中学校を卒業する3年生が進路を決定する際に重要な「内申書」とも呼ばれる「調査書」について、様々ある評価の内容を見直そうという動きがあります。

 中学校での、生徒一人一人の評価が書かれる調査書。メインは、国語や数学など9教科の5段階での評定です。

 ただ、2022年度の愛知県の場合、このほかに生徒会や行事といった「特別活動の記録」や「出欠の記録」など、学校生活についての評価の記入欄が半分以上の面積を占めています。

【動画で見る】重視するかは各学校次第…高校入試で合否判定に使われる“調査書” 名古屋で見直しの動き「9教科の評定のみに」

 この調査書は、高校入試で学力検査と共に合否の判定に使われますが、評価方法を知っているのか、名古屋の街で学生や保護者に聞いてみました。

中学3年生:
「知らないです」

高校1年生:
「“点数として使う”っていうことしか聞いていないので、あまり知らないです」

高校1年生を子に持つ母親:
「『出欠』がとにかく言われていて…。体調面が良くなくて、朝なかなか行けなくて欠席というか遅刻がちょっと多かったのでそこだけ言われていましたね」

「部活動や生徒会活動がやっておいたほうが良い」という話は…。

高校2年生を子に持つ母親:
「ありました。やっぱり『内申書に書かれるぞ』とか、懇談会の時に言われていました。『学級委員みたいな委員活動を3年間のうちにやっておいたほうがいい』と言われていて、1年生のうちにやっておこうと」

 県の教育委員会によると県立高校の一般選抜入試では、合格者の決定は「学力検査の得点と、9教科の評定の点を基礎資料として総合的に行う」という形です。つまり、調査書の様々な記述も評価の対象になりますが、何を重視するかは各高校次第だということです。

 2022年7月に就任した名古屋市の坪田知広教育長は、この不透明感の改革に取り組もうとしています。文部科学省で児童生徒課長などを務め、6月まで理事をしていた国立高専機構でも調査書の簡素化を主導して来ました。

坪田教育長:
「同じ点数だったら、じゃあ部活をやっていた子が有利になるのかとか、そういう思いが保護者も学校も本人もあると思うんですよ。それは私は入試の公正性からいって良くないと思っています。(国立高専機構では)推薦入試に使う場合と学力検査入試に使う場合で切り分けて、学力検査の場合には部活動とか生徒会活動とかそういうものを記入する欄すらないもの、シンプルな9教科の評定のみのものにしてはどうか」

 モデルにするのは、先行して改革を進める広島県です。検討中の調査書の様式は9教科の評定のみと割り切っています。学力検査とシンプルな調査書、それに面接で合否を判定します。

 広島県での調査書改革は中学校の教員の負担軽減がきっかけですが、坪田教育長の狙いは別にありました。

坪田教育長:
「(国立高専機構の調査書改革で)一番重要なのは、推薦入試も学力入試も通じて出欠欄を無くそうとしたんですけれども、その主旨は中学校時代に不登校だった子供を不利にしないと」

 病気やいじめなどで学校を欠席せざるをえなかった生徒が、それを理由に進学を諦めることがないように。その理念を基に、まずは「出欠の記録」を無くすことから名古屋での調査書改革を進めます。

坪田教育長:
「ちゃんと子供目線で、子供本位での改革により果敢に挑戦していくということは、われわれ教育委員会の一つの務めじゃないかなと思っています。来年度からはもう半年を切っていますから難しいところがあるんですけれども、次の年度からは、そういう簡素化した調査書を使う方向でいけないかという話を、県教委さんと話していくというのがまず第一歩になってくると思います」

 愛知県の高校入試一般選抜は評定点、いわゆる内申点は9教科5段階を2倍し、最高で90点。そして学力検査は各22点の5教科で最高110点。この2つを足して200点満点となってはいます。

 しかし、愛知県では高校ごとに内申点を重視するのか、試験を重視するのかを選ぶことができます。どちらかの点数を1.5倍、または2倍にして順位を出します。主に進学校が試験の点を2倍にするなどしている場合があるということです。

 ただし最終的な決定方法は「この数値を基礎資料とした上で総合的に行う」とされています。

 この「総合的」の部分に調査書の内容が反映されますが、どの項目の何をどのように評価するのかは各学校次第で、公表もされていないのが現状です。