苦しい展開の中、ディフェンスから流れを呼び込む

ウィングアリーナ刈谷で行われた富山グラウジーズとのナイトゲーム。シーホース三河は74-65で勝利し、連勝を3に伸ばした。

現在8連敗中と苦しむ富山をホームに迎え、上位を目指す三河にとっては負けられないゲームだった。しかし、ライアン・リッチマンHCが常々口にする「このリーグで簡単に勝てる試合はない」の言葉どおり、リードチェンジが18回も起こるクロスゲームとなり、3Q終了時点で56-54と、どちらが勝ってもおかしくない展開となる。

三河はシュートタッチが悪く、フィールドゴール、3Pシュート、フリースロー、どれもチームの平均成功率を下回った。リッチマンHCも「全体的に良い出来とは言えない試合でした。打つべきシュートは打つことができていましたが、3Pシュート、フリースローという決めるべきシュートを決め切れなかったことが、自分たちを苦しめてしまいました」と振り返る。

上位を狙うには、こうした状況でも勝つ術を見つけて勝ち切ることが大切だ。今日のゲームでは、ディフェンスが勝敗を分けるポイントとなった。後半だけで3つもショットクロック・バイオレーションを奪うなど、三河はハードなディフェンスから流れをたぐり寄せることに成功。富山の外国籍選手に対してボックスワン・ディフェンスで対応する場面もあり、前半の内容を踏まえてゲームプランを変更する対応力、リッチマンHCの指示を遂行する選手たちのポテンシャルも感じられたゲームだった。

シュート成功率が低い試合では、リバウンドやルーズボールもより重要になる。14のオフェンスリバウンドを記録し、相手より多くのチャンスを作ったことも勝利の要因だろう。特にイ デソンは30分36秒の出場で14得点、チーム2位タイの8リバウンドを記録。要所でのオフェンスリバウンドはもちろん、ラインを割りそうなルーズボールに飛び込んだプレーもチームに勢いを与えた。

イ デソン「ナショナルチームでプレーしている感覚に近い」

KBL(韓国リーグ)でベスト5受賞、韓国代表選出など、輝かしい実績を誇るイ デソン。「韓国の至宝」という触れ込みで加入したイ デソンだが、彼のプレースタイルは「至宝」からイメージするテクニカルなプレーに加えて、体を張れる泥臭い一面も持ち合わせている。「数字に残らない部分でも貢献できる」選手だ。

イ デソンは、どちらに転ぶか分からないフィフティーフィフティーのボールに滅法強い。また、失敗を恐れずにシュートも積極的に打つ。ハードワークを怠らず、ルーズボールに飛び込み、運動量も豊富。その姿は、チームに熱気をもたらす「エンジン」のような存在に映る。

自身のプレースタイルについて、イ デソンは「ナショナルチームでプレーしているときの感覚に近い」と話す。

「(三河でバスケをしているときは)韓国代表チームでプレーするときと似ています。代表ではエナジーをコートで示すこと、ディフェンスに重きを置かれていて、ハードワークすることが求められました。リッチマンHCからは似たような役割を求められていて、それに応えるマインドで試合に臨んでいます。ただ、KBLでは、ゲームメイクするポイントガードとして、そしてクリエイトする選手としてプレーしていたので、役割もスタイルも今とは少し違っていました」

長野誠史がケガで離脱後、イ デソンはポイントガードとしてプレーする機会が増えてきた。三河の新しいオプションとして、リッチマンHCも期待している様子が伝わってくる。

「KBLでは長らくポイントガードとしてプレーしていたので、1番のポジションはやりやすいと感じています。ただ、現代のバスケはポジションレスというか、しっかりとポジションを区別しないことが多いです。自分としては1番と2番をミックスさせた“デュアルガード”のようにプレーしたいですね」と、イ デソンは理想のスタイルを語る。

今後に向けて大切なのは「自分たちのバスケにフォーカスすること」と話す。この言葉はどの選手からも聞かれ、今の三河の共通認識となっている。

「HCがいつも伝えてくれるのは、自分たちのバスケットボールにフォーカスすることです。ケガをしている選手が戻ってきて、自分たちが目指しているバスケを体現できれば、きっと優勝が近づいてくると感じています」

次節が終われば2月の日程は終了し、バイウィークに入る。3月と4月は過密日程で、地区上位のライバルとの連戦が控えている。厳しいゲームになればなるほどイ デソンは燃えるタイプだろう。ニックネームの「ダッシュ」が徐々に浸透してきた韓国人プレーヤー。これからも見ているものを熱くさせてくれるプレーに期待したい。


シーホース三河 74-65 富山グラウジーズ
三河|22|19|15|18|=74
富山|19|20|15|11|=65