岐阜県美濃市でマツタケ狩りをしようと山に入ったとみられる高齢の夫婦が、7日遺体で見つかりました。今年特に多いキノコ狩りでの遭難事故。山に入る際、どんな点に注意が必要なのか、取材しました。

■今年キノコ狩りで相次ぐ遭難事故

 8日朝、岐阜県の「ひだ高山中央市場」に並んだキノコ。飛騨地方ではシーズンが終わったため、入荷は少なかったものの、今年キノコは大豊作。

ひだ高山中央市場・坂地春雄常務:
「全体的には非常に豊作でした。この辺でいう赤ゴケ、サクラシメジが多く出ましたし、シャカシメジも多く出ました」

 秋になり気温がぐっと下がったことや、雨が定期的に降ったことが理由です。さらに、炭火であぶるとエキスがあふれだす、キノコの王様「マツタケ」も豊作に…。

 しかし、このマツタケを巡って事故が起きました。

 岐阜県美濃市の無職・古田清さん(92)と妻の洋子さん(86)が、所有する山で行方不明となり、7日遺体で見つかりました。

 2人は11月3日、マツタケ狩りをするために山に入ったとみられています。

(記者リポート)
「2人は高齢ということもあり、普段は息子と一緒に山に入っていましたが、今年はキノコが豊作と聞いて2人だけで山に入ってしまった可能性があるということです」

 キノコ狩りをする人たちの山での遭難事故。今年は特に相次いでいて、岐阜県の隣の長野県では7日までで、15人が死亡しています。これは去年の5倍。統計が残る2013年以降で最も多くなっていて、岐阜県でも今年、美濃市の事故を含め、4件の遭難事故が起きています。

■“山のプロ”に聞く安全対策

 この時期に山に入る際、どんなことに注意が必要なのでしょうか。山岳ガイドでアウトドアの専門家・北川健司さんに、岐阜市内の山を登りながら注意点を教えていただきました。

アウトドアサポートシステム・北川健司さん:
「登ってみると、上りの景色は覚えているんだけど、下りの景色は全然見ていないんですよ」

 林道を外れ、山の斜面に入ることが多いキノコ狩り。さらに、キノコを探すため地面ばかり見てしまうので、迷わないよう木にテープなどで目印をつけながら登ることが大切です。

北川さん:
「登ってきたことがわかるように印をつけます」

 登っている途中で、ときどき斜面の下をみながら景色を覚えておくことも大切です。

Q.ケガをしてしまった場合は?
北川さん:
「動けないようなケガをしたり、助けを呼んだりしたい時は動かないようにします」

Q.救助など長い間待たなければならない時の注意点は?
北川さん:
「多いのは、夜を過ごす対応ができていないということです。低体温症で亡くなる人がいます」

 山登りで怖いのは、ケガなどで動けなくなった時。長い時間救助を待たなければいけないことも多いので、体温を下げないための装備が必要です。

 北川さんがリュックから取り出したのは「ツエルト」という簡易型のテント。頭から被るだけで雨や風を防ぐことができるだけでなく、温かくもなってきます。薄い生地でコンパクトなので持ち歩くのも簡単。こうした装備や防寒着、服がぬれた場合の着替えも準備しましょう。

 そして、この季節ならではの注意点も…。

 日が暮れるのが早く急に暗くなる秋、午後3時には下山し終えていることが大切で、その時間から逆算して行動を始めましょう。

 また万が一、下山が遅れた場合に備え、ライトも必要です。

北川さん:
「普段の生活は空調があったり、家があったりといろんな意味で保護されていますが、でも山に来ると何もそういったバリアがない。風吹けば寒いですし、雨が降れば雨宿りするところもないわけですよね。自然の中に入るのはリスクがあるので、いろいろな意味で準備をしていくことが大事です」