名古屋出身の堤幸彦監督の記念すべき50作目は、予算700万円の自主映画です。コロナ下で作った最強のインディーズ映画とは…。堤監督の思いに迫ります。

堤監督:
「私も監督としてまだまだ66才ですけど、あと何本撮れるか分かりませんが、新たな一里塚になったかなと思っています」

 名古屋出身の堤幸彦監督。1月7日、通算50本目の作品・映画「truth〜姦しき弔いの果て〜」が公開されました。

【画像で見る】堤幸彦監督が初自主映画「撮影2日予算700万」それでもメガホンとった使命感

 ビルの一室に集まる喪服姿の3人の女性…。

 彼女たちは、死亡した謎の男に三股をかけられていました。

 誰が一番愛されていたのか…3人は激しく争います。

 実はこの作品は、大手配給会社の協力やスポンサーの出資がない、低予算の自主映画です。

堤監督:
「撮影期間は2日間、予算は700万。これは文化庁の支援金、文化芸術支援金で成り立たせた自主映画ですね。(自分が監督した)映画では一番金額かかってないですね」

 堤監督にとって初めての自主映画。企画を持ちかけたのは、コロナ禍で仕事を失った3人の女優でした。

広山詞葉さん:
「本当にコロナで仕事が全くゼロになって、何もすることがなくなって。自分にとっての生きるとは何かを考えたとき、表現をしなければ自分にとって生きていると言えないなと思ったときに、文化庁の助成金を見つけまして」

 発起人の広山詞葉さん。役者仲間の福宮あやのさんと河野知美さんに「自分たちで映画を作ろう」と声を掛けました。

 さらに、堤監督に相談したところ、監督を引き受けてもらうことになりました。

福宮あやのさん:
「『堤監督が撮ってくれるらしいよ』とLINEが来たときに、『えっ、これって私が知っている堤幸彦で合っていますか?』みたいな感じになっちゃって、もうびっくりしました」

河野知美さん:
「堤イズムがものすごい入った作品になっていると思います。映画が大好き、作品を作ることが大好きという人たちが、今までギュ〜ッとされていたものをパーンとはじけさせた映画が、もしかしたら『truth』なのかもしれない」

堤監督:
「私たちがやっているエンターテイメントビジネスは不要不急なのだと、ある意味要らんのだという風に、世の中で烙印を押されているということに関して、すごく被害者意識を持っていましたね。どうにかできんのかなと」

 カメラや照明など、スタッフは「堤組」が参加。同じ愛知県出身の盟友・佐藤二朗さんは写真と音声のみで“忖度出演”しました。

 監督自ら裏方仕事をして、最強のインディーズ映画ができました。

堤監督:
「俳優さんやスタッフを自分の車で家まで送り届けたりね、弁当差し入れしたりとか、色んなことをさせてもらいました。モノを楽しんで作るということを改めて自分も実感したし、本当に楽しかったし、こういう気持ちじゃないと映画とかドラマとかそういうものは作っちゃいかんのだなと」

 映画監督として34年。50本目の「truth」は海外で7つの賞を獲得、堤監督の代表作のひとつになりました。

堤監督:
「僕の仕事はやっぱり、人を喜ばせ楽しませハラハラさせる作品を作ることが使命です。それしかできないんで。どんな手段をもってしてでも、それはやるべきなのだと、やらねばならんという前向きなことにならなければ、本当に自分の人生、全否定になってしまうので、それはダメだろうと。今後、死ぬまでに何本作品を撮れるか分からんけども、また新たな良い出発点になったなと」

 映画「truth〜姦しき弔いの果て〜」は、名古屋市中区・栄のセンチュリーシネマほかで上映中です。