学校の「校則」を見直す動きが全国で広がっています。文部科学省も2022年12月に生徒指導の基本書「生徒指導提要」を改訂し「校則は絶えず見直しを」としています。

 愛知県弁護士会が県内の県立高校50校を調査したところ「防寒用コートに許可が必要」「下校時間は男女で分ける」「宿泊を伴う旅行は事前に届けが必要」など、驚きの校則が残っていることがわかりました。

■街で聞いた「変な校則ありました?」20人中18人が「あった」と回答

 4、5年前からブラック校則いう言葉が話題になりましたが、名古屋の街で10代から70代の男女20人に、自分が通っていた学校に「変な校則」があったかどうかを聞いたところ、18人が「あった」と答えました。

20代男性が通っていた愛知県内の私立高校では「刈り上げは禁止」「化粧をしてはいけない」。30代女性が通っていた愛知県立の高校では「前髪は眉毛よりも上でないとダメ」などがあったということです。

他にも様々な「変な校則」があったと声があがりました。

・「中学では髪の毛は耳にかからない長さ規定」(市立中学/20代男性)

・「コートの色が茶や紺など、暗い色のみに限定」(県立高校/10代女性)

・「スカート丈は膝下の15センチと決められていた」(私立高校/30代女性)

・「柄が入った靴下はダメ」(県立高校/20代女性)

・「高校1年の時だけリュック禁止でスクールバッグだけに限定」(私立高校/20代女性)

50代以上の人からは反対に「自由だった」「気になった校則はない」といった意見も聞かれました。

2020年に福岡県弁護士会が行った調査によると、福岡市立の中学校で校則として下着の柄や色をチェックし、下着の色を男性教師に指摘された女子生徒が不登校になったという事例もあったということです。

【動画で見る】下校時間は“男女別”やコートは許可が必要等…『驚きの校則』はまだあった 見直しや試験的に廃止する学校も


■「校則がHPで公開を」文科省も校則見直しへ教育委員会に通達

 校則の問題は広がって、生徒だけでなく保護者からも批判の声が高まり、文部科学省も動きました。2022年12月、学校の生徒指導の基本書ともいわれる「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂し、校則問題の是正に乗り出しました。

校則については「社会の変化等をふまえ、適切な内容か、変更する必要がないか、本当に必要か、絶えず見直しを」「児童、生徒、保護者が確認、議論する機会を設ける」と示されました。

また同じようなタイミングで2022年、全国の教育委員会に「校則はホームページで公開するのが適切」とする通達を出しています。公開することで保護者や外部から注目されることで改善に繋げるようとする考えです。

HPでの公開について、東海3県では岐阜県と三重県が進んでいます。岐阜県は2021年から66の全ての県立高校が、三重県も2022年から56の全ての県立高校が公開しています。三重県の県教委は校則の点検もしていて、時代にあわない校則は積極的に見直すよう指導しています。

愛知県の県立高校は現在全日制147校のうち、26校しか公開されていませんが、2023年度内には全て公開される予定です。

名古屋市立の学校については、2020年に河村たかし市長が「公開するよう指導する」と発言しましたが、実際にはほとんど進んでいません。市教委は中学・高校に公開を「促している」という程度に留まっています。

校則を是正する活動に取り組んできた「NPOストップいじめ!ナビ」の須永祐慈副代表は「改善が進んでいるように見えるが、まだ問題のある校則は多い」と話します。

背景には「『教員が指導をゆるめるのはいけない』という意識がまだあるのではないか」としています。

■「コート着用は許可が必要」「下校時間は男女別」…校外でも校則で制限する学校も

 愛知県弁護士会が、2022年に県内の公立高校の校則を調査したところ「私生活まで校則で制限」する学校があるということもわかりました。

愛知県弁護士会の子どもの権利委員会は、県立高校から地域に偏りがないよう50校を抽出して、校則の実態調査をしました。

調査では、防寒用のコートを着用する場合には“許可願”の提出を求める高校や「下校時間を男子生徒と女子生徒で区別している高校もあったということです。

このほか、私生活で宿泊を伴う旅行をする際に、事前に“旅行届”の提出を求める高校は複数確認されたということです。

調査結果について愛知県弁護士会子どもの権利委員会の粕田陽子(かすだ・ようこ)弁護士は「何をもって校則としていて、生徒と教員で合意できているのか。学校で子どもたちが安全に安心して学ぶ権利が保障されればいいはずで、学校外まで学校が細かくルールを定めるのは過剰な干渉ではないか」として「もう少し生徒を信用して、自由にさせてもいいのではないか」と話しています。

愛知県弁護士会では学校側の考えなどを確認したいとして、今回調査した50校に対して、校則について生徒や教員に向けてアンケートを1学期中に行うほか、校則の悩みなどの相談も電話で受け付けていて、子どもはもちろん保護者や教職員も相談できるようにしています。

愛知県教育委員会も調査を実施していて、県立の約60%の高校(全日制)が、2023年度中の校則の見直しに向けて点検していると回答しているということです。

■期間限定で校則廃止する高校も…校長「自由とは何か考えてほしい」

 名古屋市瑞穂区の市立中学校では、2022年から2023年にかけて一部の校則を改定しました。「くるぶしが出ていると傷つけてしまう」という理由で禁止していた「くるぶし丈」の靴下について、行事や式の場を除いてくるぶしが出ている靴下も認めるとしました。

もともとはセーラー服が寒いからという理由で、女子生徒だけが認められていたコートの着用も、全ての生徒に対して認めたということです。

髪型ではツーブロックを認めました。「社会人でもツーブロックの人もいますが、それを見て失礼に感じる人はいない」と判断し、解禁しています。

この学校では他にも改定された校則がありますが、全て生徒会を中心として2022年の1学期から改定についての学校側との話し合いやアンケートを行ってきたということです。

教頭は「今後も生徒会からの要望があれば話し合いをもとに、校則改定を進めていく」と話しています。

岐阜県立岐山(ぎざん)高校では、6月30日までの3週間、服装・髪型に関する校則を廃止しています。

服装は「冬は学生服に学生ズボンまたはブレザーとスカートまたはスラックス。夏は白いカッターシャツや開襟シャツなど」、髪は「着色しない 化粧をしない」などを試験的に廃止しました。

生徒の中にあまり大きな変化はないようですが、ピンクのエクステをつけて登校する女子生徒や、私服の生徒、アイシャドーやアイラインなど化粧をしてくる生徒もいました。

生徒からは「校則を停止してもそんなに規律を乱すような事をしている人はいない」「私服の方が過ごしやすい」「自分の個性を出したり、考えて動くことができるので、自分も成長できる」といった声があがっています。

校則を廃止した狙いについて石神政幸校長は「なぜ校則があるのか、自由とは何かを考えるきっかけにしてほしい。自分を律する、自分で考える力を身につけてほしい」と話しています。

校則の試験的廃止は6月30日までで、7月3日に生徒と校長が今後どうしていくかを話し合うことにしているということです。