愛知県一宮市で毎年行われている「一宮七夕まつり」の「ミス七夕」コンテストが、2022年から中止されることが決まりました。女性の容姿を評価してきたミスコンが、このところ様々な自治体で廃止されています。背景には、多様性が求められる時代に、「ルッキズム(外見至上主義)」という“見た目で人を評価する“ことへの違和感がありました。

■「一宮七夕まつり」で続いてきたミスコンテストが中止に…各地で相次ぐミスコンの廃止

 愛知県一宮市で毎年夏に行われる「一宮七夕まつり」は、日本三大七夕まつりの一つで、毎年100万人以上の人が訪れます。

【画像で見る】顔を出さない出場者も…外見至上主義“ルッキズム”の議論でミスコンに変化

その「一宮七夕まつり」が始まった当初から続けられてきたミスコンテスト「ミス七夕・ミス織物」を、2022年から廃止にすることを一宮市が発表しました。

一宮市の担当者:
「ミスの応募条件に『18歳以上の未婚の女性』という条件があり、これが現状の世の中に適していない。議論を重ねた結果、廃止することに」

「18歳以上」で「未婚」の女性の容姿を評価してきたミスコンは、最近は様々な自治体で廃止の動きが加速しています。

2021年には、知立市の「ミスかきつばた」や、弥富市の「ミス弥富」などが一宮市と同じ理由で廃止となりました。

「ミス七夕」を廃止した一宮市では、まつりを前に町からは様々な声が…。

男性(20代):
「女性だから男性だからは、今の世の中で関係ない。(ミスコンは)自治体のエゴじゃないかって…」

女性(30代):
「差別って行き過ぎなところもある。出たいと思って頑張っていた方が、そのせいでなくなるのも寂しい」

女性(10代):
「少数派の意見も大切にしないといけないので、私はあっても無くても大丈夫だと思います」

 生まれも育ちも一宮で、2019年のミス七夕クイーンに輝いた飯嶋彩夏さん(23)は、地元と関わるイベントに参加して盛り上げたいと応募しました。

飯嶋彩夏さん:
「七夕祭りといえば、ミス一宮が盛り上げる印象なので、そういう象徴がなくなるのはとても寂しい」

飯嶋さんは、ミス七夕クイーンとして人前に立つことで自信がつき、今は名古屋市内の鉄道会社で働いています。

飯嶋さん:
「日本三大七夕まつりの一つでもあるので、一宮市のミスはその先(将来)も繋がる大きなミス。チャンスが一つ減ってしまうのは寂しい」

ミスコンを惜しむ声もある中、一宮市では2022年から性別を問わない学生サポーターを募集。まつりのPR役ではありませんが、祭りの運営に学生の意見を取り入れ、時代に合わせたまつりを作りたいとしています。

一宮市の担当者:
「世の中でもミスのあり方は議論されていましたし、時代というか社会に合った形で変化していかなければ」

■専門家「公共的な団体が女性を美醜で判断するのは問題」…問題視される「ルッキズム」

 ミスコンの在り方が問われる背景には、見た目で人を評価する「ルッキズム(外見至上主義)」の問題があります。

最近では、近畿大学の学校案内に掲載された「美男美女図鑑」について教職員組合から批判が出るなど、「ルッキズム」に関するニュースが増えています。ジェンダーについて研究する専門家は…。

昭和大学の須長史生准教授:
「ここ数年、多様性に対する理解、少数派の人たちの中に意義や価値があるっていう認識が広がったことが大きい」

多様性への理解が広まったことが、ルッキズムに敏感になったのではないかと指摘します。

須長准教授:
「誰がかわいいとかカッコいいとか、趣味でやるのは誰も止められないし、多くの方々が身に覚えのあること。ですが税金とか学費を集めて、社会の公共性を代表している団体が必要もないのに、未婚の女性を集めて美醜で判断するのは問題」

■スピーチや自己PRなどで候補者を審査…見た目だけで評価しない形を模索する大学のミスコン

「ミスコン」といえば大学の学園祭では名物行事。運営する学生も模索しています。

女子学生:
「そもそも何でルッキズムが良くないのか…。ルッキズムがいいって思っている人もいる中で…」

男子学生:
「昔からあるはず、外見がいい人が優遇される風潮は。それがここ最近で急に議論されるのは、ネットの力が大きいのかな」

別の女子学生:
「インスタの投稿とかしたときに、すごく内容があるものであっても、かわいい人が投稿したらコメントには『かわいいね』みたいな…。そこだけを見て欲しい部分じゃないところもあると思う」

議論するのは上智大学「ソフィアンズコンテスト」の運営メンバーです。1980年代からミスコンを実施してきましたが、ルッキズムへの批判が高まる中、2020年から男女の区別をなくした新たなコンテストを立ち上げました。

女子学生:
「ミスコンも、頑張ってきたことを発信したり、今後の活躍のために出場したい人もいるから、そういう人たちの想いを発信する場がなくなってしまうのはどうかな…」

見た目だけで評価せず、「自分の魅力」と「社会課題」を発信する“インフルエンサー”としての実力を競うことに。

スピーチや自己PRなどで候補者を審査する仕組みを作りました。

■「顔を出さなくても伝えることができる」…顔を出さないファイナリストも誕生

 上智大学では、2021年に初めて、顔を出さないファイナリストが誕生しました。文学部新聞学科のあさみさん(26)です。

上智大学ソフィア祭実行委員会の学生:
「発信力を競うコンテストなので、わざわざ顔を出さなくてもって意見も出て、昨年度から顔出しなしでも出場できるように」

あさみさん:
「(顔を出さないことに)迷いはなかった。情報発信の場として、顔を出さなくてもできるって伝えることで、誰もが挑戦してみようって思いやすくなるかな」

20歳で専門学校を卒業し航空会社に就職したあさみさんは、社会人生活を経て学び直しがしたいと上智大学への編入を決めました。自身の経験や思いを発信したいとコンテストへの出場を決め、協賛企業の特別賞をもらいました。

あさみさん:
「ミスコンで、女子大生が商品化されてしまうのには違和感あるけど、ミスコンに出るのは多分、出場者が目的をもって選んでいる。出場者の思いが、伝えたい相手に伝わるコンテストになってほしい」

公平さや多様性が求められる時代。ルッキズムの議論が活発になる中、ミスコンも変わろうとしています。