
認知症の人を社会から孤立させない取り組みが、三重県鈴鹿市で始まっています。サポートを受けながら買い物を楽しむ「スローショッピング」を取材しました。
腕を支えられながらゆっくりと歩く、鈴鹿市の安田日出子さん(62)。6年前、若年性認知症と診断されました。

安田さん:
「1人ではもちろん買い物に行けないし」
認知症の人たちに安心して買い物を楽しんでもらうスローショッピング。イギリス発祥の取り組みといわれ、鈴鹿市では2022年7月から月に1度、スーパーの「マックスバリュ岡田店」で行われています。
【動画で見る】認知症の人が買い物楽しむ…スーパーで“スローショッピング”「1人では難しいけどサポートがあればできる」

スローショッピングを考案した老人ホームの所長:
「自分で好きな商品を探すことができなかったりとか、どうしてもお金の清算に時間がかかってしまって、買い物を諦めてしまう方々がたくさんいらっしゃいました。例え認知症になったとしても、買い物を楽しむことができる環境を作りたくて、このスローショッピングをはじめました」
この日は8人が来店。

簡単な自己紹介をしたあと、サポートを務める市民ボランティアと2人1組になり、買い物がスタートしました。
安田さん:
「ミレーフライを今探しています」

おやつを買うという安田さんですが…。
安田さん:
「これは見えにくいです。飾りのような文字はわからない。距離感がわからない」

空間認知機能が低下しているため、たくさんある商品から目的のものを見つけることや、障害物を避けて歩くことが困難だといいます。
安田さん:
「お菓子を探そう」
サポーター:
「これはふりかけ。どこかね、あそこら辺かな」
隣で付き添う「サポーター」が手助けします。
安田さん:
「お姉さんに聞く?ミレーフライってどこにありますか?」
店員:
「ちょっと今売り切れていまして、すみません」
安田さん:
「あー、残念」
目当ての商品は売り切れでしたが、別の商品を見つけカゴに入れました。

会計は「おもいやりレジ」と書かれたスペースへ。

この店では、支払いに手間取ることが多い認知症の人や高齢者がプレッシャーを感じないよう、こうした看板を掲げて周囲の客に知らせています。
安田さんはサポーターの助けを受け、無事に会計を済ませました。
安田さん:
「もたつきましたけどやっと買えました。認知症になっても自分らしくこうやって色々できることを探しながら、助けてもらいながらやっていけることが励みになります。1人では難しいけど、サポートがあればできます」

認知症の進行を遅らせることにも繋がると期待されている、スローショッピング。鈴鹿市は今後、ボランティアの確保を進めるなどし、活動を広げていく計画です。