駅や空港などに設置され、誰でも自由に弾ける「ストリートピアノ」。愛知県一宮市のJRの駅にお目見えしたピアノに密着しました。

 行きかう人の中で自由に演奏できるストリートピアノ。設置されたのは、愛知県一宮市のJR尾張一宮駅です。「コロナ禍での癒しを」と、地元の有志が設置しました。

演奏した女子高生:
「今日テストだったので、テスト週間になると現実逃避してピアノに逃げます」

演奏した男子大学生:
「『ああ俺頑張ったぜ、俺うまいぜ』って思いながらやるんですよ。別にうまいかどうかはおいといて、高揚感に浸るというか」

 色々な人が入れ替わり立ち代わり音楽を奏で、行きかう人たちが耳を傾ける…。この場所で1日取材をしてみると、演奏する人それぞれの想いが見えてきました。

 愛知県のJR尾張一宮駅に設置されたストリートピアノ。かわいらしい演奏者がやってきました…。祖母と孫との連弾で演奏したのは「渚のアデリーヌ」。

演奏を終えた祖母と孫:
「聞いてくれてありがとう。また弾くよ」

 ここでは、色々な出会いも生まれます。

「ピアノ・ソナタ 月光」を演奏したのは、音大出身だという雨宮幸世さん(30)。偶然通りかかったととのことですが、実は…。

雨宮さん:
「次がデビューリサイタル。本当は今年やりたかったんですけど、コロナがあってできなくて」

 雨宮さん、本来なら10月にピアニストとしてソロデビューするはずでしたが、新型コロナの影響でそれが延期に。しかし、このピアノのおかげでデビュー前にファンができたようです。

聞いていた女性:
「ありがとう、聴かせてくれてありがとう。素晴らしいです」

雨宮さん:
「来年リサイタルがあるのでよかったら」

 続いてやって来たのは、買い物帰りだという女性。腕時計をはずし、身のこなしも板についています。大河ドラマ「麒麟がくる」のメインテーマを演奏したのは、大嶋樹美江さん(65)。ピアノ歴は60年にもなるそうです。

 続いて演奏したのは「ウィーンの夜会」、この曲は思い出の一曲。恩師でもある世界的ピアニスト「ワルター・ハウツィッヒ」が30年前に来日した際に弾いた曲なんだそうです。

大嶋さん:
「ハウツィッヒの『いろんな所で弾きなさい』という言いつけをすごく守ってはいたんですけれども、コロナでずっとなくて。楽しく弾けました。皆さんに聞いていただいて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

 そして、たくさんの楽譜を持ってやって来た男性が…。

今泉さん:
「東海地方をメインとして、近県だったり東京だったりあちこちまわっていました。30カ所くらいかな」

 岐阜県から来たという今泉英之(36)さん。これまで全国のストリートピアノを巡ってきました。

今泉さん:
「拍手をいただいたりして後ろを振り返って、どなたかがいたりすると、届いたんだなというのがとても嬉しくて。1000人通ったとして1人の方に届いたらいいなと思って弾いています」

 そんな今泉さんが演奏したのは「Lemon」。

聞いていた女性:
「コロナの中、心が和みます」

別の女性:
「仕事帰りでちょっと疲れているときに優しい音楽を聴けると、しっとりした気分になりますね」

 一宮のストリートピアノ。10月18日まで駅構内が癒しの場所に変わります。