SPECIAL

日比美思さんインタビュー

日比さんは本作が初めての連ドラレギュラー作だそうですね。
マネージャーさんから電話をもらって出演が決まったと聞いたとき、自宅のリビングにいました。母が台所にいたんですけど、私がうれしさのあまり、声を上げて泣いたので驚いていました。実はこの前、後厄が終わったんです。その矢先にこうして連ドラにレギュラー出演できて、縁起いいなって思っています(笑)。
子どもシェルターに避難しているメンバーを演じる皆さんは全員、オーディションで選ばれたのですよね。オーディションはどのようなものでしたか?
一次は私の人となりについていろいろ質問され、たくさんお話をしました。どんな映画を観るのか、どんな役を演じたいのか、と。オーディション当日、いろいろなお仕事が重なって、バタバタだったんです。焦った気持ちでオーディション会場に入り、気が動転していて、「すいません、私、汗くさくないですか?」って思わず聞いちゃったのを覚えています (笑)。
 そのあとのオーディションでは「さくらの親子丼2」の台本を使い、いろいろな役を演じました。そのとき、「もし私が演じるのなら、白鳥マリアかな」ってふと思ったんです。17歳という設定は、「私で大丈夫かな?」っていまでも思ってますけど(笑)。
マリアは親を憎み、親のつけた名前などいらない、と本名とは別の名前を名乗っているわけですが。
私の美思っていう名前には、「美しく思いやりを持ってほしい」という両親の願いが込められているそうです。幼い頃から「あなたの名前は素敵なのよ」と言ってくれたし、私にとっても大切なものなので、「名前なんて記号みたいものだから」って言い切ったマリアの気持ちを思うと、胸が痛いです。
マリアはどんな人物だと思いますか?
名前を捨てるっていうのはインパクトがありましたが、最初はどういう性格なのかイマイチ掴めませんでした。ほかの子どもに比べ、マリアの性格描写があまりなかったので。でも、台本を3話、4話といただき、マリアを見ていると、自分のことを客観視しているなと感じています。親も好きじゃないし頼れないし、今後一緒に暮せないってことが頭の中でしっかりと整理できている子だと思います。シェルターのメンバーと話す場面でも、相手を客観的に見ていると感じることがあって、ある意味、“空気の読める子”ですね。どこか達観しているし、俯瞰でものを見ている子だと思います。そういうところは詩ちゃんと重なりますけど、マリアと詩ちゃんの違うところは、空気を読んで周りに合わせられるところですね(笑)。
マリアを演じる上で、大切にしていることは?
芯としてブレずに持っているのは、大人はみんな敵で信用できない、と思っているところです。ただ、「ハチドリの家」で暮らす中で、マリアの心境はどんどん変わっていくと思います。弁護士の桃子先生だったり、川端さんだったり、さくらさんだったり。「この人は、これまでの大人とは違うかな?」と思える人と出会っていくので。でも「大人なんて大嫌い!」という気持ちはよほどのことがない限り変わらないでしょうから、マリアの中でいろいろな感情がせめぎ合う様子をしっかり演じられたら、と思います。
日比さん自身、長く芸能活動をされています。周りにいた大人の皆さんは信用できましたか?
ありがたいことに、信頼できる方ばかりでした。ただ中学生や高校生の頃を振り返ると、変に意固地になっていたんです。自分は特別な人だと思い込んでいたというか、自分1人で何でもできると思いあがっていたというか。そんなちぐはぐした思いに捉われ、ずいぶん空回りしていました。それでも周りの大人たちは私にとって何が最善か考え、手を差し伸べてくれていたんですよね。少し経ってそのことに気づき、とても感謝しています。
女優としての今後の目標を教えてください。
まずはマリアを演じることに全力を尽くします。簡単に演じられる役ではありませんが、変に力むことはしたくないと思っています。これまでいろいろな現場で、先輩方やスタッフさんから演技についてお話を伺ったとき、その役を作り込み過ぎると、欲が出て演技にもいらない力が入ってしまうと教えていただいたんです。力み過ぎてしまうと、自然に動くこともできなくなってしまいますから。
女優としては…、何でもやります!(笑) 芸能活動は10年ほどですが、本格的に演技を始めてまだ1年ちょっとなんです。またまだ新人で、新米なので。いまは共演者の皆さんからいろいろなことを学ぶ時期だと思っています。大事にしたいのは、女優である前に人としてちゃんとしていることです。しっかり挨拶する、悪口を言わないし、共有しない、敬語で話をする、初心を忘れず、感謝も忘れずにいる。人としてちゃんとしていれば、女優としてしっかり歩んでいけると思っています。
最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
私は昨年、「さくらの親子丼」を見ていたので、前作の重みをしっかり受け継ぎたいという責任感を持ちながら、マリアを演じているつもりです。子どもたちには暗い過去があり、ヒリヒリする場面もありますが、1話の中に、必ず光が差し込むようなシーンがあり、ドラマ全体には優しい空気が漂っています。それはさくらさんの愛情や、温かくておいしそうな料理のおかげだと思います。困っている子どもを救おうとしている人がどこかにいること、手を差し伸べてくれる人がいるということがこの作品を通し、伝わってくれたらいいなと願っています。私も最後までその一端を担えるようマリアを演じていきたいです。