作ることをメインにしていましたが、田中さんはより精密な金属加工ができる最新の工作機械「マシニング」を導入し、オリジナル商品の製作に乗り出しました。

そのオリジナル商品が、殺菌作用やウイルスの増殖を防ぐ効果もあるともいわれる真鍮(しんちゅう)で作った猫のフォルムのマスクかけ「しっぽ貸し手」(3630円)です。猫のデザインにしたのには理由がありました。

田中さん:
「会社に猫が遊びに来て、社員たちが笑顔で接しているのを見て、いま必要なのはこういう笑顔なんじゃないかって」

「しっぽ貸して」や、卓上マスク置き「しっぽ使っ手」(7150円)のシリーズは、日本だけでなく海外からも注文が相次ぎ、半年で1万個以上売れるヒット商品に。

その反響もあり、会社の看板も「しっぽ貸して」の猫をデザインしたものに作り変えました。

■きっかけはコラボ商品の製作…老舗和菓子店の3代目社長にも就任

 田中さんの奮闘の場は、町工場だけではありません。

愛知県新城市にある、1930年創業の「とみかわや」は、香煎(こうせん)を練り込んだ饅頭の中に大きな栗が入った「本宮の森」(1個248円)や「かしわ餅」(3個441円)が人気の老舗の和菓子店です。

 田中さんは2021年12月に、この約100年の歴史を誇る和菓子店の3代目の社長に就任。老舗和菓子店の3代目になったきっかけは、2020年12月に山本製作所がとみかわやとコラボして作ったある商品でした。

田中さん:
「和菓子で使う黒文字という物。弊社が製造業で作っている真鍮と、和菓子を切るコラボ商品」

山本製作所が得意としている金属加工技術で、和菓子を味わうときに欠かせない菓子楊枝“黒文字”を製作。和菓子とセットで販売したところ好評だったといいます。

 町工場の社長をしていた田中さん、異業種の和菓子店を継いだ理由は…。

田中さん:
「分野は違うけど、弊社(山本製作所)の理念である『温もりのあるモノづくり』と、こちら(とみかわや)のスローガンも『いつもいつもありがとう』っていう同じようなコンセプトを持っているので、一緒に出来るんじゃないかって」

新社長の就任には、この道40年という和菓子職人も好意的です。

和菓子職人:
「若くて、とにかく熱心に一生懸命ですね。これから楽しみです」

■若い人にも和菓子を親しんでもらいたい…ロゴを「とみかわや」から「TOMIKAWAYA」へ変更

 老舗和菓子店の社長に就任した田中さんは、若い人たちにも和菓子を親しんでもらいたいと、ロゴの変更に着手しました。

田中さん:
「今までは平仮名表記だけど、横文字表記の『TOMIKAWAYA』のロゴを作っています。“あんこ”が『とみかわや』の推しですので、“あんこ”がイメージできるようなデザインに」

平仮名表記の「とみかわや」から、英語表記の「TOMIKAWAYA」に変更することで、クラシカルな和菓子店のイメージをチェンジ。

新たに加えられた黒い小豆の上に、アルファベットの「n」を崩した字を潜ませ、「an(あん)」が隠れているこだわりのロゴにしました。

 田中さんは、新商品も開発していました。

田中さん:
「(瓶の中に)“あんこ”が入っていまして、“あんこ“挟んでできたてのどら焼きを食べていただくセットを夏に向けて開発しています」

来店しなくても、家でできたてを食べられるよう、あんをジャムのように瓶詰めし、黒糖が入ったどら焼きに挟んで食べるセットを開発。

店は、2022年の夏に大きくリニューアルするため、新しいロゴと新商品の準備をすすめています。

■様々な業種に挑戦することで地域を元気にしたい…キッチンカーのレンタル事業もスタート

 さらに、田中さんは地域の企業と作ったキッチンカーを使って、女性向けに新たな事業を始める予定です。新事業は「キッチンカーで自社商品を売ること」だけではありません。

田中さん:
「女性とか主婦の方とか新しくビジネスを始めたい方が、サブスクで簡単に事業ができるよう、レンタカーの事業を始めたい」

これから起業しようという女性に向け、定額でキッチンカーをレンタルする事業です。

田中さん:
「地域が元気になることが会社のためになる。業種問わず色んな企業が協力し合って地域が元気になればいいな」

様々な事業に挑戦する田中さんは、地域を盛り上げるために奮闘しています。