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相島一之さんクランクアップ「若いメンバーの持つ“空気感”が心地よかった」
認知症の父をさくらに預け失踪した「ハチドリの家」のホーム長・鍋島真之介(相島一之さん)が、第7話では驚きの姿でさくらたちの前に姿を現します。鍋島に何が起きたのでしょうか? クランクアップした相島さんに、感想など話を聞きました。

- まずは撮影を終えた感想を教えてください。
- 新鮮でした。共演者で一番若い子だと17歳かな。もちろんほかの現場でも十代の人と共演することはあります。でもだいたい、一人か二人ぐらいです。今回は若いメンバーに囲まれて、という状況だったので、若い人たちが持っている“空気”の中にいる感じ。そのフレッシュさ、パワーあふれる感じが心地よかったです。みんな才能にあふれ、最初からしっかり演技ができていたのにも驚きました。聞いたら、若いなりにしっかりキャリアを積んだ人もいるとか。
かつて、俳優は時代を映す鏡だと言われたことがあります。もしそうだとしたら、この現場にいる若手こそ、「今」という時代を体現している存在だと思うんです。彼らのキラキラした姿を見るにつけ、僕はもう見守る側にいるんだな、としみじみしたりして(笑)。
「大人でも逃げてもいい」に納得

- 認知症の父親をさくらに託し行方をくらました鍋島が、今週第7話で、かなり驚きの姿で再登場します。
- どんなふうに「ハチドリの家」に戻るのか、ぜひご覧いただきたいです。シェルターを飛び出して、鍋島がどこに行くのだろう、と僕も思っていました。びっくりするくらい離れた場所に行ってしまうのか、それとも最悪の結末が待っているのか。もしかしたら、ナレーションで数年後の鍋島の姿が説明されるかも、と考えたこともあります(笑)。
台本を読んで、「鍋島はみんなのもとに戻りたかったんだな」と思ったんです。まるで勢いのまま家出した子どものようだな、と。困ったおじさんですね(笑)。
- そんな展開について、相島さんはどう思いましたか?
- びっくりした、というのが正直な感想です。それで、鍋島の心情にどうすれば説得力が出せるのか考えました。鍋島は相当な覚悟で子どもシェルターに関わることを決断したと思うんです。そんな人が確執のある父親が現れ、それも認知症のため怒りをぶつけられないからと言って、失踪なんてあるだろうか、と。ここは自分の中にしっかり落とし込まないといけないと思い、プロデューサーさんと丁寧なディスカッションをしました。
- どんなことを話し合いましたか?
- プロデューサーさんからは「大人でも逃げ出していいんだ」ということを伝えたい、とのことでした。鍋島のような立場の人間だからこそ、そういうことが描けるはずです、と。世間では仕事の重責から自ら死を…、というニュースが流れることがあります。「自殺するくらいなら逃げたほうがいい」というのは、できるならそうしたほうがいいと僕も思います。説明を受けて、しっかり演じようと気持ちを切り替えたんです。
僕は鍋島がこういった行動に出たのは、さくらさんの存在が大きい気がしています。さくらさんのせい、という意味じゃないですよ。出会って間もないですけど、太陽のように明るく笑ってくれるさくらさんになら、父親を託していいのではないか、と甘え心が出てしまったのでしょうね。
- ドラマを見てくださっている、若い世代のみなさんにも追い込まれる前に選択肢はいくつもある、ということを伝えたいですね
- 学校で辛い目に遭っている子がいるとします。両親が「学校だけがすべてじゃない」って言えればいいですけど、僕も親なので、「せめて義務教育だけは」「せめて高校ぐらいは」という気持ちも痛いほど分かります。道は100万通りある、ということを示せるだけのパワーが自分にあるのか、この作品と向き合うことで考えました。

鍋島の過去だけでドラマひとつ成立!?
- 鍋島の過去についての感想は?
- 想像以上に壮絶でした。自分の体罰が原因で生徒が自殺し、この一件を機に家族を失い、マスコミにもさんざん叩かれたでしょうし、父親からも「お前の教育方針が間違っていたからこんなことになったんだ!」と責め立てられたのではないでしょうか。そのとき妻は、子どもはどうしていたのか。鍋島の過去だけでドラマがひとつ成立すると思います。
鍋島と「ハチドリの家」にいる子達って、実はリンクしている部分がある気がしたんです。クランクインしたときにはそこまでの話を聞いていませんでしたが撮影が進む中で、鍋島の子どもたちに向けるまなざしにはこんな意味があったんだ、と気づきました。
ほろ苦いからこそ、前向きなメッセージがある
- 改めて終盤の見どころをお聞かせください
- この作品は極論で言えば“たかがドラマ”です。でもドラマというフィクションだからこそ、現実のシビアなところを描けるし、ドラマというファンタジーだからこそ、救われる部分もあります。もしかしたら、大団円のハッピーエンドではないかもしれません。でもそのほろ苦さがあるから、現実は厳しいけれど頑張ろうという前向きな気持ちになれるはずです。僕もあるメンバーの言うセリフに心が震えました。8回で終わるのが惜しい話なので、さくらさんだけでなく、鍋島も子どもたちもどう生きるか続きが見られたらいいな、と願っています。
