愛知県豊田市に2022年8月にオープンした発酵食品のカフェ「ハッコシド」は、やさしいランチが人気で開店を待つ客の行列もできる。老舗味噌蔵の挑戦を取材した。

■一番のこだわりは「発酵食品」を使うこと…老舗味噌蔵の4代目が始めた人気のカフェ

 愛知県豊田市の名鉄三河線・越戸駅(こしどえき)から歩いてすぐの場所にある、カフェ「ハッコシド」。

【動画で見る】チョコケーキに“豆みそ”が…老舗味噌蔵が『発酵カフェ』4代目の新たな挑戦

2022年8月にオープンしたばかりだが、昼は満席になる人気店だ。

女性客:
「豊田市のグルメをフォローしているんで、そこから新しいお店ができたという情報で」

別の女性客:
「お茶も含めたら4回目。ちょっと今までのお店とは違うよね」

また別の女性客:
「さっぱりした味でね、すごく素直に入っていくの」

ランチには地元食材を使う。

スイーツは自家製だ。

店の一番のこだわりは、発酵食品を使うこと。

オーナーの岩瀬浩司さん:
「うちの作ったしょう油、味噌に限らずですけど、お料理全てに発酵食品を使っています」

オーナーの岩瀬浩司(いわせ・こうじ)さんは老舗の味噌蔵の4代目。

味噌蔵はカフェの隣にある。1927年(昭和2年)創業の丸加(まるか)醸造場だ。

「豆味噌」や「たまりしょうゆ」、「山ゴボウの漬物」などを製造している。

岩瀬さんはここで、昔ながらの木桶を使い「豆みそ」を仕込んでいる。

岩瀬さん:
「ここで作っているのは『豆みそ』っていわれるものなので、大豆とお塩だけで基本的に仕込んでいるお味噌になります。お味噌の複雑な香りは、木桶の中に住み着いている乳酸菌ですとか、酵母もそうですし、蔵全体にある住み着きの酵母とか。この蔵だからできる味っていうのはありますね」

木桶の中で、大豆をじっくり発酵・熟成させること2年。

豆の風味と深い味わいが特徴の味噌ができあがる。

その豆味噌に漬け込んだ地元産の山ごぼうや菊芋の漬物は、コリコリとした食感と味噌の上品な香りが絶妙と評判だ。

「たまりしょうゆ」はコクと旨みが強く、まろやかな味わいが人気。

岩瀬さん:
「発酵した食べ物っていうと、もともとの物とは違うおいしさに変わっていたりとか、何か混ぜ合わせたりすると混ぜ合わせたものの素材感がぐっと上がったりとか、発酵した食べ物ならではのおいしさがあります」

そこで、創業以来手掛けてきた「豆みそ」や「たまりしょうゆ」をもっと知ってもらいたいと2022年8月、かつて味噌蔵だった場所を改装し、発酵をテーマにしたカフェを始めた。

店名は、「発酵(はっこう)」と地名の「越戸(こしど)」を掛け合わせ「ハッコシド」に。

店内には、実際に使っていた味噌桶の板などを装飾に使っている。

■麹の効果でお肉が柔らかくなるとも 発酵食品にこだわったランチプレート

 料理を担当しているのは店長の女性。味噌汁は自慢の豆味噌を使ったコクのある味わいだ。

旬の冬瓜をたまりしょう油で煮込んだ「冬瓜の煮物」など、ランチメニューは「発酵ランチプレート」の1種類のみ。

値段は税込み1650円。

店には午前11時の開店前から行列ができ、開店と同時に厨房は一気に忙しくなる。

発酵食品を使って調理した、彩り豊かな前菜は9種類。

甘酒を使った「だし巻き玉子」や…。

豆腐を使った「豆富(とうふ)クリームチーズ」に…。

ニンジンの酢漬け「キャロットラペ」。

そして、山ゴボウの味噌漬けを生ハムで包んだ「生ハムのブーケ」。

女性客:
「すごくおしゃれで…」

別の女性客:
「ちょっと変わっておいしかったですね、どれを食べても」

また別の女性客:
「私は豊田の出身なので、名前は昔から聞いていました、『丸加の味噌ゴボウ』で。うれしいですね、地元ですから、『あそこね』って感じで」

メインの鶏肉にも、発酵食品を使っている。

店長:
「塩こうじに漬け込んでありまして、柔らかくなりますね、お肉が麹の効果で柔らかくなります」

奥三河産の「鶏もも肉」は、「塩こうじ」で一晩漬けこんだ。

肉が柔らかくなり旨みも増すといい、オーブンでじっくり焼いたあと、仕上げにフライパンで皮をパリッと焼き上げる。

ソースもこの店ならではで、タマネギを3日間かけて発酵させ、しょう油などを加えて作る。

玉ねぎの甘みと、しょう油のコクがジューシーな鶏肉によく合う。

女性客:
「塩こうじに漬けて柔らかくなっていて、味も食べやすい」

別の女性客:
「ある程度歯ごたえもあるし、柔らかさもあって。タレがまた、さらにプラスアルファの味で」

席数はあえて少なくして16席にとどめていて、ゆっくりと贅沢な時間が過ごせる。

この日は午後1時過ぎに、ランチが完売した。

■チョコレートケーキの隠し味は「豆みそ」 カフェスタイルで発酵食品を手軽に

 午後2時からは喫茶タイムになる。続々と訪れる客の目当ては、自家製のスイーツだ。これにも、味噌やしょう油が使われている。

しょう油で作ったソースをかけて食べる「カラメルプリン」(480円)に…。

生地にしょう油を使って焼き上げた「チーズケーキ」(580円)。

「チョコレートケーキ」(580円)には、深い味わいを出すため、豆みそを使っている。

女性客:
「おいしいです。後に味噌の香りがきます」

別の女性客:
「和風みたいな感じですかね」

岩瀬さん:
「味噌やしょう油は、日本で古くから食されてきたものですね。身近なものなんですけど、改めてなんで味噌を加えたらおいしくなるかとか、しょう油を加えたらおいしくなるかということを、もっと知ってもらいたいなと思います」

可能性が詰まった発酵食品を、カフェというスタイルでもっと手軽に味わってもらいたい…。

魅力を知って料理に生かしてもらえるよう、カフェには販売スペースも併設されている。

初めて訪れたという女性二人は…。

女性客:
「今日、豚汁しようと思って味噌を買ったんです、『豆みそ』を。今まで私は『白みそ』しか使ったことなかったんですけど、『豆みそ』今日食べたらおいしかったから、早速これで豚汁を作ろうと」

愛知の老舗味噌蔵が始めた新たな挑戦。発酵食品の魅力が広がっていくことが、岩瀬さんの願いだ。

岩瀬さん:
「(豆みそやしょう油の)新しい使い方とか、新しい味を真似していただいて、おしょう油の使い方、お味噌の使い方っていうのがもっと知れ渡るといいなと思います」

2022年10月12日放送