2022年1月、高級ブランドの「的矢かき」をお値打ちに食べられるレストランが、三重県志摩市にオープンしました。この店は、コロナの影響を受けて苦しいカキ産業を守るために、カキ養殖場を営む男性が開業しました。養殖場から直送される新鮮な生ガキが3個990円で食べられるなど、鮮度と安さで人気となっています。

■「ロケーションめちゃくちゃいい」…絶景を眺めながらカキが食べられる話題の店

 2023年1月に三重県志摩市磯部町にオープンした「的矢かきテラス」では、プリプリの三重県ブランド「的矢かき」を食べられます。

【画像20枚で見る】“直送生ガキ”が破格の3個990円…コロナ禍でカキ養殖場の老舗が直営レストラン開業

女性客:
「いいですね、この時季の旬の生ガキって」

別の女性客:
「新鮮でここでしか食べられない」

 店では、水揚げされた新鮮なカキが名古屋の半額近い価格で食べられます。店のウリは、料理だけではありません。

男性客:
「ロケーションめちゃくちゃいい。いい雰囲気のお店」

女性客:
「なかなかこういう景色見ながら食べられないので、すごくいい」

的矢湾を望むテラス席と、海に浮かべたイカダに設けた海上レストランで、絶景を眺めながら食事が楽しめるのが話題となっています。

■「何もつけなくても濃厚」…養殖場から直送される高級ブランド「的矢かき」

 朝9時、開店にむけて準備が始まります。

的矢かきテラスの店長:
「カキは毎朝、併設の養殖場から運ばれてきます」

このカキ専門レストランは、1925年創業の「佐藤養殖場」が始めました。100年近いカキづくりの経験から、カキを安全に生で食べる養殖技術を確立し、2002年に「的矢かき」を三重ブランド第1号にした屈指の養殖場です。

カキを養殖しているのは、的矢湾に設置されたイカダ。毎日、ここから水揚げされます。

的矢かきテラスの担当者:
「(今年のカキは)大きく成長して、中身もしっかり入っています」

水揚げから出荷されるまで丁寧な処理が行われるのも、的矢かきならでは。身を傷つけないように、殻から丁寧に外し、殻も一つ一つきれいに磨きます。安心して生で食べられるように水につけ、1日洗浄し滅菌します。

手間と時間をかけて提供される的矢かきは、関東の高級料理店やホテルなどにも出荷されています。

 的矢かきテラスで一番人気は、素材本来のおいしさが味わえる「生牡蠣」(3個990円)です。

店長:
「カキが苦手な人でも食べやすい、本来のうま味や甘みが詰まっている」

男性客:
「何もつけなくても味が濃厚。塩味だけで十分」

別の男性客:
「ふっくらしていて、コクがあっておいしかった」

客の反応は上々です。

■「地域の大切な産業を守りたい」…カキ産業再建のためにレストランを立ち上げた男性

 店を立ち上げたのは、「佐藤養殖場」の社長・濱地大規さんです。なぜ養殖場が飲食店を始めたのでしょうか。

濱地社長:
「(養殖場が)経営悪化に。カキの不作、酷いときは65~70パーセントくらい死滅したことも。また、お酒と楽しまれる方も多いですし、酒類の提供中止はかなり大きなダメージ」

もともと別の水産業をしていた濱地社長は、老舗養殖場のピンチを目の当たりにし、なくしてはいけないと仕事を辞めて再建に手をあげました。「的矢かきを100年近く継承してきた人たちの思いなど、地域の大切な産業を守らなければならない」と濱地社長は語ります。

 再建の策として開業した直営レストランは、スーパーなどには出回らない鮮度抜群のカキが食べられることもあり、全国からカキ好きが訪れます。生ガキは、ショウガ入りのポン酢をのせて食べれば、さわやかな風味に味変。

「的矢牡蠣のかんかん焼き」(6個入り1980円)も人気です。蒸すことでカキのうま味がより引き出されます。

他にも、生ガキにカキフライ、カキグラタン、カキご飯もついた「牡蠣づくし定食」(3800円)もあります。

料理はもちろん、濱地社長には、絶景を楽しめる店のロケーションにも再起への思いが込められていました。

濱地社長:
「的矢かきを育んだ海、イカダを眺めながら、日本で一番鮮度のいい状態で的矢かきを食べられる。喜んでいただけるという勝算、確信はありました」

的矢湾に臨む絶景も、レストラン成功へのポイントでした。

■「そのコストの分をカキづくりに」…あえてプロの調理人を置かない店

 ランチタイムの厨房は大忙し。レストランでは、飲食店経験がない養殖場のスタッフも多く働いており、経験があるのは店長だけ。しかも、店にはプロの料理人もいません。

濱地さん:
「生で食べられる品質に特化したカキ。素材そのままの提供にこだわりたかったので、あえてプロの調理人さんは置いておりません。そのコストの分を、カキづくりに」

養殖にコストをかけることで、よりおいしいカキが安く食べられる。そして「的矢かきの知名度アップにつなげたい」と考えたためです。

「より多くの人に的矢かきの味を知ってもらい地域を活性化させたい」。濱地社長はこのテラスからかきの魅力を発信しています。

「的矢カキテラス」は、三重県志摩市磯部町にあります。