4年前、岐阜県高山市の介護施設「それいゆ」では、7月から8月のわずか半月の間に、5人の入所者が死亡したり大ケガするなどしました。

 そして、3例目の中江さんに対する傷害致死、4例目の女性に対する傷害の罪で、小鳥剛被告が逮捕・起訴されました。

 事件の最大の争点が「小鳥被告が犯人であるか」。犯行の瞬間をとらえた防犯カメラの映像はなく、また犯行を目撃した職員などもいない、いわゆる『直接証拠』がない事件です。

 そのため、裁判には職員など多くの証人が出廷する予定で、人数はのべ26人にのぼるということです。

 証拠が乏しい中、「小鳥被告が犯人である」と立証しなければいけない立場の検察側は2日の裁判で、まるで“推理小説”のような立証方法を示しました。

 検察側は事件現場となった介護施設の図面を示しました。被害者の部屋には防犯カメラはなく、通路やトイレ、別の部屋にはカメラがあるというものです。

 まず、通路のカメラに映るなど被害者の部屋に出入りしていた職員をピックアップ。その上で、犯行が行われたとされる時間帯に現場にいなかった職員について、勤務記録などから「犯人ではない」と排除していきます。

 つまり「消去法」で残った小鳥被告だけが犯行が可能だったと指摘しています。

直接証拠なく…介護施設で入所者5人相次ぎ死傷 2人への傷害致死等の罪に問われた元職員 初公判で無実主張

 裁判は来年3月まで3か月に及ぶ予定ですが、裁判員はこうした複雑な証拠が示される中で、難しい判断をしなければならないということになります。