日本で生育する約6000種類の植物のうち、500~600種類がひとくくりに“雑草”と呼ばれています。

 雑草を研究している39歳の男性は、イベントで皆に雑草を摘んでもらって料理をしたり、雑草でバッグやスプーンなどの生活用品を作ったり、暮らしに役立つ雑草の魅力を伝えています。

■地面を見て歩くのがライフワーク…おやつ代わりに雑草を食べる雑草研究家

 愛知県長久手市の街のはずれに、美しい農園があります。この農園を運営しているのは、6年前に設立した合同会社「つむぎて」です。この日は、あるイベントに女性たちが集まりました。

【画像20枚で見る】「雑草が変える未来の暮らし」子供の頃からおやつに“雑草”を食べてきた研究家

前田純さん:
「ジビエと雑草の会です。生で食べるような雑草がある。あのあたりに大体42種類あるので」

 雑草研究家の前田純さん(39)は、参加者に雑草を摘んでもらい、暮らしに役立つ雑草の魅力を伝えています。

前田さん:
「それはオニタビラコ。痛み止めになるので食べてもらうと。これはレタスの仲間アキノノゲシ。これ苦いです。苦みを取ることによって、デトックスできる」

 地面を見て歩くのがライフワークと話す前田さん。

前田さん:
「こういう植物が増えているから、ちょっと温度高いのかな…。そういうのを想像しながら歩くのが面白い」

 京都大学農業研究科で雑草学を学んだ前田さんは、子供の頃からおやつ代わりに雑草を食べていたといいます。前田さんに、私たちが食べられるおすすめの雑草を聞くと…。

前田さん:
「カタバミってすっぱいんですね。クエン酸とかビタミンCが豊富で、サラダにつけてもいいですし」

 5~7月のおすすめの雑草は、葉っぱが可愛いハート形の「カタバミ」です。

前田さん:
「ダイエットならツユクサ。食前に食べることによって、炭水化物食べても吸収が下がるので。水菜みたいな感じで、味噌汁とかに入れても邪魔しないので」

 ダイエットに向いているという「ツユクサ」(6~9月)は、糖質の吸収を抑制するといわれています。そして有名な「シロツメクサ」(4~10月)は、タンパク質やビタミンCが豊富で、あえ物やおひたしにすると美味しいといいます。

■雑草が美味しいことを知ってもらいたい…その栄養や食べ方を学べるランチ会を開催

 この日のランチは、雑草のポテトサラダに、鹿肉と雑草のソーセージ。

そして、雑草カレーに雑草ご飯。

デザートにも雑草を添えました。

参加者の女性:
「野草がこんなにハーブっぽく使えるって初めて知った」

別の参加者の女性:
「スーパーで売っている野菜とは違う面白味があるなと思った」

また別の参加者の女性:
「身近な野草がこんなに食べれるものがあるなんて知らなくて、すごい驚きでした」

 食べ方や栄養素について知ってもらい、「雑草が美味しくて価値あるもの」と感じて欲しいと前田さんは話しています。

■健康・美容へ効果高い雑草は100グラム2476円…野菜より大きな利益生む“雑草ビジネス”

 セイタカアワダチソウは、花粉症の原因と誤解されてかつては嫌われものでした。しかし、その有効成分ポリフェノールは、抗酸化作用が強く体に良いことが分かりました。

健康や美容への効果が高いことが分かり、「つむぎて」では4年前からセイタカアワダチソウの栽培を始めました。

 セイタカアワダチソウは加工して、美容業界などに販売しています。100グラムで2476円。野菜より大きな利益を生む“雑草ビジネス”です。

前田さん:
「価値を付けて売らないと、放棄地がなかなかやってもらえないので…。普通の野菜の値段よりも何倍も高く売りたいと」

■入浴後お肌しっとり…よもぎ蒸しの代わりにハーブや雑草を使用

 愛知県西尾市にある「サロン カナサ」では、よもぎ蒸しの代わりに、数種類のハーブとセイタカアワダチソウを合わせて使っています。

サロンの女性スタッフ:
「香りもいいですし、癖がなくて。入浴後のお肌のしっとり感や爽快感を感じていただける」

サロンを訪れていた女性客:
「ベタっという感じではなくて、気持ちのいい汗がかける。お肌もツヤっと生まれ変わるみたいな感じ」

「セイタカアワダチソウ茶」(1袋1800円)は、ポリフェノールに苦みがあるため、カラスノエンドウや玄米などの香ばしくうま味の強いものと組み合わせることで、飲みやすい口当たりになります。

同・女性スタッフ:
「今までよく知らなかったものが、こんなに人間を助けてくれるものだったんだと…。皆さんの自然に対する考え方が変わってくれたらいいなと思っています」

■雑草でバッグやスプーンなどを製作…雑草が変える私たちのミライ

 前田さんは、自宅近くに小さな畑を借りて、新たな雑草の研究をしています。雑草は、生活用品の材料としても優れています。

撥水性の高いガマを使ったバッグに、固いシロザの茎を使ったボールペンやスプーン…。

前田さんは、新たなビジネスとして雑草を使った雑貨の販売も目指しています。

前田さん:
「収益性をちゃんと上げて、農業の形を一つできたら高付加価値。お金になるかならないかは大きいんじゃないかなと、私はずっと思っていますね」

 高齢化や後継者不足で、農業をやめる人が増えています。「つむぎて」は、耕作放棄地を使っての新しい農業の形を考えました。セイタカアワダチソウに加え、ススキや藍の栽培もしています。「農業の未来は変わる」と前田さんは話します。

前田さん:
「誰もが使える食糧、誰もが使える道具。誰もが無限に採っても恐らくなくならない。そういうものがあったんだ、身近に。世界観を変えるじゃないんですけど、すごい魅力的なものだなって…」

 雑草が農業を、私たちの未来を変えていきます。