今の就職活動で企業の業務を体験する「インターンシップ」が重視されていますが、従来は就活生が企業を訪れるのが当たり前だったインターンシップは、新型コロナの影響で面接から業務まで、全てオンラインで行うスタイルが登場しています。

■面接から実際の業務まで…すべてオンラインで行うインターンシップ

 南山大学3年生の水平さんは、自宅でオンライン会議を行った後に、ベランダで写真を撮り始めました。

水平さん:
「インスタに上げるための写真。“デンまる”っていうキャラクターをSNS上でどう生かすかを考えるインターン」

【画像20枚で見る】大学生社長が企画…就活生と企業つなぐ『オンラインインターンシップ』面接から業務まで

水平さんは、刈谷市に本社を置くデンソーのインターンシップをしています。デンソーの公式キャラクター「デンまる」は、インスタグラムのアカウントを持っていて企業広報の役割を担っていますが、認知度はいまひとつ。そこで、水平さんたちインターン生がインスタの投稿内容を考えることで、広報の仕事を体験しています。

 インターンシップといえば、学生が興味のある企業の仕事を実際に経験できる「職業体験」。コロナ前は実際に学生が企業を訪れ、集団で行う形が一般的でした。しかし水平さんのインターンは、面接も実務も全てオンラインで行われ、実際に企業の人とは1回しか会ったことがないといいます。

水平さん:
「SNSの広報に興味があり、インターンに参加しました。オンラインで人との関わり方だったり、どうやったら人に指示を出したりとか(学んだ)。ネットさえつながればどこでも参加できるので手軽」

投稿内容を決める打ち合わせから、アップする画像の撮影やデザイン、投稿後の“いいね!”の数などの分析まで、全てがオンラインで完了するこのインターンシップには、他にも特徴が…。

水平さん:
「3月まで約半年間。お金をいただくので、ちゃんと仕事をやろうと(思える)。長期だからこそ自分のことを知ってもらえるし、自分の考えが変わっていくのがわかるのがいい」

およそ半年という長期間で行い、報酬も発生。「オンライン」で「長期」に「有償」で行うインターンシップは、企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

デンソーの担当者:
「(通常なら)遠方で来てもらえないような人たちに、参加してもらえるのはメリット。自分たちで考えたら絶対にこういう投稿にならないだろうなという、学生さんの力をもらえていると感じます」

投稿の中には、梅の木に“デンまる”をちりばめて、かくれんぼしているような学生らしい投稿もありました。

■コロナ禍で学生と企業の橋渡し…オンラインによるインターンを企画した現役大学生社長

 全てオンラインで完結するこのインターンシップは、名古屋市中区の「好生館プロジェクト」が企画。デンソーなどの企業とインターン生をつなぐ他、月に2回ほどインターン生と面談をし、業務のサポートをしています。

 この会社の社長の横井優樹さんは、南山大学4年生の現役の大学生です。横井さんは、大学2年生のときにこの会社を立ち上げました。

横井さん:
「大学入って間もない時にサークル立ち上げて、その時に皆さん素敵な思いだったりスキルや魅力を持っているのに、自分自身の中で諦めたり無難な道に行こうという人をたくさん見てきた。すごくもったいないなと」

「若者のためになることがしたい」と考えた横井さんは、主に対面で行う就活イベントを企画しました。しかし、その後、新型コロナの感染拡大により状況は一変しました。

横井さん:
「企業もどうコロナ禍に対応すればいいかわからない。学生のキャリア形成と企業のビジネスの展開を結び付けて花開かせる取り組みってどんな形だろうと思った時に、我々第三者が一緒になって作っていけば、長期インターンシップをオンラインでもできるんじゃないかと」

そして始めたのが、オンラインを使った長期インターンの企画でした。自らが通う南山大学や敷島製パンなど、これまでに7つの企業や団体とのインターンを企画し実現してきました。

■オンラインだからこその出会いを生かす…オンラインインターンシップの可能性

 横井さんたちは、新たなインターンを作るための営業活動も自分たちで行っています。この日は、岐阜県瑞穂市の包装資材を手掛ける会社「片桐」を訪れました。

横井さん:
「例えば、オンラインのインターンシップで、学生さんが新しい意見やご提案をしたり、素材の肌触りからこんなものを作ったらどうかとか、お客さんと一緒に考えてみるインターンもあるかもしれないです」

横井さんは、流行に敏感な若者の意見を営業活動に活かすインターンを提案していきました。

片桐の担当者:
「若い人が入ることは、負担が大きくなっていくイメージがあったけど、弱点を補ってくれるような若者がいればすごくいい」

片桐の社長:
「営業を40年やってきているから、(考えが)固まっとるわけだ。新たな片桐(会社)としての仕事という部分であれば、(インターンに)十分対応できるんじゃないかな」

直接会えない時代でも、企業と学生をつなぐオンラインのインターンシップ。

横井さん:
「オンラインの就活って人と会えないことで、心配になりやすい部分も多いと思うが、人と人がやっていることはオンラインでもオフラインでも変わりはない」

横井さんは、「オンラインであれば従来ではつながれなかった人ともつながれる。学生たちにはオンラインだからこその出会いを就活につなげてほしい」と話します。

 就活情報会社ディスコの調査によると、約4割の企業が2022年度のインターンシップをオンライン中心で行うと回答しました。対面中心の企業は4割余りで、オンラインのインターンシップも大きな流れになっているといえそうです。