新型コロナ患者の「全数把握」の方法が過渡期を迎えています。三重県は、発生届の入力システムを9月9日から変更します。作業が負担となっていた医療機関からは期待の声も上がりました。

 津市の「岩尾こどもクリニック」。5日も午前の診療だけで、コロナの陽性者は13人。コロナの感染者が確認されると、医師はその数だけある作業に追われることになります。

岩尾院長:
「発生届、まずこれですね、HER‐SYSです」

 国の感染者情報管理システム「HER‐SYS(ハーシス)」。患者の情報を発生届に入力します。しかし…。

岩尾院長:
「いつ診断したか、検体とったのはいつか、検査したのはいつか、いつ発症したか…。(入力する項目は)…5,6…21,22…22ですかね」

 現在、このクリニックでハーシスに入力する情報は、症状やワクチン接種歴、基礎疾患の有無など22項目。クリニックが開いている時間は患者が次々訪れるため、入力作業は昼休みや診察終了後の夜間に行うしかありません。

岩尾院長:
「(入力時間は)だいたい1人当たり3分弱ぐらいですかね。でも20人いれば1時間ですから」

 患者の「全数把握」には欠かせない作業でしたが、患者の数が多ければ多いほど、この作業にかかる時間も増加し、医療機関の負担になっていました。

 こうした状況を受け、三重県では9月9日から、重症化リスクの低い患者に限り全数把握の方法を見直し。県独自のシステムを使い、入力項目を氏名・生年月日・住所の3つだけに絞ります。

岩尾院長:
「楽なんでしょうけどね。(新しい方法は)1分もあればいけるはずなんで、簡素化はされるんじゃないですか」

 最低限の作業に絞ることで医師らの負担軽減が見込まれる一方、これまでのような細かいデータは記録されないため、容体が急変した場合の対応は懸念されるといいます。

岩尾院長:
「万が一重症になったときに、その人がスムーズに診療をちゃんと受けられるか。そのシステムでつながるんでしょうけど、そこが若干心配ではあります」

 過渡期に差し掛かった全数把握の方法の見直し。愛知県と岐阜県ではハーシスの入力項目を減らすものの、発生届自体は全ての患者で継続します。

 発生届の継続に疑問を呈すのが、愛知県大口町のさくら総合病院・小林豊院長です。

小林院長:
「クリニックも医療機関もパンクしていますので、陽性と診断しても必ずしも発生届がリアルタイムで出せていないところもあるようなんです。症状が出ていない感染者も相当数いますので、だいぶ前から全数把握自体ができていないんですよね」

 入力項目を減らすことの効果については…。

小林院長:
「私個人としてはあんまり意味がないのかなと。発生届自体は出し続けなければいけませんし。各医療機関の負担軽減にもつながりますし、行政の方々の負担軽減にもつながるので、全数把握はもうやめてもいい時期に来ているんじゃないかなと思いますね」