愛知県瀬戸市に、飼い主に先立たれるなどしたネコの新しい飼い主を探す女性がいます。“行き場を失ったネコ”と“新たな家族”との橋渡しを続ける女性は、ネコと人が最後まで寄り添い合える社会を願っています。

■ほとんどが老ネコ…14匹のネコの新たな飼い主を探す女性

 愛知県瀬戸市にある「ネコノイエ」。ペットシッター「にゃんコール」の代表・鈴木優子さん(53)は、活動拠点となるこの家で14匹のネコと暮らしています。家の裏には、ネコのコンテナハウスがあります。

【画像20枚で見る】飼い主に先立たれたネコに新たな家族を…橋渡し続ける女性が願う『ネコと人が寄り添い合える社会』

鈴木さん:
「行き場がなくなって、新しい飼い主さんを見つけるための家。みんな老ネコです。この子が10歳で一番若くて、あとは18歳とか15歳…」

ここで暮らす猫は、飼い主が亡くなったり、高齢者施設に入るなどで一人ぼっちになったところを鈴木さんが引きとりました。

 鈴木さんの元には、この日もまた新たな猫がやってきました。道路にいたところを保護されたキジトラです。

ネコを保護した男性(74):
「道路の端、車どんどん通るからヤバイなと。すぐ寄ってきちゃったもんで、停めて降りたら…」

男性の妻:
「困ったなと…。年齢的に最後まで飼うことが(できない)。好きだから飼ってあげたいけど、90歳まで生きる自信は…」

鈴木さんの役目は、こうしたネコを新たな飼い主の元へと橋渡しすることです。

■病気で飼えなくなった女性から託され…残されたネコの新たな飼い主探しを始める

 鈴木さんがネコの事をきちんと考えるようになったきっかけは、20年ほど前のある出会いでした。

鈴木さん:
「元はイヌ派でした。友達のところで(ネコが)わさわさ生まれちゃって、『どの子でもいいからもらって』と言われて、あまりのかわいさに1匹引き取って…」

 そこからは、すっかりネコの虜となった鈴木さんは、ペットに関する様々な資格を取り、8年前に歯科助手を辞めてペットシッターになりました。飼い主が留守中の家に出向き代わりに世話をする仕事です。

 そんな中、一人で暮らしていた常連の女性から、こんな相談が寄せられました。

鈴木さん:
「突然、『自分が末期(がん)だといわれた』と。(相談者に)ネコが6匹いて、飼い主になってくれる人を一緒に探してくれないかと…」

この子たちを幸せにしたいと始めたのが、新たな飼い主にネコを橋渡しする「仮暮らしハウスプロジェクト」。クラウドファンディングなどで集めた資金を元に、2021年6月に一時預かり施設のコンテナハウスは完成しました。

鈴木さん:
「ここが拠点になって、(ネコを飼いたい人に)自由に触れてもらって、何匹かいればその子と自分の相性で『じゃあこの子』と選んでもらえたら」

 この活動をボランティアで始めておよそ1年が経ち、残された時間を考え飼うことをあきらめた人、飼い主が亡くなったり入院したりで一人ぼっちになったネコ…。その間に立ち、16匹を新たな家族の元へと送り出しました。

鈴木さん:
「子ネコだと、自分たちの方が先立つと考えると(飼うのは)難しいけど、大人のネコなら同じ歩みで過ごせるかも…。無理と思う前に声をかけていただけたら、寄り添っていけるようにしたい」

■“大人ネコ”を高齢者に…ネコと人が最後まで寄り添い合える社会を

 鈴木さんに新たな依頼がありました。オスネコのトンコ(6)は、一緒に暮らしていた97歳のお婆さんが亡くなり、一人ぼっちになりました。お婆さんの息子夫婦が暮らしているのは、ペットを飼うことができないマンションのため、鈴木さんを頼りました。

トンコの新たな家族は、すでに決まっていました。2018年に50年連れ添った夫を亡くし、一人で暮らしている名古屋市守山区の安藤清子さん(76)です。

安藤さん:
「飼いたくてしょうがなかったけど、私の方が先に弱っちゃったらと思って…」

そんなときに、鈴木さんの活動を知りました。

安藤さん:
「年を取ったからもう(ネコは)飼えないと覚悟していたから…。鈴木さんと出会って。年取ったネコが来るということで、ドキドキワクワク」

 ついにその日がやってきました

鈴木さん:
「ほとんどの方が、寂しいから飼いたいと。飼い主の気持ちに寄り添ってくれるとか、相棒になるとか、そういう面で断然“大人ネコ”の方が心得ている」

 トンコが新しい家族の元へやってきました。

安藤さん:
「かわいい顔してるねぇ。ぎゅっとしたかったの。この感触がすごく嬉しい、いくつになってもネコと一緒」

鈴木さん:
「行き場を失くしたネコが、新しい家族をみつけて幸せになって。迎えた人も寂しさがなくなって、旅立つ人も安心してそのことに関して心を病むことなく、みんながよかったねと」

「シニアtoシニア(“大人ネコ”を高齢者へ)に力を入れたい」と話す鈴木さんは、ネコと人が最後まで寄り添える社会の実現のために、活動を続けています。