名古屋城天守閣の木造復元に伴うバリアフリー対応について、6月3日に市が開いた討論会で、障害のある人に「差別的発言」があり、波紋が広がっています。

 13日午前、名古屋市役所に集まっていたのは、150人以上の障害者団体のメンバー。

抗議活動の参加者:
「1人の人を差別用語で攻撃する。しかもそれを市長はじめ、誰も止めようとしなかった」

 市や河村市長に対して強い口調で抗議しました。

 事の発端は6月3日に市が開いた、名古屋城天守閣の木造復元をめぐるバリアフリー対応についての市民討論会です。

 より忠実な復元を目指すためエレベーターは設置せず、車いす利用者と介助者が利用できる小型昇降機を導入するという市の方針について、障害のある人や市民が議論が交わしましたが…。

【動画で見る】河村たかし市長も陳謝…名古屋城復元のバリアフリー化巡る討論会で『障害者への差別発言』広がる波紋

車いすの男性:
「名古屋城、大阪城はエレベーターで上がれています。今まであったものをなくしてしまうのは、われわれ障害者が排除されているようにしか思えないです」

 エレベーターの設置を求める障害者の男性の発言に対し、反対する市民から飛び出したのが…。

参加した市民:
「河村市長が作りたいと言っているのは、エレベーターも電気もない時代に作られたものを再構築するという話なんです。その時になんでバリアフリーの話が出るのかなっていうのが荒唐無稽で。どこまで図々しいのって話で、我慢せえよって話なんですよ。おまえが我慢せえよ」

 さらに別の男性が、直接的な差別表現を交えて加担します。

参加した別の市民:
「【差別用語】で生まれるかもしれないけど、健常者で生まれるかもしれん。それは平等なんですよ。どの税金でメンテナンス毎月するの?そうでしょ!そんなお金はもったいないと思うけどね。だからエレベーターは必要ない!」

 障害がある人を傷つける差別的な言葉を使った発言。その後、挨拶に立った河村市長は…。

河村名古屋市長:
「熱いトークもありましてよかったですね」

 しかし、その2日後の定例会見で、陳謝しました。

河村名古屋市長(5日):
「言われとるような差別的発言があれば、『遠慮してくださいよ』ととっさに言えるかどうかわかりませんけど(制止)すべきだったということは言えるだろうと。申し訳ありませんでした」

 12日に開かれた有識者による全体会議で取りまとめる予定だった最終的な復元計画も、この問題を受けて先送りに。文化庁への計画の提出も延期となりました。

河村名古屋市長(12日):
「傷つけた発言があったということは事実ですので、それについてしっかり市として対応していくことが必要だと。納得ということについて、丁寧にやらせていただくと」

 市民が自由に発言できる場として設けられた討論会が、より対立を深める形となった今回の問題。

 13日、市役所の集まった障害者団体のメンバーは、差別的発言をその場で制止しなかった河村市長と市に対して抗議。第三者委員会での検証などを求める申し入れを行いました。

抗議活動の参加者:
「なぜこの時代にこんなことが公の場で発言できたのでしょうか。そしてそれを見ていた関係者はなぜ止めなかったのでしょうか。本当に信じられません」

 名古屋市はバリアフリー対応についての方針が固まり次第、再び会議に諮り、2023年度中の文化庁への計画提出を目指しますが、当初2020年を完成予定としていた復元計画はすでに大幅に遅れています。