愛知県一宮市の『いちのみやいちご研究所』は、完熟まで待って収穫したイチゴの直売所です。こだわりのイチゴをぜいたくに使ったスイーツ店も人気を集めています。

■真っ赤に完熟したものだけを収穫…甘く香り豊かな「完熟イチゴ」

 真っ赤に色づいた「イチゴ」。愛知県一宮市の名鉄・観音寺駅からすぐの所にある『いちのみやいちご研究所』では2月、収穫の最盛期を迎えていました。

【動画で見る】20パック1万円以上“爆買い”の客も…知る人ぞ知る『完熟イチゴ』の直売所 贅沢に使ったスイーツ店も評判に

この農園を営む加藤秀明(かとう・ひであき)さんは、15年前からここでイチゴの栽培をしています。

複数の品種を手掛けています。「とちおとめ」は甘みと酸味のバランスが絶妙です。

「恋みのり」は大玉で上品な香りが特徴。

中でも自信のイチゴは、愛知県が15年前に開発した「ゆめのか」です。

加藤秀明さん:
「愛知県のオリジナル品種です。果汁が多くてまさにジュース」

しっかりとした果肉ですっきりした甘み、特に、果汁が多くジューシーな味わいが人気だといいます。

秀明さんは、化学肥料を使わず、昔ながらに土で栽培しています。

秀明さん:
「根っこが元気であればイチゴも元気になるので、元気なイチゴからはおいしいイチゴがとれる。地場のものを食べるのであれば、地場の土で地場の水を使って育てられたらいい」

こだわりはもう1つがあります。

秀明さん:
「イチゴが、最後まで真っ赤になっているのを見て収穫しています。これはもうちょっとかな…ここらへんとかね、真っ赤になっているのを採ります。これは完熟の状態です。お尻まで赤くてヘタも反り返って…完熟すると果実の表皮がだんだん柔らかくなるんです。輸送性には向かないし、扱いも難しくなる。簡単に潰れちゃう。でもおいしい」

通常、イチゴは流通を前提に完熟前の青い状態で収穫しますが、時間とともに赤くはなるものの、味は収穫した時のままです。秀明さんは、畑でギリギリまで真っ赤に熟したイチゴを手で1つ1つ触って、柔らかさを確認しながら丁寧に採っていきます。

一番おいしいタイミングを見極め収穫した「完熟イチゴ」は、とても甘く香りも豊かです。

■1万円以上まとめ買いする客も…開店前から客が集まる隣接の直売所

 完熟させることで美味しくはなるものの、傷みやすく長距離の輸送には向かないため、ハウス内のスペースに直売所を作り、週に水曜と土曜の2日、採れたての状態で販売しています。

「とちおとめ」は1パック700円。「恋みのり」「ゆめのか」はそれぞれ600円です。

この日は午前10時の開店前から、客が集まっていました。直売所は、奥さんの沙織さんが担当しています。

沙織さん:
「とちおとめと恋みのりとゆめのかと、ご用意あります」

女性客:
「これはどんな味?」

沙織さん:
「ゆめのかは、味はサッパリ系で果汁がすごく多いので、ジューシーです。本当に滴るようなイチゴです」

男性客:
「とちおとめの2Lを2つ」「甘みが強くて、香りもいいのでとてもおいしいです」

女性客:
「スーパーで買うよりこっちで買う方が、だいぶ美味しく感じる」

直売所には、一宮市内だけでなく、他の市町からも客が訪れます。

別の女性客:
「小牧から来ました、やっぱりここの食べておいしかったので、以前」

北名古屋市から来た家族は、一度に8パックも購入しました。

母親:
「家で子供たちが、1日2パックずつ食べる。これ、大好きなんです」

娘:
「おいしい」

20パック、1万円分以上を買っていく人もいました。

沙織さん:
「20個。全部で1万4千円です」

■「地域の人に少しでも美味しい状態で」…家業の農業を継ぎ米作りの傍らでイチゴ栽培

 秀明さんは26歳で脱サラし、15年前に家業の農業を継いで米作りを始めました。

秀明さん:
「(知り合いからは)『大学を出て親が泣くぞ』とか、そんなことをいっぱい言われる中、始めました。当時の農協の組合長に相談に行ったら、『若かったらイチゴをやれ』と。ここは農地がどんどん宅地化して建売の家がたくさん建つので、イチゴが好きな子供のお客さんがどんどん増える、そんなアドバイスを受けてイチゴできるんじゃないかなと」

米作りの傍ら、イチゴの栽培を始めました。しかし、イチゴには農業用ハウスなどの設備が必要です。秀明さんは知り合いに頼んで中古のハウスを譲ってもらうことで節約し、土づくりや温度管理など試行錯誤を重ねました。

そうした中で、大量に流通させるのではなく、地域の人たちに少しでも美味しい状態で食べてもらいたいという思いが強くなっていったといいます。

秀明さん:
「イチゴを健康に育てて、赤くなるまで待って、それを鮮度よく消費者に届ける」

こうして4年前に「完熟いちご」が誕生しました。

最初は近所の人たちがほとんどでしたが、そのおいしさが徐々に口コミで広がり、いつのまにか人気の直売所に。この日も、とひっきりなしに客が訪れました。

■完熟イチゴをふんだんに使ったスイーツの数々…開店したスイーツ専門店が人気に

 完熟イチゴの美味しさをもっと知ってもらいたいと、2022年4月には、一宮駅の近くにイチゴスイーツ専門店「いちご研究所-sweets-」を開きました。

「いちごドームケーキ」(734円)は、完熟イチゴをたっぷり使ったショートケーキです。

「いちごはぁと」(486円)は、イチゴのムースをモチモチの求肥(ぎゅうひ)で包みました。

看板商品は、四角い容器の中にスポンジ、完熟イチゴ、そしてたっぷりのイチゴクリームを入れた「いちごbento(ベントー)」(1166円)。

完熟イチゴを13個も使った贅沢な一品で、心行くまでイチゴを味わうことができます。

他にもイチゴを使ったチーズケーキ「いちごベイクドチーズケーキ」(486円)などが揃い、開店から1年経たずして人気店となりました。

店を任されている専属パティシエの野田有美薫さんは、完熟イチゴの質の高さに驚かされたといいます。

野田有美薫さん:
「濃さが違う、これ食べたら他のイチゴが食べられないぐらい美味しい。ショートケーキも、直接もらっているからこそ、おいしいイチゴをふんだんに使って。使う量も半端なく、ノッてきちゃってのどんどん乗せちゃおうみたいな感じで、どんどんイチゴのスイーツ作っちゃおうみたいな感じで」

15年前、試行錯誤しながら、一宮で始めたイチゴ栽培。完熟にこだわりつつ、直売所の数を少し増やして地元の人たちにもっと喜んでもらいたいと考えています。

沙織さん:
「私も初めて食べたとき、美味しいって純粋に思ったので、そういう気持ちがみんなに伝わったらいいなと思います」

秀明さん:
「せっかく地元の人に認知されて広がってきたので、もう少し、もう1か所2か所、一宮で生産して直売できる場所を増やしていきたいと思っています。完熟で鮮度のいい、おいしいイチゴを届けたいと思います」


2023年2月13日放送