岐阜市の養豚場で9日、国内では26年ぶりの豚コレラの感染が確認されました。人間にはうつることはなく、10日朝までに感染した豚も全て処分されましたが、関係者には動揺が広がっています。

■殺処分は『24時間以内』

 防護服を着た複数の岐阜県の職員に囲まれる豚…。

 岐阜市の養豚場で豚コレラに感染した豚が見つかり、県は9日の朝からこの養豚場の豚を殺処分。ショベルカーを使って養豚場の敷地に穴を掘って埋めるなど、感染拡大を防ぐための対応に追われました。

(記者リポート)
「豚コレラに感染した豚が見つかった養豚場です。24時間以内に殺処分をするということで、職員たちが防護服を着て慌ただしく作業しています」

 発端は、この養豚場で今月3日に突然死亡した1頭の豚でした。県はこの豚を調査しましたが陽性か陰性かわからなかったため、衰弱した別の豚を国の専門機関が検査し、9日の午前6時、陽性と断定。

 岐阜県は、9日の朝からこの養豚場の546頭の殺処分をはじめ、10日午前5時すぎまでに終えました。日本で豚コレラの感染が確認されたのは1992年以来、26年ぶり。

岐阜県・熊崎政之農政部長:
「強い感染力と高い致死率を特徴としています」

■人間には“影響なし”

 豚コレラは豚とイノシシに感染する伝染病で、治療法はありませんが人間には感染しません。また、人間が感染した豚肉を食べても影響はないということです。

 一般客向けに動物や植物との触れ合いを楽しめる天白区の名古屋市農業センター。

名古屋市農業センター・永田祐二さん:
「人に感染しないし、感染した豚の肉というのは流出しないので、食には影響ないです」

■豚コレラ 広がる影響

 しかし、感染力が強く致死率も高いため、県は感染した豚がみつかった養豚場から半径10キロ以内の3つの豚を飼育する施設に対し、この範囲から豚を出さないよう指示しました。制限区域にある農場では…。

制限区域内にある農家:
「自分の生産はもちろん影響ありますし、販売先にも迷惑をかけることになるので早く正常になってもらいたい」

 1週間におよそ60頭出荷しているこちらの農場でも出荷ができないようになり、取引先への影響を不安に感じていました。

 制限区域では6か所に消毒ポイントが設置され、畜産関係の施設に出入りする車の消毒作業を実施。また、制限区域にあり、動物と触れ合うことができる畜産センターでは…。

(記者リポート)
「奥に見える青い建物が豚舎ですが、今回のことを受けて、ここから先が立ち入り禁止となっています」

 畜産センターでは県からの連絡を受け、一般客を豚舎に近づけないように、立ち入り禁止の看板を設置。

 今回の問題を受け、岐阜県内の全51の養豚場に対して聞き取り調査が行われましたが、異常はなかったということです。また、農林水産省は…。

農林水産省の記者会見:
「いったん豚肉の輸出をとめました」

 人間への感染や豚肉を食べても影響はないものの、農林水産省は海外への豚肉の輸出を停止しました。

 影響はとなりの愛知県にも。愛知県は10日、畜産関係の団体の担当者らを集め、消毒などの対策の徹底や、異常があった場合に速やかに通報するよう確認。また、農業センターでは、屋外での展示やえさやりの体験を中止、東山動物園でも小さな豚の展示を中止し、動物病院に隔離しました。

名古屋市農業センター・永田祐二さん:
「車や人の服に付着して運ばれることも多いので、来園者が触れ合えないようにと対策しています」

■死んだ豚を“堆肥”に?

 一方、豚コレラで死亡した養豚場の対応について、県は”ある問題”を指摘しています。

 この養豚場では、殺処分した546頭のほかに、今月3日から7日にかけて死んだ豚のうち80頭を、養豚場は、敷地内の施設で堆肥にして処理しようとしていたということです。

 養豚場の経営者は「死んだ豚の数があまりに多くてパニックになってしまった」と説明。

 死んだ豚を堆肥にして処理することは違法で、岐阜県は「不適切な処理だった」とするとともに、国の専門家と感染原因の調査を進めています。