スペシャル

INTERVIEW

寺内誠司役 佐野史郎さん

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6月2日(土)から放送される、オトナの土ドラ『限界団地』。この作品は過去にオトナの土ドラ枠で放送された、『火の粉』、『真昼の悪魔』に続く心理サスペンス第3弾。かつての夢のニュータウン“団地”が惨劇の舞台となり、過去の幻想を追い求める狂気に駆られた男の情熱と悲哀を描いていく。そんな最狂の老人・寺内誠司を演じるのは、63歳で連続ドラマ初主演、オトナの土ドラ・最年長主演の佐野史郎さん。クランクインが迫る中、早速、話を伺った。

意外にも連続ドラマ初主演。そして、オトナの土ドラ枠の最年長主役です。率直なご感想をお聞かせください。
最初は主演とは聞いておらず、深夜枠の心理サスペンスドラマのお話を頂いて、これはおもしろそうだと惹きつけられました。準備稿のシナリオを頂いたところ、最初に名前が書いてあったので、「あれっ!?」と(笑)。まさか還暦を過ぎて連続ドラマの主演のお話を頂くなど、考えたこともなかったので、とてもありがたく思っています。
本を読まれての感想をお聞かせください。
とてもおもしろいです。サスペンスドラマとして、先が読めないということの連続で久しぶりにこんないい本に出会えたという思いです。今からどうやって演じようかと色々とイメージが浮かんできます。このワクワク感、伝わりますでしょうか。
主人公・寺内誠司にどんな印象を持ちましたか?
主人公・寺内誠司を演じるにあたり、この寺内という人間の行動の底にある無意識は何か? ということを考えています。本人の自覚がないところで、なぜこういう行動を起こすのか? 単なる衝動ではない部分を相当深いところまで考えてからでないとクランクインは迎えられないと思っています。警戒しているのは、単におかしなおじいさんに見えてしまうこと。強烈なキャラクターだからといって調子に乗って演じるとしっぺ返しを食らってしまう。気を引き締めて、キャラクターに甘んじることなく、生真面目に取り組んで行きたいと思っています。
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寺内に共感できるところはありますか?
声を大きくして言いたくはないのですが、もの凄く共感します。共感できない役を頂いた時は、自分がなぜ共感できないかを読み解いて自分なりに埋めていかなければならないのですが、この寺内には非常に共感できます。もちろん寺内のすることは許されない行為ではありますが、例えば江戸時代には掟で認められていた、あだ討ち、敵討ちと、彼の行動とが重なって感じられるところもあり、正直、心では味方をしたくなります。僕は俳優としても、ひとりの人間としても、どうしても世の中に馴染めない敗者、弱者とみなされてしまう少数側に感情移入してしまうんですよね。
タイトルの『限界団地』に持ったイメージを教えてください。
非常にインパクトのあるタイトルで、共演させていただく先輩がたのキャストを見ても、まるで60年代の映画のようなイメージを抱きました。
“限界集落”ではなく、“限界団地”という造語があることは聞いておりましたが、僕も団地が華やかな時代を知っているので、現在の団地の状況はまさに時代の象徴と言えるものだと感じています。高齢者が多く、コミュニティが失われつつあることへの危機感は感じます。団地の中で寺内は、住人たちに警戒されたり感心されたりの連続ですが、おそらく住人たちはこの老人の中に自分を見ているようなところもあるのではないでしょうか?住人たちが避けている現実の様々な問題を突きつけてくるので。
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26年前、『ずっとあなたが好きだった』(1992年・TBS系)で桂田冬彦役を演じ、“冬彦さん現象”と言われる一大ブームを作られました。以降、様々な役を演じる中、狂気の男を演じるレジェンドと言えば佐野さんというイメージもあり、今回、寺内ブームが巻き起こることを期待しています。
当時僕は30代でした。時の経つのは早いですね(苦笑)。冬彦を演じた時も、奇妙なキャラクターが話題になりましたが、僕も共演者の皆さんも本当に大真面目に取り組んでおりました。一生懸命やればやるほど、“冬彦さん現象”と世間で呼んでいただくようにもなりました。ですが社会現象となるほどのドラマのヒットに対する驚きと共に、一方でどこか人ごとのようにも感じていました。
冬彦を演じていた頃はバブル経済崩壊の時期で、その時期と今とは、不安という意味では時代の感覚が重なるような気もしています。そんな時にこのようなお話を頂き、寺内という役柄を通して、俳優として自分がやるべき仕事は何なのかということを強く意識させられます。それはこの作品に限らずですが、時代を感じながら、芸能で何ができるのか、俳優として常に問いかけられているような気がします。
視聴者の方にメッセージをお願いいたします。
初めての孫を持つおじいさん役。そして連続ドラマの初主演。さらに強烈なキャラクターを演じることに、プレッシャーを感じないわけがありません(笑)。でもあまり気負わずに、けれど臆することなく、「また、佐野が変なことをやっているな」と皆さんに喜んで頂ければ、とても嬉しいです。このおじいさんが何をしでかすか、最後までとくとご覧いただければと思います。