将棋の藤井聡太五冠と、羽生善治九段との王将戦が8日から始まります。天才同士のドリームマッチを、羽生九段の「懐刀」と呼ばれる棋士が語りました。

 令和の天才か、平成の天才か…。8日から王将戦七番勝負が始まります。藤井五冠は、去年王将を奪い、タイトル5つとなりました。初防衛の相手は、将棋界のレジェンド・羽生善治九段です。

羽生九段(2022年11月):
「藤井さんとはかなり年齢が離れていますけれども、ひのき舞台で対戦することが実現できて自分自身も非常に良かったなという感じです」

 羽生九段は、1996年に25歳で当時7つだったすべてのタイトルを制覇し、通算獲得タイトルは前人未到の99期に上ります。

 誰もが認める「最強棋士」ですが、2018年に全てのタイトルを失って以来、獲得できていません。

長岡六段:
「年齢を重ねた方が、結構苦労されるような時代になってきた」

 こう話すのは、棋士の長岡裕也六段です。長岡六段は羽生九段と同郷という縁もあり、10年以上研究パートナーを勤め「懐刀」とも呼ばれています。

 最強のレジェンドに立ちはだかった壁、それは『AI』でした。

長岡六段:
「今までの経験をもとに、指し手を決めたり戦い方を考えたりできたんですけれども、AIの影響で今までの経験が生きるような形ではなくなってしまったというのが大きかったと思うんです」

羽生九段:
「ここ数年は、タイトル戦に出る機会すらないという状態が続いていましたので」

 AIを使って研究する棋士が急増し、現代将棋ではそれまでの常識が覆りました。羽生九段は、AIの影響を強く受けた新たな戦術をつかみ切れず、21年度の成績は14勝24敗と、初めて勝率5割を切りました。

長岡六段:
「自分の将棋を改めて見つめ直して、今の時代に対応できるように努力を改めて重ねた結果、こうして成績がまた上向いてきたんじゃないかなと思います」

 戦い方を変え、わずか1年で成績を回復して、難関といわれる王将戦の挑戦者決定リーグでも6戦全勝しました。

長岡六段:
「羽生九段は結構好奇心が旺盛でですね、新しいことがかなり好きな方なんですよ。今までの経験も大事だけど、こんな時代になったからAIとも向き合って勉強してみようかなと思ったんじゃないかと思います」

 52歳、さらなる進化を遂げた羽生九段と、現役最強の20歳との戦いを長岡六段はお互いに斬り合うような激しい展開になると予想します。

長岡六段:
「藤井王将は自分の読みの確かさとか自分への自信ですとか、そういったところでしっかりと読みきって踏み込んでいくのが非常に特徴的なんです。今回、藤井王将に挑戦するということで、手堅くというところを羽生九段がとっぱらって、お互いに斬り合う・攻め合うような激しい展開が見られるんじゃないかなと思っています」

藤井五冠(2022年12月):
「(羽生九段は)内容を見ても、とても充実されているのかなという印象をもっています。1月から七番勝負が開幕するという事で、それまでにしっかり状態を整えて臨めればと思っています」

 天才同士のドリームマッチとなった王将戦の第1局は、8日、静岡県の掛川城で行われます。