自民党と公明党は、18歳以下の子供に対し「年収960万円以下」の所得制限付きで、現金5万円を含む10万円相当の給付を行うことで合意しました。給付金の効果や意外な歴史について調べました。

 最近のものでは、2020年4月に新型コロナウイルス対策で全国民に一律10万円の「特別定額給付金」が支給されました。

 また2008年に起きたリーマン・ショックの影響を受け、2009年にも「定額給付金」が支給されました。この時は住民基本台帳に記載された全員が対象で、1人当たり1万2000円、18歳以下や65歳以上には2万円の現金が支給されました。

 2015年や2019年には、支払った金額以上のものが購入できる「プレミアム付き商品券」、1999年には「地域振興券」が出されました。特に2019年は消費税が10%に上がった年で、こうした消費が落ち込みやすい時に消費喚起するため、給付や商品券の配布は行われてきました。

 給付金のメリットについて、名古屋経済大学の木村牧郎准教授は「国民の生活を迅速に保障しつつ経済を動かすことができる」「減税などではなく、目に見える現金などで渡すことで『幸福感』がある」としています。

 逆にデメリットとして「給付したものが貯金にまわってしまうと経済効果が薄れてしまう」ということです。

 そして、この幸福感を与えられることで国民には好印象に映るので、政党によってはそこを狙って、「票集めの手段」として安易に給付金政策を掲げている向きもあるといいます。

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 給付金は実は遥か昔の江戸時代にもありました。江戸時代に関する著書を数多く執筆している歴史家・安藤優一郎さんに話を伺いました。

 例えば1802年(享和2年 11代将軍・徳川家斉の時代)にはインフルエンザが大流行したため、現代の定額給付金にあたる「御救金(おすくいきん)」が支給されました。外国船が入港する長崎から全国に広がり、3月には江戸でも大流行し、幕府は給付金を出すことに。

 この給付金は給付までのスピードが特徴で、わずか12日間で28万人以上に給付されました。

 金額は1人暮らしが三百文、2人暮らし以上が1人当たり二百五十文、これは現在の7000円前後に当たり、対象は「其の日稼ぎの者」(生活が苦しい人)が基準でした。

 ポイントは、インフルエンザにかかっているかは区別しなかったことです。
 
 その理由として「感染者の有無を調査すると、膨大な時間がかかってしまうので行わなかった」「生活が苦しい人をピックアップするだけなら、今でいう自治会長と連携して名簿を見てチェックすれば済み、スピードを最優先して行った」ということです。

 この連携がうまくいき、給付金の対象者の調査をはじめた翌日には給付が始まり、わずか12日間で28万人以上に給付されました。

 こうした対応について安藤さんは、「江戸時代は戦こそ少なかったが、地震や火事といった災害や、米の不作による飢饉、疱瘡(ほうそう)・麻疹(はしか)・コレラといった感染症も非常に多かった。その中で、町や幕府を守るために状況に応じて迅速な対応をとっていて、危機管理能力は高かったといえる。江戸時代の対策には、今の私たちも学ぶところがあるのでは」と話しています。