岐阜市の病院でエアコンが故障した病室に入院した患者5人が相次いで死亡した事件。故障したエアコンの定期検査をしていなかったことがわかるなど病院の管理態勢の不備が指摘されています。

 同じように高齢者を抱える現場は高齢者の体調管理をどのようにしているのか取材しました。

■5人死亡の病院 立入検査で…

 岐阜市の藤掛第一病院。30日も入院患者の家族が相次いでお見舞いに訪れていました。

母親が入院中の男性:
「転院の面で今後どうなっていくか心配なので、今後どうしていくか院長と事務の人と相談している」

父親が入院中の男性:
「月曜は(父親が)苦しそうだった。あせもがいっぱいだから、隣の人なんかもっとひどかった」

Q.暑さへの対策は?
同男性:「何もなかったですよ」

 今月26日夜から28日にかけエアコンが故障した病室に入院していた80代の男女5人が相次いで死亡した藤掛第一病院。

 5人は熱中症になった可能性があるとみられていますが、警察などによりますと、医師が作成した死亡診断書には熱中症という記載はなく、病院は全員病死と判断。5人の死因に不審な点はないとして警察や岐阜市に報告していませんでした。

 一方、29日夜に会見を開いた岐阜市。2日間の立ち入り検査の結果を公表しました。

岐阜市の担当者:
「新館への(患者の)移動も含めて検討して、エアコンの稼働状況を確認したそうですが、(隣の病棟も)稼働がうまくいかなかったと、速やかに新館の方へ移動することは選択しなかったと聞いている」

 今月20日、エアコンが故障した直後、病院は隣接する病棟に患者を移すことを検討しましたが、その病棟のエアコンもうまく動かなかったため断念したといいます。さらに…。

岐阜市の担当者:
「温度と湿度を測るものが廊下にぶら下がっていて、それを記録した「記録簿」があったので」

 看護師が、エアコンが壊れたフロアの温度と湿度を定期的に確認していたといいます。病院は患者に熱中症の危険性が高まっていることを認識していたのでしょうか…。

 また、エアコンの定期的な点検をせず、エアコンが故障した際、代わりには家庭用扇風機を置くだけなど、会見を通して岐阜市は病院の暑さ対策が不十分だったと指摘しました。

■名古屋の老人ホームでの暑さ対策は…

 では実際に高齢者を抱える現場では暑さへの対策をどのように取っているのでしょうか…。

 名古屋市港区の住宅型有料老人ホーム「くすの木」。最も重い要介護5や認知症を抱えている高齢者など24人が入居しています。

 高齢者は暑さの影響を受けやすいため、施設では室内の温度の管理には特に気を使っているといいます。

看護師:
「空調は、ご飯食べたときは皆さんフロアに集まってくるので温度を24℃に下げています。また、一人一人のお部屋にもクーラーがついています。少しでも(室温が)崩れると体調を崩すことに繋がるので、こちらで徹底的に管理しています」

 施設では共有スペースと入居者の個室にそれぞれエアコンを設置。温度も利用者の状態や時間帯によって微調整するなどこまめな対応を取っていました。

看護師:
「夜間は切らずに28度で設定してます。寝たきりの方は温度調整ができないため、体を触って暑ければ熱がこもっていることもあるので、もう少し(室内の)温度を下げるということを行っています」

 他にも、熱中症のサインを見逃さないため大切なのが体温測定です。

看護師:
「特に熱中症だと熱がこもるので体が熱くなる。本人の自覚症状がないので怖い」

■エアコンが故障したら…対処法は?

 高齢者は自らの体温の変化に気づけないときがあるといいます。これについて専門家は…?

たけうちファミリークリニック・武内有城院長:
「年配の方や慢性疾患の方は腎臓の機能が落ちていたり、汗をかく機能とかご自身で自分の体温を調整する機能が落ちていたりするので、非常に対応が悪くなるなおかつ調子が悪いと暑さに鈍感になる」

 人間の体に含まれる水分量は、成人男性で約60%なのに対して高齢者は50%ほどと元々の体内の水分量が少なく、その分脱水症状になるリスクも高いといわれています。

Q.入院施設でエアコンが故障したらどのように対処を?

武内院長:
「もちろん一番良い環境に重症の方から移動させるのが大事。どうしてもエアコンが手配できない場合は、扇風機プラス氷のうなどで少しでも体の温度を保てるようにこまめに見ていくしかない。さらによりこまめな水分補給点滴で水分補給するとかこまめな管理が必要だと思います」

 名古屋市港区の有料老人ホームでは入居者1人1人のその日の水分摂取量も細かく管理していました。

看護師:
「やはり水分は自分で飲めない人がいるので勧めるようにしています。飲む量が少ない時があるので、ほかの所で水分を勧めるなどして提供しています」

 同じ多くの高齢者を抱える施設として今回の岐阜の病院での事件をどのように感じているのか尋ねてみました。

Q.暑さが続く中で10畳ほどの部屋に患者さんが沢山いて、家庭用の扇風機だけというのは?

くすの木・和田敏裕施設長:
「まずそれはちょっと考えられない事だと思っております。やはり私たち自身もこの暑さで扇風機だけでは難しいので、それなりのことを対応しないといけなかったのではないかと思います」