岐阜県岐阜市の伊奈波神社(いなばじんじゃ)の近くに、古民家を改装し地元の食材を使った飲食店がオープンしました。店の経営者らは「裏参道モール」と名付け、街にかつての賑わいを取り戻そうとしています。

■土鍋で炊き上げモチモチ…1900年の歴史を誇る神社周辺にできた天むす専門店

 岐阜駅から北へ車で10分、1900年の歴史を誇る伊奈波神社の参道周辺に、古民家を改装した新店が次々とオープンし、人気スポットになっています。

【動画で見る】古民家改装したグルメ店で賑わいを…岐阜市で人気『裏参道モール』1900年の歴史誇る伊奈波神社の参道周辺

女性:
「おいしいお店が増えるとうれしいので、出かける気にもなります」

別の女性:
「近所なので、盛り上がって人がたくさん集まってくれるのはいいことです」

また別の女性:
「伊奈波さんはよく行く神社なので、この辺りが賑わいを取り戻してもらえればすごくいいなと思います」

2023年1月にオープンした「天ころりん」は天むすの専門店で、築100年以上の古民家を改装した店です。

店主の宮嶋三貴さんは、1番のこだわりはお米だといいます。

宮嶋三貴さん:
「すべてにこだわっているんですけど、1番はお米です。岐阜県産の『ハツシモ』に、国産22種の雑穀米を混ぜたもの、これを入れることでもっちり、甘みが出るんです」

使うのは、岐阜県産のブランド米「ハツシモ」。

これに22種類の雑穀を混ぜ、特注の土鍋で炊き上げます。

火加減の調整など手間はかかりますが、土鍋が余分な水分を吸ってくれるので冷めてもモチモチで、ほんのり甘くおいしく仕上がります。

宮嶋さん:
「炊きあがりはふっくらモチモチ粘りがあるけど、ウチは冷めてからの味を出す。冷めてもつやつや、甘い」

5センチ以上の大きなエビを衣に味を付けてカリっと揚げ、風味の良い香り豊かな海苔で巻いて、一つ一つ丁寧に握っていきます。

■開店すると次々と客が来店…この日は約2時間で完売

 宮嶋さんが天むすのお店を開いたのは、小さい頃から大好きだった「姉が作った天むす」がきっかけです。

宮嶋さん:
「天むすが好きだったんです、思い出の味っていうんですかね」

土鍋で炊き上げた自慢のご飯に、海老や海苔にもこだわって作った「天結び 紅」は、5個で780円。

ほのかに甘みのあるご飯に、ぷりっぷりの海老がたまりません。

開店は午前11時ですが、店先にはその前から客が並びます。

宮嶋さん:
「すみません、お待たせして」

女性客:
「天むす2つください」

開店すると、次々と客がやって来ました。

女性客:
「前、1回来たんですけど、売り切れていたのでリベンジで2回目です」

別の女性客:
「お米の具合がちょうどいい、炊き加減がうまい。エビもおいしいし。だからハマっちゃって」

また別の女性客:
「おいしいです。プリプリの海老と土鍋で炊いたご飯がぴったり合ってて。あと、冷めてもおいしいです」

家族でやってきた近所の人もいました。

母親:
「おいしいです、エビが大きくてご飯もしっとりで、最高です」

娘:
「おいしい」

この日は開店からおよそ2時間で、用意した300個が完売しました。

■“本業”のういろと同じ米粉を使った絶品フォーの店

 2023年3月にオープンしたフォーの店「フォーヌー」も、昼時は客で賑わいます。

目当ては、一見、うどんのようにも見える「長良川フォー」(980円)です。

店を営むのは、浦瀬将孝さんと妻の明香さんです。

浦瀬明香さん:
「米粉を使った麺になります。喉ごしがよくて、つるっとして、さらにモチっとしていて…」

岐阜県産のブランド米「ハツシモ」で作った米粉の麺を1分ほど茹でたら、長良川で獲れた鮎から作った旨みのある魚醤や飛騨牛骨などでダシをとったコクのあるスープと合わせます。

具の鶏肉など、材料は全て岐阜県産にこだわっています。

浦瀬将孝さん:
「この一杯に、ギュッと岐阜が詰まっているのを感じながら召し上がってもらいたい」

喉ごしのいい麺に、あっさりした上品なスープがよく合います。

女性客:
「麺はつるつるでとってもおいしいです。口当たりがよくて食べやすい」

別の女性客:
「麺にコシがあって…讃岐うどんみたいな感じのコシがあっておいしいです」

浦瀬さんは、昭和42年(1967年)創業の「長良ういろ」の3代目で、コロナ禍で観光客が減り、お土産の需要が激減する中で、何かできないかと考えました。

将孝さん:
「ういろも米粉で作っていまして、フォーの麺も米粉で作っています。米粉でできているのが、ウチの食感や味の特徴です」

ういろの原料でもある米粉を使い、特製の麺にしました。

半年ほど試行錯誤し、ベトナムの米粉麺「フォー」を作ってキッチンカーで販売したところ、評判も上々だったことから、思い切って店舗を持つことにしたといいます。

■かつての賑わいを取り戻したい…2つの店が中でつながる「裏参道モール」

 浦瀬さんが伊奈波神社の近くに出店したのには、理由があります。

明香さん:
「元々ここは伊奈波神社の参道だったみたいで、昔は商店とかもあってすごく賑わっていたみたいなので」

かつて、城下町として栄えた伊奈波地区。

参道周辺には、昭和の時代に建てられた古民家が多くありましたが、ここ5年ほどで50軒以上なくなり、風情ある街並みが消えつつあるといいます。

明香さん:
「伊奈波神社のふもとで歴史ある建物を残しつつ、この街を盛り上げていくような街づくりができたらいいなと」

参道から一本中に入った場所にあることから「裏参道モール」と名付けました。

ユニークな作りになっていて店の奥に進むと、天むす専門店の「天ころりん」とつながっています。客に楽しんでもらいたいと、2つの店をつなげ、自由に行き来できるようにしています。

天むす専門店の宮嶋さんも、この通りに賑わいを取り戻したいという思いがあるといいます。

宮嶋さん:
「来られる方も温かい方ばかりで、私たちにありがとうと反対にいってくれるんです。賑わい戻してくれてありがとうって、ここに来てくれてありがとうって」

古民家を再生して、地元に当時の活気を取り戻したい。岐阜の食材にこだわった天むすと、老舗和菓子店が新たに作った米粉の麺料理、2つの店が力を合わせて賑わいをつくり出しています。

明香さん:
「天ころりんさんの天むすを食べていただいて、ウチのフォーを食べていただいて、両方を味わっていただけるお店づくりをしていきたいと思っています」

宮嶋さん:
「裏参道モールセットだね」

2023年4月13日放送