61年前、三重県で起きた名張毒ぶどう酒事件の10度目の裁判のやり直し=再審を求めた異義審で、名古屋高裁は奥西勝元死刑囚の妹に対し、再審を認めない決定を下しました。またしても重い扉は開かれませんでした。

鈴木弁護団長:
「裁判所はなんでこんなに理不尽なんでしょうか」

 事件から60年以上…重い扉はまたしても開かれませんでした。

 1961年、三重県名張市の公民館で、懇親会に出されたぶどう酒を飲んだ5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」。

新たに出てきた供述調書…『名張毒ぶどう酒事件』から60年 無実訴える元死刑囚遺族や村人、それぞれの今

 逮捕された奥西勝元死刑囚は、一審こそ無罪判決だったものの、二審で逆転死刑判決を言い渡され、獄中で無実を訴え続けていました。

 一度は再審開始決定が下されたものの、その後取り消しとなり、再審の扉が開かれることなく2015年に奥西さんは肺炎で死亡。

 その後は妹の岡美代子さん(92)が引き継いで、10度目の再審請求が行われていました。

 棄却された後も異議申し立てを行い、弁護団はぶどう酒の瓶に巻かれた「封緘紙」の糊の成分に関する鑑定書などを新証拠として提出。製造過程の糊とは違う糊の成分が見つかり、別の誰かが毒を入れた後、貼り直された可能性を指摘していました。

 さらに封緘紙については、およそ40年ぶりに検察から証拠開示があり、村人の供述調書の内容が奥西元死刑囚の自白と矛盾していたことから、再審開始決定が出ると多くの人が期待していました。

 しかし、3日の決定で名古屋高裁の鹿野伸二裁判長は、のりの鑑定結果について「科学的根拠を有する合理的なものではない」とした上で「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらない」として、再審を認めない決定を下しました。

 兄の遺志を引き継いだ岡さんは、自宅のある奈良県で決定を聞きました。

妹の岡さん:
「もう残念でたまりませんわ。はぁ…胸がいっぱいで。なんてことですやろなぁ、裁判所も」

 三重県名張市葛尾。事件現場にいた村人32人のうち、今も生きているのはわずか6人です。

男性:
「そりゃ当然やろと私は思ってる。(裁判所の判断は)正当やろ。葛尾の人はそう思ってる、みんな」

 事件からまもなく61年、弁護団は92歳となる岡さんのためにも速やかに最高裁に特別抗告する方針です。