名古屋市の市立中学と高校で、2023年の2学期から定期テストの採点にAIが導入されました。実際にどのように採点されているのか、そして精度や狙いについて、現場を取材しました。

 名古屋市守山区にある吉根(きっこ)中学校では先週、2学期最初の定期テストが行われました。

 その午後、職員室で先生が答案用紙をスキャンすると、すぐさま手元のタブレットに表示されていきます。

【動画で見る】答案用紙をスキャンしデータ化…名古屋市立の中学・高校で『採点AI』導入 狙いは教師が働きやすい環境作り

3年・数学科の服部先生:
「1人1人の解答が出てきますので、一斉に採点することがきます。マークシートのテストでここが答えだよと設定したので、今勝手に全部マルがついている状態」

 名古屋市が2023年9月から全ての市立中学・高校で導入した「デジタル採点システム」です。マークシート形式の場合、解答用紙をスキャンし、タブレットを操作してシステムと連携すると、AIが自動で採点してくれます。

 記述方式の場合は、まるでクイズ番組のように、1クラス分の解答が画面上にずらりと並びます。従来のように解答用紙を1枚1枚めくる必要がなく、同じ問題を一斉に採点できるようになっています。

 実際にこのシステムを使い採点していきます。

服部先生:
「これは本当は合っているんですけど、機械のミスでバツになっちゃっているので、こういうのは手動でマルにする」

 マークシートの自動採点の場合、1問につき1クラスで数個のミスも見つかりました。まだまだ教師の目によるチェックは欠かせません。

 ほかにもシステムができたばかりのため、解答用紙の解析に時間がかかるなど、課題もあるといいます。それでもかかる時間は大きく減っているといいます。

服部先生:
「これを使うと、例えば3時間かかっていたものが1時間半になる、約半分」

 マルバツをつける作業はもちろん、点数もAIが自動で計算してくれるため、採点業務自体にかかる時間は半分近くになったといいます。

3年・理科の教師:
「(点数計算は)今までは全部数えてやっていたのが、その部分がすごく早くなりました」

3年・社会科の教師:
「手で採点するよりミスも少ないです」

服部先生:
「これによってより早く帰れますので、自分の生活、ライフワークバランスも取れる」

 システムの導入には、市教育委員会の狙いがありました。

名古屋市・新しい学校づくり推進部の主幹:
「中学校とか高等学校、特に成績の処理とか採点業務といったことに負担を感じるという先生が多くいらっしゃいます。先生たちが働きやすい環境づくり、それがまた生徒さんへの教育の質の向上につながることも期待しております」

 2022年度、名古屋市立の学校に勤務する教師のうち、文科省がガイドラインで定めている残業の上限時間を超えているのは半数以上にのぼる53.4%でした。このシステムの導入で、教師の負担軽減につなげたいとしています。

 2日後、このシステムを使い採点された解答用紙が生徒たちのもとに返却されました。マルやバツは手書き風で、一見、これまでの解答用紙と大きな変わりありません。

 AIを使った採点システムの導入について、生徒たちの感想を聞きました。

男子生徒:
「テストが早く丸付けしてもらえるようになったので、復習だとかが早くできたり」

女子生徒:
「休み時間とか、先生たちが職員室ばかりにいるんじゃなくて、雑談とかできるので楽しいです」

 教師にも生徒にもメリットがある「デジタル採点システム」。教育現場でのAI技術の活用は、今後も広がりそうです。