日銀は18日の金融政策決定会合で、現状の大規模な金融緩和策を「維持する」と発表しました。18日の為替相場は円安に振れましたが、今後の動向はどうなって行くのか、取材しました。

(リポート)
「午後0時半です。1ドル131円台となりました」

 18日、為替相場は再び円安に振れました。きっかけは日銀の決定です。

日本銀行の黒田総裁:
「金融市場調節方針について、長短金利操作の運用を含め、『現状維持』とすることを全員一致で決定しました」

【動画で見る】円高進む中で金融緩和策を“維持”…為替相場に揺れる人々 日銀の狙いについて専門家「長い目で円高方向に」

 17日から開かれていた日銀の金融政策決定会合で、0.25%程度だった長期金利の上限を「0.5%程度」に拡大した現状の金融緩和政策を維持することが決められました。

 金融緩和を再度修正するのではという見方もあった中、維持の決定に反応したのが対ドル円相場です。午前10時ごろには1ドル=128円台を記録していましたが、日銀が会合の結果を公表し政策の維持が伝わると、途端に急落し、一時131円台と、僅かな時間で円安が進みました。

 為替相場の変動は、立場によって受け止めは様々です。

 アメリカやヨーロッパ産を中心に、800種類ほどの輸入ワインを扱う名古屋市昭和区のワインショップで話を聞きました。

 2022年の春以降、円安などの煽りを受け、2割前後の値上げに踏み切りました。

ハウディの担当者:
「ここ一年で急激に、輸入するたびに価格が上がっています」

 年末からの円高傾向で、仕入れ価格に変化はあったのか尋ねました。

ハウディの担当者:
「いま現時点で円高が(価格に)反映されているかというと、そういうことではなくて」

 この店では、仮にワインの仕入れ価格が下がっても、販売価格に還元できるのは半年ほど先だと言います。さらに、燃料費や製造コストの高騰は続いているため、先行きは不透明なのだそうです。

Q.円高への期待が大きいか、葛藤の方が大きいか?

ハウディの担当者:
「現段階で正直に申し上げると、葛藤の方が大きいですね。すぐに(円高が)価格に実際に反映されるかというと、われわれはそれを大いに期待しますけれども、各企業さまの思惑もあるので」

 円高傾向の影響が早速出ている場所もあります。旅行代理店です。

シティーツアーズの取締役:
「海外旅行は間違いなく動き出してきたなという実感はあります。(円安の状況では)現地での滞在費用がものすごくかかっていましたが、だいぶ円高に振れましたので、選択しやすくなってきているんじゃないかなと感じます」

 1月になって入った海外旅行の申し込み数は18日時点で約50件で、このペースでいくと100件の大台も視野に入ると言います。

 実際、18日もハワイ旅行を考えているという家族が訪れていました。

ハワイ旅行を検討中の夫婦:
「結婚したのはコロナの時期(2年前)で、結婚式もできていなくて新婚旅行も行けていなかったので」
「子供もちょうど1歳になるので、一緒に行けたらいいなと」

 反対に、円安を歓迎する立場の人もいます。17日、中部国際空港に降り立ったアメリカ・デトロイト便の乗客に話を聞きました。

アメリカ在住の40代医師:
「僕はアメリカに住んでいるので、日本に帰ってくるときに円安の方が嬉しいんですけど。ドルに換算すると、こんなにするんだって」

 普段ドルで生活しているアメリカ在住の人にとっては、円安の方がメリットがあります。

アメリカ在住の30代会社員:
「ドルで日本のものをいっぱい買いました。まだ今ドルを持っているので、ちょっと円安のまましばらくいって、その後に円高になってもらえたらなと思っています」

 今回、大規模緩和の維持を選んだ日銀の狙いはどこにあるのでしょうか。

中京大学経済学部の内田俊宏客員教授:
「日銀が仮に、今日さらに利上げをするということになっていると、さらに円高方向に加速したと思われます。急激な相場の変動、株価もそうですけど、為替も変動して、消費者物価がさらに上がることを避けたいと考えていると思います。避けながらも若干長い目で見ると円高方向にもっていきたい、それによって物価を安定させたいという狙いがあるとみています」

 内田客員教授は「今日は一時的に円安となったが、長期的には緩やかな円高傾向になり、120円台くらいの円高が進むのではないか。大幅な家計への影響はないとみられる」と話しています。