愛知県の明治用水を巡る大規模漏水問題で24日、取水口から直接水を取り入れる「自然取水」が再開しました。これで農業用水の制限が緩和されますが、農家の不安が解消されない現実がありました。

 豊田市にある取水施設・明治用水頭首工。5月に大規模な漏水が発生してから、仮設ポンプでの取水が続いていましたが…。

(リポート)
「矢板で区切られた右岸側、黄色いウキの辺りが水面です。奥の取水口はこれまでむき出しになっていたんですが、半分以上が水に隠れました。自然取水が始まりました」

 右岸側に鉄の板を打ち込んで、水位をあげる工事が完了。24日、直接取水口から水を取り入れる自然取水が再開しました。

 これによって取水量は毎秒8トンほどから13トンに増え、25日から農業用水の制限が緩和されることになりました。

イチジク農家の長沢さん:
「ちょっとは上向きになってきたね」

 安城市でイチジクを育てる長沢昭義さん(78)。農業用水の供給が安定する兆しに、安堵の表情を浮かべていましたが…。

長沢さん:
「この根が(土の)上っ面だもんで、水が切れちゃうと枯れちゃう。困る、(水が)毎日来ないと」

 今回の制限緩和で全体の供給量は増えますが、毎日農業用水が使えるようにはなりません。

 これまでの供給方法は、対象地域を4つに分けて1日ごとに順番に給水するため、4日に1度でした。

 26日からは対象地域を2つに再編し、3日間ずつ「供水」と「断水」を交互に行う形に変更されるため、全体の供給量は増えますが、断水する期間があるという状況は改善されません。

 長沢さんが育てるイチジクは根が浅いため乾きやすく、本来は毎日の水やりが必要不可欠。断水だからと言って水やりを止めると、うまく育たないといいます。

 長沢さんは漏水が始まって以来、4日に1度供給される農業用水をためて使うなどして、なんとか乗り切ってきました。

 しかし、これから梅雨が明けたら夏本番。7月下旬の収穫にかけてが1年で最も水が必要な時期になり、「3日断水」には耐えらないといいます。

長沢さん:
「1日でも早く(水が)毎日来るようにきてもらわんと」

 1日でも早い全面復旧が求められる明治用水。

(リポート)
「左岸側には矢板が打ち込まれ、流れ込む水の量が減っているのがわかります」

 漏水の現場では、「穴」の周辺に鉄の板を打ち込んで補強する作業が進められていて、東海農政局は7月下旬にも平年並みの給水を再開したいとしています。