愛知県美浜町に、地元の野菜を発酵調味料で仕上げた家庭料理が人気のカフェがあります。この店を開いた料理研究家の女性は、地元野菜たっぷりのランチや地元産の醤油や米麹などの調味料の量り売りをするなど、南知多の食材の魅力を伝えています。

■やさしいお味…地元の食材を発酵調味料で仕上げた家庭料理が人気のカフェ

 愛知県美浜町の海からほど近い所にある「noma-base-studio(ノマ・ベース・スタジオ)」では、知多半島の食材を発酵調味料で仕上げた手作り料理が人気となっています。

【画像20枚で見る】自家製の発酵調味料で地元食材をヘルシーに…人気カフェを営む料理研究家

女性客:
「やさしいお味です」

別の女性客:
「ドレッシングすごくおいしかった。野菜がいっぱい食べられるのがうれしい」

この店を開いたのは、知多半島の料理を研究している塩谷明代さん(43)。塩谷さんは、地元の食材を発酵調味料で仕上げたヘルシーな家庭料理で幸せの輪を広げています。

■知多半島の野菜にこだわる…地元食材を使ったカフェを営む料理研究家の女性

 午前8時半。塩谷さんは、知多市の自宅から美浜町のお店へ向かいます。4人の子供を育てている塩谷さんは、2012年頃から料理研究家として自宅で料理教室を開き、知多半島の食文化を伝えてきました。

 そして、2021年3月に築100年の古民家を改装し店をオープン。塩谷さんが最もこだわっている食材は、自ら農園に出向き、生産者から直接仕入れています。

 この日訪れた農園「とるたべる」は、2018年に農薬を使わない野菜の生産を始め、収穫体験なども行い、南知多の野菜の魅力を伝えています。

塩谷さん:
「(自ら収穫した紅芯大根を食べて)甘い、おいしい」

 岐阜県出身の塩谷さんは、結婚を機に知多市へ。そこで、知多半島の食材の魅力を知りました。中でもほれ込んでいるのが南知多の野菜。なぜ、そんなに美味しいのでしょうか。

野菜を生産する男性:
「そのまま土の味が入っている。もともとの土の力ですね。南知多の力」

独特な南知多の土。特に水中で堆積した「岩頁岩(けつがん)」が特徴だといいます。

同・男性:
「海底の底にあった岩が地殻変動で隆起した山を切り開いて、僕らはそこに種をまいている」

ミネラル分が豊富な土壌のため、この辺りでは肥料がなくても丈夫で美味しい野菜が育つといいます。

塩谷さん:
「直接仕入れていると、誰がどうやって作ったかがわかるので。大事に使わないとって…」

■知多半島の魅力がワンプレートに…野菜中心の彩り美しいランチ

 調理には自家製の発酵調味料を使っています。

塩谷さん:
「きのこ麹に漬けた鶏肉。(きのこ麹は)キノコと麹といろいろ混ぜて発酵させたもの」

米麹に塩、醤油などを加え発酵させた調味料を作り、素材や料理法に合わせて使っています。よく目にする塩麹は、肉の下処理や炒め物に。この日は、小松菜とカブを塩麹と炒めることで野菜のうまみを引き出し、味を一つにまとめます。

バターナッツカボチャという珍しいカボチャは素揚げにし、甘酒や酢などの発酵調味料と合わせてマリネに。前日に収穫したニンジンは、塩麹で下味をつけて蒸してからフライに。ニンジンが味わったことのない絶品メニューへと生まれ変わります。

 ランチは、野菜を中心に毎回10~13品ほど。手間がかかるため、営業は週に2日(毎週木曜・金曜)だけです。彩りも美しい「知多野菜と発酵おかず」(1500円 日替わり・要予約)は、見ているだけで美味しさが伝わってきます。

塩谷さんが収穫した紅芯大根は、ニンジンドレッシングで。ホウレンソウは揚げと合わせて信田巻きに。ミートローフは発酵豆乳ホイップがけ。他にもキノコ麹の温かいスープなど…。

女性客:
「素材を生かした味。色合いがきれい」

別の女性客:
「余分な調味料を使ってない感じがして、体がデトックスされます」

知多半島の味がワンプレートに詰まっています。

■オリーブオイルにパスタにドライフルーツ…欲しい分だけを購入できる人気の“量り売り”

 そしてこの店のもう一つの魅力が、店で使っている米麹やスパイス、オリーブオイルなどをほしい分だけ購入できる“量り売り”です。

塩谷さん:
「お店で使うものをどうせ仕入れるなら、みなさんでシェア出来るように…」

武豊町の老舗醸造所の醤油「丸大豆たまり」(1グラム2円)に、「米麹」(1グラム1.2円)など、発酵調味料の作り方も教えてくれます。

貴重な古代小麦で作った「ラッセロ小麦のパスタ」(1グラム2円)や、「ドライパイナップル」(1グラム8円)などのドライフルーツも人気です。持ち込んだ容器に欲しい分だけを入れ、量ったグラム数を書いた紙を渡して会計します。

 塩谷さんが、売り方を“量り売り”にしたのには、コロナ禍での無人レジなどの普及があったといいます。

塩谷さん:
「しゃべらずに買える買い物が増えているけど、逆にしゃべらないと買えない…。『どうやって買うの』とか会話がまず生まれるので」

 別の日にお店を訪ねてみると、塩谷さんはヨガや料理教室を開いていました。食と健康をテーマに店を始めて間もなく1年。地元の人たちが集う場所になっています。

塩谷さん:
「みんながハッピーになる商売がいいなって。やってみたいことをやって、みんなも『いいねいいね』って盛り上げてくれる感じで続けていけたら」

知多半島に来て10年あまり。「家族が健やかに暮らせるのも、知多半島と地元の人たちのおかげ」と話す塩谷さんは、店から南知多の魅力を発信し続けます。