現場に居合わせた看護師の救急処置で運転手が一命をとりとめた事故が、愛知県豊橋市でありました。しかし、現場にかけつけた救急隊員が懲戒処分となる事態となっています。

 いま豊橋市が行った救急隊員へのある処分を巡り、議論が巻き起こっています。

 2021年8月、豊橋市内の交差点で乗用車がガードレールに衝突する事故が発生し、運転手が心肺停止になりましたが、偶然その後ろの車には看護師が乗っていました。

 看護師はとっさに運転手への応急手当を開始。その後、現場に到着した消防の救急隊から「静脈路確保」をするよう指示を受けて処置を続け、運転手は一命をとりとめました。

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 偶然現場に居合わせた看護師に医療行為を指示し、患者の命を救った男性消防士。しかし、これが不適正な業務として消防士の男性は処分されました。

 搬送中の救急車の中で看護師の人が行ったのは「静脈路確保」。治療に必要な薬剤を静脈に入れるため血管に針を刺す行為で、本来なら現場で医師からの指示を受けた消防の救急隊が行わなくてはいけない任務です。

 しかし、いったいなぜ現場にいた看護師の人が処置したのでしょうか。

<消防隊員(53)>
「自分でやるより看護師に任せた方が確実だと思った」

 さらに救急隊員は「自分が処置をした」と虚偽の報告をし、豊橋市は減給10分の1、6カ月の懲戒処分としました。

 とっさの判断で命を救った今回の救護措置。処分されたことについて市民は…。

豊橋市民:
「とっさに人を救うという正義感が出て、やむを得ない状態。公式な処分というのはちょっと酷じゃないかなと感じます」

「本当は本人がやらなきゃいけないことを、看護師さんがやってくれたという対応は良くないなと。(処分は)妥当と言えば妥当だけど」

「(減給)6カ月はさすがにかわいそうですね、長すぎます」

「自分でしなかったことを『自分でした』と言っちゃったのは、やっぱり良くないことだと思うので。処分は仕方ないことだと思います」

 豊橋市消防本部の担当者は、取材に対し「厳正に処分しないと組織として救急業務が成り立たなくなる行為だった」とコメントしています。