将棋の藤井聡太七冠は、王座戦挑戦者決定トーナメントの準決勝で羽生善治九段と対局しています。多くの棋士があの手この手で藤井七冠を攻略しようと躍起になっていますが、このトーナメントの準々決勝で村田顕弘六段が採った戦法が注目されています。

 28日午前10時、東京の将棋会館で始まった王座戦挑戦者決定トーナメントの準決勝。

 八大タイトル全冠制覇へ向け、「王座」を残すのみとなった藤井聡太七冠が準決勝で戦う相手は、将棋界のレジェンド・羽生善治九段です。

 羽生九段も27年前に当時の全冠制覇である七冠を達成。6月、日本将棋連盟の会長に就任し、通算タイトル99期、会長と棋士の二刀流で臨みます。

 永瀬拓矢王座への挑戦者を決めるこの戦いは、負ければ即敗退のトーナメントで、豊島将之九段や渡辺明九段など、将棋界の超トップ棋士たちが争っています。

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 藤井七冠も、ここに至るまで決して楽な道ではありませんでした。6月20日に行われた準々決勝で前に立ちはだかったのは、36歳の村田顕弘六段です。

 序盤から村田六段にペースを握られ、追い込まれます。誰もが2023年の八冠挑戦がなくなったかと思ったその時、藤井七冠が驚異の「6四銀」の勝負手。

村田六段:
「終盤、6四銀と上がられるところまでは、お恥ずかしながら温泉気分といいますか、相当勝てるんじゃないかなと思っていましたけど」

 藤井七冠は自陣の詰みを防いだ上、その後、長手数の詰みを読み切り、鮮やかに寄せて勝利をもぎ取りました。

村田六段:
「詰まされた時は実はそこまでショックでもなくて、『あっ、詰むんだコレ、へー』っていう感じで、詰め将棋を解かれたような感覚でしたね」

 村田六段が途中までペースを握ることができた理由は、AIによる事前研究ではなく、独自の戦法「村田システム」を編み出したからです。

村田六段:
「村田システムはなかなか角道を開けないことが特徴になりまして、銀を繰り出していくというのが骨子になります」

 藤井七冠が得意とする角換わりを封じ込める「村田システム」。今回は銀の繰り出し方を改良した「新・村田システム」を採用しました。これは棋士人生をかけた戦いでもありました。

村田六段:
「人間同士の勝負なら、自分の感覚とかやりたい手をやっても十分通用するということを証明したくて、そこに人生をかけているので。対局の2週間ぐらい前から禁酒をしたり、朝から晩までパソコンの前に張り付いてAIで研究したり、実践をパートナーを選んでやったりとか、私にとってはそこまでシビアに事前準備をしたことがなかったので、そういう風に臨んだつもりでした」

 村田六段が人間の将棋を信じ、人生をかけて臨んだ王座戦トーナメント。

 藤井七冠はそれを押しのけて、現在、同じく前人未到の記録達成を狙うレジェンドと準決勝で対決しています。勝敗は28日の夜には決まる見通しです。