私たちが日常で使う交通機関のバス。今、運転手の不足や高齢化に直面し、求めているのは女性の担い手です。
岐阜のバス会社では、女性限定の運転体験会を開くなどしてPRにつとめていました。

■求む!女性のバス運転手
指導員のアドバイスを受けながら大きなバスを運転しているのは、私服姿の女性…。
指導員:
「まっすぐにして~ハンドルまっすぐに…。左足踏んで、あっクラッチ踏まな!」
女性はなかなかうまく運転できていない様子ですが、それもそのはず。実はコレ、岐阜県で路線バスを運行する「岐阜バス」が開いた、女性限定の職場体験会なんです。

指導員:
「左足離すよ。ゆっくり離すよ~」
女性参加者:「こわい…こわい…」
指導員:「大丈夫、大丈夫」
「プーッ」(エンストの音)

岐阜バスは3年前からこの会を開いていて、去年までに参加したおよそ40人のうち、2人が実際にバスの運転手として就職。体験会をきっかけに女性の運転手を増やそうとしています。
その背景にあるのは、バス業界で進む運転手の不足と高齢化。
路線バスや観光バスなどの運転手は昭和51年をピークに減少傾向に。6人に1人が60歳以上という高齢化も深刻な問題です。
一方で女性は全体の2%(平成29年度で1.8%)にも満たない割合で、女性の運転手を積極的に採用しようという動きが進んでいます。

■「細やかで優しい」客絶賛の女性運転手
岐阜バスで9人しかいない女性運転手の1人、藤井彰子さん(43)。元々はバスガイドとして働いていましたが、出産を機に退職。
その後、パートなどでいくつかの職を経験したあと、去年、正社員として岐阜バスの運転手になりました。
朝一番から、その日に使う大型バスを点検。仕事の内容は男性運転手とまったく同じです。
この日、藤井さんが担当したのは、岐阜市内を回り岐阜駅へ向かう路線で1日およそ3000人が乗る利用者の多いバスです。運転手が女性と男性で異なるのは、お客さんの反応。
藤井さん:
「ありがとうございます。いってらっしゃい」
お客さん:「行ってきます」
藤井さん:「お気をつけて!」
藤井さん:
「(前から乗ってきた外国人のお客さんに)後ろから乗ろうか」
お客さん:「いくら?」
藤井さん:「210円ね」
女性ならではの柔らかいコミュニケーションで、評判も上々です。
乗客:
「細やかなところはありますよ。男性の運転手はわりと無口な方が多いですけど、(藤井さんは)優しいです」
別の乗客:
「降りるときに降りる時に、ありがとうございますと言うと、必ず返事を返してくれます」
藤井さん:
「日々楽しいです。昔からお客さんと接する仕事が好き。お客さんとのコミュニケーションがあるから楽しい」

■路線バスの多忙な時間は家事・育児も…
熱心に説明に耳を傾ける体験会の参加者たち。しかし、実際に働くには壁も感じています。
参加者:
「(運転は)慣れたら違うんでしょうけど。大変な仕事だと思いました。(夫が)時間に厳しいので(働くのは)難しいと思います」
運転技術や勤務時間について不安の声が聞こえてきました。
女性のバス運転手の就労支援をしている団体によると、家事や育児が忙しい朝や夕方が路線バスにとっても、最も忙しい時間であることや、免許取得のために時間と費用が掛かることなどが、女性運転手がなかなか増えない要因といいます。
実は藤井さんも朝の4時起きで仕事に向かうこともしばしば。日によっては子供の夕飯の準備ができないこともあるといいます。

岐阜バスでは免許取得の費用を負担したり、休日の希望を優先するなどのサポートをしたりして、より女性の働きやすい環境を作っています。
岐阜バス人事部・井深沢美さん:
「運転の優しさや接客のやわらかさなど、女性ならではの良さを生かせる仕事です。当社では7割程度の人が未経験で運転手に挑戦しているので、そういった方をサポートしていきたいと思います」
通勤、通学に観光とさまざまなシーンで活躍するバス。女性運転手のニーズが高まっています。