名古屋市中村区の駐車場に子犬を置き去りにした疑いで、2025年4月、28歳の女が逮捕されました。女は「動物愛護センターへの引き取り手数料がなかった」などと供述していました。身勝手な飼い主によって、行き場をなくした犬はどうなるのか。保護する動物愛護団体の負担が増えています。

■「引き取り手数料がなかった」子犬5匹を置き去りにした疑いで28歳女を逮捕

 28歳の無職の女は3月22日、知人から預かっていた犬が産んだ子犬5匹を名古屋市中村区の集合住宅の駐車場に置き去りにした動物愛護法違反の疑いで4月9日、逮捕されました。

【動画で見る】「犯人捕まえたい」「必ず逮捕の世の中に」身勝手な飼い主のせいで行き場なくした犬や猫 命を救う側の怒り

5匹は産まれたばかりで、駐車場の植え込みで鳴いているのを住人が見つけ、110番通報しました。

女は「飼育費用や動物愛護センターへの引き取り手数料がなかった」と供述したということです。

■愛知県と名古屋市における引き取り手数料

 名古屋市の動物愛護センターについて、引き取り手数料を問い合わせたところ、生後1年未満の子犬は2700円、それ以上は8000円でした。

愛知県の場合は、生後90日未満の子犬は500円、それ以上は2500円でした。

猫についても調べました。名古屋市は生後1年未満の猫は1700円、それ以上は5000円で、愛知県は犬と同じで、生後90日未満が500円、それ以上は2500円でした。

■飼い主が逮捕され引き取ったケースも…動物愛護団体の取り組み

 身勝手な飼い主によって行き場をなくした犬はどうなっているのか、名古屋市南区にある動物愛護団体「SORA 小さな命を救う会」を訪ねました。

この団体は、動物愛護センターと連携し、飼育放棄や迷子犬などを保護するほか、里親に引き渡す活動を行っています。

「SORA 小さな命を救う会」の小嶋愛子さんによると、この団体では約50頭を保護しています。

「SORA 小さな命を救う会」の小嶋愛子さん:
「今ここにいる子たちはほとんど(動物愛護)センターから来たわんちゃんですね。元々は飼育放棄だったり、迷子だったり、遺棄だったりいろんな理由でセンターに収容されて私たちの元に来た子たちです」

この団体はさまざまな依頼を受け、愛知県内だけでなく、関東や関西へまで出向いて犬を引き取ることもあるといいます。

トイプードルの「のん」くんは、飼い主が事件を起こし、逮捕されたことから行き場をなくしました。

その後、警察からの連絡を受けたこの団体が引き取り、里親を探しています。

■遺棄には厳しい取り締まりを…愛護団体が訴える不幸な犬を減らす対策

 環境省の調査によると、犬の保護件数は2023年には約19000匹となり、年々減ってきています。

しかし、無責任な理由で置き去りにされる犬は後を絶ちません。

小嶋さん:
「『子犬の間だけかわいいから飼ってしまった』とか『お世話が大変だった』とか『ペット不可のところに引っ越しちゃった』。物価高も影響していますので、もう共働きでもわんちゃんのご飯が買えないという方が出てきたりとか。基本的にはもうどんな子も殺されたくありませんので。遺棄されてしまったらわんちゃんたちの命がもう助からないので、基本的にはレスキューしています」

中村区の事件のように、悲しい目に合う犬を減らすにはどうすればよいのか。小嶋さんは、飼い主の心の持ちように加え、厳しく取り締まることが必要だといいます。

小嶋さん:
「まだ(遺棄をして)逮捕されてしまうことも、まずまれなんですね。これをもう必ず逮捕となって、必ず起訴されるような世の中にしていかないと、ずっとこの根本的な解決はされないと思うので。やむを得ない場合は相談してもらいたいです。まずは相談して一緒に解決していって、どうしてもダメだったら私たちが保護するということもありえますので、まずは相談をしていただきたいなと思います」

■「捨て猫は犯罪」保護猫カフェオーナーの怒りのポストが拡散

 身勝手な理由で置き去りにされるのは、もちろん犬だけではありません。“ネコノミクス”といわれる猫がもたらす経済効果は、関西大学の宮本勝浩名誉教授による試算では、1年で2兆9千億円以上とされています。

4月5日、洗濯ネットに入れられた猫の写真とともに「お店の前に捨て猫ですか。捨て猫は犯罪です」とX(@neko_tormenta)で怒りの投稿をしたのは、愛知県豊川市の保護猫カフェ「tormenta(トルメンタ)」のオーナ、益田凌平さんです。

tormentaの益田凌平さん:
「捨てた方からのお手紙だったり、猫ちゃんの年齢だったり名前だったり、あとは尿路結石もち(を患っている)だよってことだったりというものが書いてありましたね。驚きと怒りって感じですかね」

■オーナー「犯人捕まえたい」…捨てられていたのは高齢で持病がある猫

「tormenta」では、保護団体から迎えた猫に癒やされるカフェとしてだけでなく、里親につなぐ活動もしています。

このカフェの裏口に置き去りにされたのが、推定10歳と高齢なうえ、尿路結石を患った
メスの猫です。

益田さん:
「遺棄されると医療費だったり、エサ代、砂代だったり生活費とかを全額こちらで持つような感じになりまして。あとはどんな病気を持っているかわからない猫ちゃんとかだと、検査費用だったり、もしくはほかの子に病気がうつっちゃったりとかする可能性もある」

愛護センターに引き取りをお願いした場合、殺処分の可能性もあるため、警察と相談し、益田さんが預かることになりましたが、動物病院で検査してもらったところ、猫同士での感染の可能性がある「猫エイズ」にかかっていたこともわかりました。

益田さん:
「まずは犯人を捕まえたい。お店の方で捨て猫をされて犯人が捕まらなかった、そんな事例を作ってしまうとうちの店に捨て猫が増えちゃうんですよ。下手するとお店を停止しなければいけないことになっちゃうかもしれないですし、罪を償ってほしいという気持ちでもありますね」

犬や猫を置き去りにする行為は「動物愛護法違反」にあたり、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられます。

今回、置き去りにされた10歳のメスの猫は、エイズは発症しておらず、いまはカフェとは別の場所で過ごしています。

動物愛護法には、飼い主や動物取扱業者に、動物が命を終えるまで適切に飼育しなければならいと明記されています。それにより、自治体が引き取りを拒否できる措置が設けられたことなどもあり、支援団体が引き取るケースが増えているということです。

2025年4月18日放送