愛知県半田市の牧場で、廃棄される「酒粕」をブランド牛に食べさせる取り組みをしていて、環境にも優しくて地域も活性化できるという、新たなカタチが始まっています。

 知多半島のブランド牛「知多和牛」。牛たちがもりもり食べているエサに混ざっているのは、日本酒の製造過程で出る酒粕です。

 大学院で家畜のエサの研究をしていたという、「小栗牧場」代表の小栗道政さんが酒粕に着目したのは、栄養価の高さです。

小栗さん:
「牛ってすごく大型化している。昔のエサだとちょっと栄養が足りていなかったところがあると思うので、その点(酒粕は)良質なたんぱく質が豊富なので、牛の成長をさらに促進させてくれるのではないかなと」

【動画で見る】酒造メーカーと牧場がタッグ…廃棄する『酒粕』が和牛の良質なエサに 愛知・半田市で進む資源循環型の試み

 醸造文化が根付く知多半島で廃棄される酒粕を使えば、地元への貢献にもつながると考えました。半田市観光協会を通じ老舗酒造メーカーに持ちかけると、快く受け入れてくれたといいます。

 酒粕を提供するのは、江戸時代創業の老舗「中埜酒造」です。

杜氏の船井さん:
「お酒は米と米こうじを原料としておりまして、水を加えて発酵している状態がもろみといいまして、それを圧搾して固く出来上がったものが酒粕」

 中埜酒造では、日本酒や料理酒を作る際、年間約70トンの酒粕が出ていて、漬物用などを除いた40トンを廃棄していました。処分費用がかさんでいたといい、2022年12月から小栗さんに提供しています。

 小栗さんにとっては割安でエサを手に入れることができ、メーカー側はロスのない酒造りができる。まさにWIN-WINの取り組みです。

 小栗さんは週一回のペースで酒粕を取りに来ます。

杜氏の船井さん:
「夏場に出てくる酒粕はなかなか引き取り手がなくて、今までずっと廃棄していたんですけれども、地元の牧場さんで有効活用していただけるんだったら、これ以上ありがたいことはない」

 小栗さんの和牛と中埜酒造の日本酒を味わうイベントで提供される、フレンチの試食会が開かれました。

 見た目も美しいひれ肉のローストと赤ワイン煮。小栗さんの和牛は、触れるとすぐに溶け出す上質な脂が特徴だといいます。

参加者:
「自分たちが飲むお酒の原料を牛が食べて、その牛を地元で食べるというのは、なかなか他の地域ではないことかなと思うので、半田の魅力の一つになるかなと」

 小栗さんの夢も広がっています。

小栗さん:
「うちで出た堆肥で作ったお米でお酒を造ってもらったり、一緒に(牛を)食べてもらったり。今回を機に仲間が増えていくとどんどん輪が広がっていくので、そうなるとやっていてやりがいも出てくる」

 牧場と酒造メーカーがタッグを組んだ資源循環型の試みは、地域活性化の起爆剤になりそうです。