愛知県西尾市の公園で2023年4月、小学生が地面から突き出たクギで大ケガをしました。各地のグラウンドからクギが見つかっていますが、なぜ1つの公園に何十ものクギがあったのでしょうか。

■各地の公園のグラウンドから多数のクギ 小学生が大ケガ

 西尾市のグラウンドで2023年4月、ソフトボールの練習でスライディングをした10歳の小学生が、ヒザを10針縫う大ケガをしました。原因は地面から突き出ていた「クギ」でした。市が調べたところ約20本のクギが見つかり、長いものは約23センチもあったということです。

【動画で見る】小学生の大ケガ後も続々と…なぜ『多数のクギ』がグラウンドや校庭に残されているのか 実例と安全対策

西尾市が別の1つの公園で金属探知機による点検を行ったところ、98本のクギが見つかりました。市は「クギを打ち込んだ場合は必ず抜いてほしい」と呼びかけています。

クギはグラウンドの利用者がベースを置く際の目印として打ち込み、取り除いていなかったものとみられています。盗塁の練習などで地面が削られ、地中から突き出した可能性があるということです。

西尾市の事故が発覚した後、愛知県の他の場所でもクギが見つかっています。豊川市の南山グラウンドでは古いクギが約30本、東海市では3カ所の公園でクギのような物が計23本、一宮市では6カ所の公園でクギが見つかっています。

愛知県はこの事故を受けて、14の施設で緊急点検の指示を出したところ、守山区の小幡緑地のゲートボール場で21本のクギが地中で見つかりました。危険性はないものの、撤去したということです。

また、学校の校庭も調査するように教育委員会や学校長に依頼を出しました。

■グランウドにクギを打つ理由は“時間のロス”防止

 事故が起きた西尾市のコミュニティ公園や、クギが見つかった豊川市の南山グラウンドは、多目的なグラウンドになっていて、野球に限らず様々なスポーツやイベントが行われています。

こうしたグラウンドで少年野球の指導を長年している男性に話を聞くと、野球の練習を開始する前には毎回、次のような手順で準備をしているといいます。

1.ホームベースを設置

2.直角になるようにひもを張る
(微妙なズレが大きな差になり調整が難しい)

3.ひもに沿ってライン引きでファウル線を描く

4.メジャーで距離を測って1塁~3塁を設置

5.バッターボックスやスリーフットラインなどを引いて完成

この準備が毎回必要で、保護者に手伝ってもらうこともあり、短くても30分、長ければ1時間近くかかるということです。グラウンドは使用時間が限られているため、時間のロスが練習に大きく影響してしまいます。

このため、今回問題となった「クギ」などの目印が使われています。目印を使った場合、準備の時間が大幅に短縮されます。

1.目印に沿ってひもを張る
(直角を意識する必要がない)

2.ひもに沿ってラインを引く

3.目印に沿って1塁~3塁を設置

4.バッターボックスやスリーフットラインなどを引いて完成

この工程であれば5~10分で終わるため、昔から全国で用いられていて、効率を考えると欠かせないものだといいます。

少年野球の場合は、低学年と高学年でベースの距離が変わり、同じグラウンドでソフトボールも行うため、それぞれクギを打っていくと、ベースの周りを中心にかなり増えるという事情もあります。

多目的グラウンドの場合には、野球だけでなくサッカーなどの様々な競技の目印もあり、大量のクギが埋められたのではないかということです。

取材した少年野球の指導者は、次のような対策をしていると話します。

1.グラウンドを使う前には、ベース周りなどを中心に大人数で点検する

2.プレイすることで土が削れていくため、管理会社に任せずに自主的に土を盛る

3.目印の本数は必要最小限の4本に絞り、クギが地面から出ないよう深く打ち込んで使用する

■学校の校庭では“イベントの目印”にも「クギ」を使用

 小学校の校庭でもクギが見つかっています。2023年5月、宮城県の岩沼小学校で金属探知機を使って調査した結果、校庭から数本のクギが見つかりました。

岩沼市教育委員会の教育長:
「見えない所に埋まっているんだなと、正直びっくりしているところでございます。目視では見つけられない金属も探知機を使うことで見つけることができて、子供たちの安心安全につながるのではないかと思います」

学校の校庭でクギが見つかった理由について、愛知県豊田市の豊田幼稚園の園長で、小・中学校の体育教師なども務めた澤田二三夫さんに伺いました。

校庭の場合は、休日などに行う野球の目印に加え、運動会でのダンスの立ち位置など、イベントで目印を打つことがあるといいます。

他にも、徒競走やリレーのトラックの線は、プラスチックなどでできた白線のテープをクギを使って埋め込んでいます。テープには耐久年数があり、テープだけが破損するなどしてクギが残ってしまうこともあり、点検が必要です。

限られた時間を有効利用するためには、目印やグラウンドテープをなくすのは現実的ではないため、澤田さんは「ケガしないように対策して最善を尽くしてほしい」と話しています。

対策については、例えば次のようなものがあります。

1.グラウンドをならす「トンボ」を鉄製にすることで、クギなど危険なものが引っ掛かりやすくなる

2.イベントなどの時には、どこに何本埋めたのかをメモし、終わった後は速やかに抜く

3.何より目視で確認し、怪しい場所は地面を触ったりして確認する

澤田さんは、楽しいスポーツやイベントが悲しいものにならないように「やれる限りの範囲で対策を」と呼びかけています。

2023年8月11日放送